天守閣の頂上を目指す定々は
急ぐよう呼びかける朧へ、何事かと問いかける
「あともう少しで
逆賊どもの無様な最期が見れたであろうに」
「…烏達が騒いでおります
どうやら風が変わったようです」
「?何を言っているんだ朧…賊どもはもう」
言葉の続きを否定するように響いた爆音に
訝しみ定々が、回廊の外から下を見下ろせば…
もうもうと立ち上がる黒煙の向こう側
新八達を囲む幕府軍へ攻撃を仕掛け
「こんばんわ お廻りさんです」
手帳を携えた近藤を筆頭とした、真選組の
隊長・隊員一同が雁首を揃えていた
「何やってんだテメーらは」
伏せていた新八と神楽が身を起こし
「や槍ムスメまで加わっといて
テメーらがそのザマじゃ」
「ここにいるオレ達の首まで
飛んじまうだろーがよぉ」
構えていたメリルとジョニーも
彼らの登場へ ただただ目を見開くばかり
…唯一スネークのみが、黒い群れの
遠くに混じる白い制服にいち早く気づく
『真選組!!』 『見廻組!!』
沖田が担ぐバズーカの着弾地点から距離を取り
「バッ…バカな何故
見廻組が城内(ここ)にぃぃ!!」
「貴様ら幕府に仕える身…
それも警察でありながら
…賊に加担するつもりか逆臣ども!!」
幕府軍の司令官らしき者が、動揺を
露わにしながらも詰問するが
「賊に加担?
人ぎきの悪いことを言わんで頂きたい」
相手を真正面へ見据えて近藤は
「その罪人どもの刑の執行は明朝と
御布令(おふれ)にあったはず」
と口にし、日も昇らぬ内に手打ちにする
幕府軍らこそが"幕命に背く逆臣"と返す
「我々はその罪人を処刑の時まで見張るよう
大殿より仰せつかまりました ならば」
夜が明けるまで新八達の首を護るのが
真選組の…自分達の使命、と言い切った
第八訓 大同団結
「近藤さん…」
「…へぇ、中々言うじゃないあの男」
「いっ芋侍どもが何をぬかすか!!」
気圧され 更に居丈高に幕府軍は彼らを罵り
「幕府(おかみ)より授かりし恩を
仇で返すとは逆賊にも劣る畜生よ」
「畜生で結構 醜く肥え太った主(ぶた)に
尻尾ふり続ける犬よりマシだ」
言い返す沖田が、前へと出て狭まりかけた
包囲を再び後ろへと下がらせ
「目の前に豚が転がってんなら」
起き上がろうと四つん這いになっていた
神楽の後頭部を踏みつけ 冷たく笑いかける
「食っちまうのが、狼よ」
「っ誰が豚だチンピラチワワが!」
案の定、神楽に足払いを食らわされて転倒し
二人は地べたで低レベルなケンカを始めた
「「何やってんの二人ともぉぉぉ!」」
律儀にツッコミ入れながらも舞蔵を再び
背負う新八と それを手伝うジョニー
「見廻組を城内に手引きしたのも貴様らか!!」
兵士達は、見廻組が真選組と手を組み
クーデターを起こそうと画策したと考え
「佐々木め 失脚して血迷ったか!!」
膨れ上がってゆく殺気に
メリルやスネークが再び周囲の警戒へと
回した気を二度目の爆発が吹っ飛ばす
「誰が 誰と、何を組んで何デターを
起こしたって?もっかい言ってみろ」
発射口から硝煙が消え切らないバズーカを
片手に問いかける土方の顔は
いまだかつてない程の怒りに満ちていた
「貴様らが「あ゛ーん゛!?きこえねーなあんだって!?」
見廻組と「きこえねーっつってんだろもっと腹から声出せぇ!!」
手を「何にもきこえねぇ!!つーかききたくもねぇ!!」
叫び声とバズーカの爆音が、物理的に
幕府軍を黙らせてゆくのを眺め
「どんだけ仲悪いんですかぁぁぁ!?」
「オイ!お前らオレ達を助けに来たのか
殺しに来たのかどっちなんだ!!」
「そりゃまあ処刑まで首を護りにでさぁ」
「空気読まないのはの専売特許アル
勝手に取ってんじゃねーヨぉぉ!」
「「そんな事言ってないからあの子!!」」
ドン引きしつつも被害に合わないよう
退避する五人と沖田が口々に言い合う
「よし近藤さん、まんまと奴等は城内に入った
定々ごと城を焼討ちだぁぁぁ!!」
「いやそんな作戦しらねーけど!!」
「「つーかそれもう攘夷志士!!」」
的確なツッコミが入っても、土方は宣言通り
一切聞く耳を持たないようだ
「正体を現したなぁ!!」
「構わんん!!賊ごと奴等を討取れいぃぃ!!」
やられっぱなしだった幕府軍の面々も
爆炎を掻い潜り、突棒を振り上げ地を駆けた
―――――――――――――――――――――
先程の爆音に合わせて、見廻組の隊員も
次々と城内へ突入してゆく
「ご覧の通り この城は既に我々
エリートによって包囲されています」
墨染めの衣の集団と、ついでに五人へ
「武器ですが、ホントに捨てないでくださいね
一応警察なんで、無抵抗の人間
皆殺しにするのは何かとマズいので」
真顔でさらりと
えげつない事を口走りつつも
「局長不在の間 よくぞ一人で任務を全うしてくれました
コレ差し入れのドーナッ」
部下を労い、懐からドーナツ取り出した瞬間
信女は迷いなく 異三郎の手ごと
ドーナツ丸々を一口で噛み付いた
「おお…手負いのはずなのに
信女殿の動きが見きれなんだ」
「彼女もエリートですからね、所でのぶめさん
私の手ごと食らいついてますが?」
「感心するトコそこじゃねぇ!
つーか腹を刀で貫かれたって聞いてたが」
「いえね エリートですから
傷の方は急所を避けたんですが、毒を抜くのに
手間取ってしまいまして」
語る最中も、しつこく噛み付いたままの
信女を必死で振り払い
…その結果変な方向に曲がった腕を直しながら
「坂田さん方も、ウチののぶめがお世話になったようで
どうやら大きな借りができてしまったようですね」
「足手まといだった」
「仕方ありませんよのぶめさん
彼等は私達エリートと違って凡人ですから」
彼は、身体の動かぬ満身創痍の銀時を
"役に立ちそうにない"と言い捨てる
「…へへ、ぬかしやがる
流石は真選組(ぼんじん)の手ぇ借りてまで
まい戻ったエリート様は言う事が違ぇや」
「好き好んでではありませんよ
さるお方に頼まれましてね」
「それはまさか俺の「違うとだけは
お答えしておきましょう」
の発言をきっぱりと否定して
"呉越同舟"とのたまった直後に異三郎は
「坂田さん アナタはもう使えないゴミです」
銀時に銃口を向けて……発砲した
「さて ゴミを一つ片した所で
大掃除といきましょうか」
「きっ、貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
雄叫びを上げ、月詠が銀時の元へ駆ける
同時に 五人も見廻組も区別なく
"奈落"の者達が刃を向けて動き出した
も銀時の側を目指したが、一歩遅く
割りこんだ刀の打ちこみに対し足を止め
八相の構えから 柄で次々と払い続ける
「銀時!!」
「しっかりしなんし!!オイ、銀とっ」
必死に呼びかける月詠の後ろから
錫杖の仕込み刀を抜き放ち
その首を一刀のもとに跳ね飛ばさんと
目論んでいた刺客の腹を…木刀が貫く
「銀時!?ぬしっ…」
そこで彼女は、銀時の身体へ撃ち込まれたのが
ただの弾丸では無いと気づく
「活醒の経絡です、しばらく痺れは
とれないでしょうが少しは動けるでしょう」
銃と刀を巧みに操り 自らへかかる
火の粉を払いながら言う異三郎へ
いつの間にか上へと登っていたが
自分へと放たれる針を、弾で弾きつ尋ねる
「動けなかったらどうしてたんだよ」
「ご心配なく 針には血清も仕込んであります
エリートに抜かりはありませんから」
これで貸し借りはナシ、と一方的に言い放ち
「さっさと凡人達の所へ帰りなさい
その身体でこんな所にいたら
本当のゴミになっちゃいますよ?」
死人に鞭打つような台詞を 滔々とのべる
異三郎めがけ銀時が詰め寄る
「こんだけ返却遅れて
延滞料金の一つもナシかコルぁぁ!!」
「またたかりですか 望みは」
返り討ちにせんと銃を構えた彼の頭を
銀時は直前で跳んで踏みつけ、釣られて跳んだ
"奈落"の者を二人ほど踏み台に
軽々と二階部分の手すりへ着地した
「定々(しょうぐん)の首」
踏まれた頭を抑え、顔色を変えず異三郎は言う
「…やれやれ、延滞料金にしては
随分と高くついたものですね」
「いや…安い首さ」
振り返って笑いかける、銀髪の侍へ
針を狙い定めた黒法師が動く
…が それぞれ一発で頭を撃ち抜いて
「見廻組に告ぐ これより全てのエリートは
あの凡人の補助に回りなさい」
見廻組の局長は、威信にかけて
何人たりとも上階へあがらせないと宣言した
…隙を見て、上で待っていたのだろう
階下を任せ 先を急ごうとした銀時の前に
月詠を始めとした四人が現れ呼び止める
「約束は破らせぬぞ 舞蔵も…ぬしもな」
「最後の仕上げね」
「とびっきりの情報をもらったからな
急ぐにしても、人手は多い方がいい」
勿体ぶるなと返され、が苦笑した所で
「案内は任せろ、こっちだ」
言い切り銀時達へ背を向けたが
"高性能な脱出艇"の情報を伝える彼の言葉へ
耳を傾けながらも
全く振り返る事なく、部屋や廊下
天井などを表情を変えずに案内する
道中一度 "大丈夫なのか"と銀時が訊ねたが
「警備を避けて忍び入る内、江戸城の構造は
あらかた頭に入ってしまっている」
の言葉に嘘偽りも狂いもなく
果たして五人は…天守閣の頂上に当たる
屋根瓦の内部へと到着していた
―――――――――――――――――――――
真選組と見廻組…江戸の二大武装警察が
手を結んだが故の事態も、察した朧の言葉も
納得がいかず定々は問い返す
「彼等は犬猿の仲と聞いていたがね」
「恐らく何者かが仲立ちしたと思われますが」
「…"愛国者達"とかいう者の頂点である
あの眼帯の老軍人の差金か」
「私には、そこまでは…」
帳簿を睨む毎日を送る役人達には
弾丸風雨を切り抜けてきた猛者どもは
抑えられない、と進言し
続けて朧は じきに船が来る事を口にした
「用心のため、ご避難を」
定々は高笑い…眼下の喧騒を見下ろして
「あの者ども本気で国盗りをするつもりか
ならば…私も答えてやらなければなるまいな」
全ての警察組織を城に集めるよう命じ
彼等「国賊」を叩き潰すと宣戦布告を口走る
「殿、万一あのという男が率いる
米国の者どもが本格的に動き出したなら」
「ならば、米国には米国だ」
相談役として提携していたある"軍事組織"なら
自分の要請を無視できない
他の軍事勢力など物の数ではないと豪語し
朧が沈黙した…次の瞬間
南門や北門で爆光がひらめき
同時に甲高い鳴き声をあげる巨大兵器が
城壁の向こうに現れたのを老将軍は目にした
片方の門では無数の配下と大砲を引き連れて
「いいか3秒以内に道開けろ
でなきゃ天守閣ブチ落とす いち…」
数えた端から大砲で威嚇射撃を盛大にかまし
「にっ…2と3はぁぁ!!」
「しらねーな 男は1だけ覚えときゃ
生きていけるんだよ」
タバコ片手に、松平が堂々と言い放ち
反対側では左目に鋭い光をたたえる
ビッグ・ボスが
老いてなお米国軍人達の筆頭を努め
「徳川 定々 貴様のような下劣漢がいたと
なれば、この国の平穏は約束されない」
「道を開けろ腐った侍どもぉぉ!!」
『レールガン、発射』
威嚇のため出力を最弱に絞ったレールガンを
石垣へと発射し、周囲の幕府軍を怯ませた
「バッバカなぁぁ!!警察組織そのものが
反乱を起こしただとぉぉ!?」
「反乱どころかそんな人員、ましてや
外国の兵器を日本でなど 大殿(うえ)の
認可なしに動かせるワケが…!!」
「一人だけいるよ 警察でも外国の軍でも
なんでも好き勝手動かせる人が」
滑りこませた一言で周囲を黙らせ
天守閣を…上からこちらを伺っている
定々へ"まだ分からないか"と近藤は尋ねる
真選組の隊士一同が右に左に分かれて並び
出来た道を 一匹の白馬が"主"を乗せ
隊士の一人に引かれながらやって来る
「国に仇なした国賊は アナタです」
城内の定々へ…馬上の茂々が
将にふさわしい出で立ちで睨みを効かせていた
――――――――――――――――――――――
あとがき(というか楽屋裏)
狐狗狸:銀さんが撃たれた時点で、四人は
さん→のぶめ→ツッキー&ウチの子の順で
上でスタンバってました
銀時:いち早くアイツが登ってんのかよ
狐狗狸:上部から銃でサポートするのと
無線の情報を聞いたから、先駆けたカンジで
土方:腐っても主役張ってる男を押しのけて
先頭切るたぁ…太ぇ野郎だな
松平:いいんじゃねぇの?時にはそれぐれぇ
押しが強い方が頼もしいってもんだぁ
ビッグ・ボス:そう言っていただけると
ありがたい、今後もジャック共々よろしく頼
狐狗狸:おっさん率高すぎぃ!女子!
女子成分をあとがきにプリーズ
沖田:じゃ代わりにバズーカを腹一杯くらいな
(以下、爆撃により後書き続行不可能)
忠臣を救わんと、将軍御自ら見参!
様 読んでいただきありがとうございました!