階下に迫った七人の快進撃を瓦解せんと





飛んで火にいる流れ弾!!
撃ち落としてくれるわぁぁぁ!!」



無数の鉛の礫が、殺意をのせて放たれる





開いた傘を盾にした神楽の背後へ三人ほど避難し


残る四人は ガトリングの範囲外となる位置へ
左右に身を潜め 後続や流れ弾を処理し続ける





「下手に攻め入らば蜂の巣か」


「隙を見て正面突破するしかあるまい」





硝煙と轟音が漂う中、視線を交わし…彼らが動く





「撃って撃って撃ちまくれぇぇぇ!!」





破壊してしまおうと集中砲火を浴びせる
傘の向こうから投げ込まれた木刀に


兵達が気を取られて出来た一瞬を利用し


月詠と信女が、階段両側の壁を駆ける





「よっ…横だぁぁっ!!





間髪入れず砲身へクナイが打ち込まれ


彼女らを追う形で段を駆け上がった銀時が
いまだ空を舞っていた木刀をつかみしめ





三者の攻撃が、もれなく同時にガトリングと
操縦者を打ち倒す





「くそっ!機関銃の追加はまだか!!」


ダメです!
武器庫の弾丸がほぼ使い物になりません!!」


「ならあるだけの銃でも構わん!撃てっ!!





控えていた鉄砲隊の弾丸が、ガトリングを
破壊して間のない銀時たちへと食いこむ







…光景を想像していた幕府軍が次に見たのは





「銃に頼り切りはよくないな、戦いの基本は格闘だ


横合いの空間から"現れ"たヒゲ面の男に
あっけなく投げ飛ばされた鉄砲隊達だった











第六訓 亡者屠る手











「待たせたなお嬢さん方」


の命を受けたにしては、遅かったもんじゃ」


「おまけに兵力が減ってない」


「手厳しいな こちとら坊やに姫様のお守りで
手一杯、武器供給を断つのがやっとだ」





皮肉る二人へ、スネークとジョニーは苦笑う





だがガトリングの脅威が突破されても
攻撃の手は緩まらない





「気をつけて!」


メリルの忠告が爆音にかき消され


着弾し崩れた塀の黒煙から





いち早く大砲を叩こうと駆けて、阻止された
作務衣姿の少女が地面に着地した





「無事ですかさん!」


「見ての通りだ、私より自らを案じろ」





ガラス球にも似た緑眼に習って九人も前を向く





固く閉ざされた堅牢な門前に、二基の大砲

無数の幕府軍ともどもこちらへ集中している





次弾装填!!消し炭にしろぉぉぉ!!」





発射されぐんぐんと迫る砲弾の前へ


一歩進み出て、神楽が横薙ぎに畳んだ傘を振る





真芯をとらえたスイングで見事に打ち返された
大砲の弾は 逆に門の上部へと飛来した





「つっ…次弾(つぎ)だぁぁ!!
早く撃てぇぇぇ!!






真っ青になりながら弾丸を込めようとする
兵の動きをメリルとジョニーがライフルで牽制し


倒れた兵士の胸ぐらをつかんだ神楽は


兵士を大砲の発射口へ、次々と投げ入れた





なっ!!まっ…待てぇぇ!!仲間だぁぁ!!


発射を中止し、砲身へ詰まった仲間を
引きずり出すべく男どもが群がり





投げ入れられた兵と彼らを蹴散らして


それぞれの大砲から新八とジョニーが飛び出す






「ひどいよ神楽ちゃん!!
何で僕だけこんな感じぃ!?」



「僕にいたっては二回目だよコレ!!」





人間カタパルトに虚を突かれ混戦に陥っている
大砲周りを、残る八人が殲滅し





「しっ…しまったぁ、大砲が奪われたぁぁ!!


大砲の奪還へ急ぐ者達を寄せ付けないように


新八が威嚇の一発をおみまいしていた





「ようやく着いたな将軍様んち」


アレ?インターフォンがないアル」


「困ったもんだ、今度から設置するようかけあってみるか」


「ぜひとも頼むぜよぉ…ま今回は
しょうがねーな じゃあこれだ」





悲鳴混じりに止める幕府軍の者達を無視して





「将軍様〜」


『あ〜〜そ〜〜ぼ〜〜!!』





大砲とロケットランチャーから吐き出された
砲弾が、門を貫通し入口を破壊した









もうもうと巻き上がる煙から





「デリバリー吉原NO.1太夫
傾城 鈴蘭 参上つかまつりました


「おっと、今さらチェンジはナシだ
汚いケツはよく洗ったか?」


銀時を先頭にした十人が城内へ現れるのを





「今夜は 眠らせねーよ」





二階に通じる階段の上から定々は眺めていた





「長生きはするものだ…歴史を紐解いても
これ程まで幕府(おかみ)を愚弄し、徳川紋に
泥を塗ったのは そなたらが初めてだろうな」


天下に仇なす大罪、と断ずる相手へ





「大罪を犯したのはアナタの方」


これまでの所業を知っていると口にして
信女はただ静かに返答する





「徳川定々…幕臣暗殺教唆の容疑で逮捕します」





一層おかしそうに、定々は尋ね返す





「この国を統べる私を 法そのものである
私をどうやって裁くというんだね」


「なら国際連合憲章第7章を用意してやる」





やや威圧するような態度で、
"平和を脅かす存在へ"の法律と


国による強制措置をほのめかすが





「そなたらの組織であっても一枚岩ではない」





似たような現状の国などいくらでもあり
告発がまともに取り合われることがない、と


鼻で笑った定々の返しに沈黙させられる







するとその後を引き継ぐように


「ふむ…地上の法で足らぬなら
地下の法を用意してやろう」





この男のせいで流された鈴蘭の涙と舞蔵の血

そして二人の無念を連ねて月詠が





「吉原が法 死神太夫が許さぬ」


言い放ち、舞蔵の開放を要求する





しかし依然として黙ったままの定々は
重ねられた問にも答えない





「奴をどこへやった

どこへやったと…きいておるんじゃ!!


たまりかねて投げつけられたクナイが





三本とも、合間に割って入った虚無僧の
錫杖一振りで砕き散らされる





「…天変に遭いて 天照を恨む者があろうか」





いかなる凶事も天の宿命、と十人へ語る
言葉を合図に回廊部分へ次々に


笠を差し錫杖と刀を携えた者達が現れ詰める





「ただ黙して受け入れよ
天照(てん)の声を 我等が刃を






法衣にあしらわれた紋に違わず"八咫烏"と
名乗った虚無僧こそが





朧(おぼろ)…」


天照院首領にして"奈落"最強の凶手だと

ごく僅かな動揺をにじませ、信女は告げる





「これで分かったろう…裁くは将軍(てん)
裁かれるは地を這う者達 それが世の理だ」





できる事は黙って天を仰ぐのみだが、嘆く事は
ないとお為ごかした定々が





「天がもたらすは災いだけではない

恵みをもたらすのも、また天だ





言いながら十人の背後へ、舞蔵を投げよこす







斬り落とされた右腕からおびただしい血を
流して横たわるその顔は紙のように白かった






「じっ…爺(じいや)さんんんんん!!





駆け寄った新八達が応急処置を施していても


構うことなく、定々は言葉を続ける





「この場を切り抜ければ鈴蘭とその男を
会わせられるぞ」





吉原まで到底命が持たないだろうと宣告し





「もっとも間に合った所で もうその男には」


ゴミでも放るように、舞蔵の右腕を
銀時の足元へ投げつけ





「指切りどころか
愛しい女を抱き締める事もできはしないが」



血止めを施されても虫の息で新八に支えられる
かつての忠臣を悪し様になじる





「一度ならず二度までも私を裏切るとは大した忠臣だよ

これが天に仇なした者の末路だ」





が、瞳に殺意を宿して獲物を握り





「まさしく
地をはいずる芋虫にふさわしい姿だろう」



愉快そうに声を上げ笑った定々へ―







一歩で目と鼻の先まで距離を縮めて
腕を振り上げたのは、銀時だった






振り返り様の早業と鬼気迫る気配が


さしもの老獪な将軍を瞬時瞠目させる







大上段から降ろされる木刀を錫杖で受け止め


仕込んでいた刀を抜き放ち、朧は

真一文字に銀時の首へ斬りつける


が…あろうことか刃は歯で受け止められ


噛み砕かれて、粉々に破壊されてしまった


返す刀で木刀が深編笠を貫いて


力任せの一撃は、朧ごと背後に庇われていた
定々をはるか後方へと押しやって

顔面真横の壁面へ突き刺さってやっと止まった





一連の所作に割って入る隙など存在せず


飛びかからんと構えていた二人も


舞蔵へ付き添っていた七人も、回廊にいた
"奈落"の者共でさえ黙って見ているのみであった







「約束の指なら まだ残ってるぜ」





口の端から血を流しながら、朧の向こうに
いるであろう定々を見据えて銀時が言う





「てめーを天上から地獄に引きずり落とすための
俺達(この)5本の指がな」








身構え、視線と武器とで牽制する十人が
降りてきた"奈落"の面々に包囲されるのを見て


笑みを取り戻した定々が問い返す





「貴様らのか弱き5本の指で何が出来ようか」


それなら、もう5本の指も追加するまでだ
…たとえそれが冷たい機械の腕であっても」






答えたの蒼い瞳が、鮮やかな紅へと
染まっていった直後





「…そ そなたら」





新八におぶわれ、意識を取り戻した舞蔵へ


振り向かず月詠が語りかけた





今迄 よく辛抱しんした
すまなかったの、長い間待たせてしまって」








待ち望んでいた月が昇り


約束に結ばれた吉原へ…鈴蘭の元へ


いかなる闇の中だろうと照らし導く
力強く言って彼女は、クナイを携え一歩踏み出す





「今宵の月は 決して沈まぬぞ」





槍の穂先を定々の方へ突きつけ直しも続く





気を確かに持たれよ舞蔵殿…新八、神楽
メリル殿、ジョニー殿、スネーク殿 先導を頼む」


「殿(しんがり)は わっちらが務める」





鯉口を切った刀を完全に抜き出し、信女が尋ねる





「いいのね、ここからは何人斬っても


「ああ、好きにしなんし
明日には消える一夜の夢よ」





周囲の動向を探りながらも、無線に向けて
が仲間へと伝える





「メリル、爺さんを頼んだ


『分かってる!命に代えても…
絶対に死なせてたまるもんですか!!





手に結びつけた"約束"を見せ合い


新八を先頭に五人が城の外へと走り去る









「…フン、老いぼれの命を救うため足止めか」





見届けていた定々が示す通り


出てきた新八達を、彼らを囚えん
集った幕府軍が待ち受けていた





「いくらそなたらが指を貸そうと
所詮は亡霊の指、無為に終わるが関の山よ」





気づけば天照院"奈落"の総動員が下へ降り


人の壁と化してじわじわと五人を押し包む


「逃れられると思うのか 我が掌から」





にじむ侮蔑と"亡霊"の一言に





「亡者が亡霊を嗤(わら)うか…

笑える冗談だ、売国奴






返すの面に感情はないが、眼差しと
声音は高純度の殺意で満たされている





「逃げねーよ どこにも」


定々へ答え、銀時が柄を握る右腕に
ことさら力を込めて引き抜く





「天上に座すのは日輪か、それとも
けりつけようじゃねーか なぁ」


その途中で朧が木刀をつかむけれども





対峙する彼は、驚く所かむしろ
悪鬼のように笑っていた


「天上の 遣い(パシリ)殿」





刹那、金属がぶつかったような耳障りな音
ごく近くから鳴り響いて





目の前の深編笠から突き出された無数の針
四方八方へと射出されてゆくが


とっさにかわして距離を取る銀時


だが、朧は木刀が刺さった笠のままで
懐へと踏み込んでゆく





朧の襲撃とほぼ同じタイミングで


新たに降りてきた三名の、頭髪のない
奇妙な出で立ちの兵を が相手取り


残る"奈落"一同を月詠と信女が迎え撃つ





「ゆくぞぉぉぉ!!」








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:城内と城外組にちょーど半々で分かれ
こっから怒涛の戦闘になりそうです


月詠:おいちょっと待ちなんし、最後に
が相手してた奴らは何じゃ?


狐狗狸:それは次回以降、主にB面
明らかになります…ので今は伏せます


のぶめ:初弾が外れたのは威嚇じゃないの?


狐狗狸:かもね、けど照準定めきれず
外したんだろーな〜とも考えたもんで


カズ:塀の上を走るアイツの姿を追加したのか
…お嬢ちゃん相手に狙い撃つとは度し難いな


銀時:で早打ちの挙句ハズしてやがるしな
あのデケェ大砲は飾りかっつーの、まだオレの


月詠:言わせんぞ(クナイ乱舞)


銀時:いつもより激しいってツッキー!
おいどうすんだテメェのせいだぞオレもどき!!


カズ:オレだって出番欲しかったん…ぐふっ(倒)


ビッグボス:全く、お前の出番はまだ先だ
おとなしく私と待機しておけ(カズを回収)




次回はシリアス…かつ核心的な部分多めです


様 読んでいただきありがとうございました!