三人と信女、そして真選組の面々に見送られ
銀時達六人は本丸へと歩を進めてゆく





その道中で 耳障りな笛の音を捕らえて





まずい!脱走が気づかれたか…」


「囲まれる前に、ひとまず屋根へ上がるぞ!」





一も二もなく、六人が近くの建物へと目指す中





「何してるんですかさん!急ぎましょう!」


「先に行っていてくれ、すぐ戻る


止めるのも聞かず 彼女は作務衣をひるがえして
元きた道を引き返し







木立の合間から襲い来る


牢の屋根にいた連中と同じ姿の曲者を仕留めると





少し先の茂みに潜んでいたそよ姫を見つけ出す





「…危険ですからお戻りを」


「さすがさん もう見つかっちゃった」


そよちゃん!何でついてきちゃったアルか!」





無表情のと、後をつけてきた神楽へ





姫は困ったように笑いながら答える


「のぶめさんに背中押されて来ちゃいました
私も、皆さんのお役に立ちたくて





二人は顔を見合わせ…小さく笑って





「しょーがないアルな〜じゃ、一緒に行こ!」


「足元にお気をつけを、そよ姫殿」





乗り気の姫を伴い四人の元へと戻っていく











第五訓 個人的には「国奪り」って
書いてもドキドキします












…夜気を裂いて、高らかに警笛が鳴り続ける





「こりゃ、桂さんが見たら喜びそうな光景だな」


「ったく…まさかババア一人のために
国盗合戦しかける事になるたぁね」





足下に群がる城中の兵士を見下ろして





「これで正真正銘僕達も天下の大罪人ですか
はぁ〜姉上にどやされる」


心配すんなよシスコン、地球にいられなくなったら
宇宙に高飛びすればいいだけの話ネ」


「誰がシスコンだぁ!!」


「兄上のお眼鏡に叶う場所があればよいが」


「アンタはちょっと黙っててくれませんか!?」


騒ぐ三人をよそに 銀時が神楽の軽口を引き継ぐ





宇宙の万事屋ってか、そいつも悪かねーかもな」


蓮蓬ん時に宇宙で色々やらかしたのに?
つか家賃より船の維持費のが高いじゃないか」


「安心せい、も含めぬしらの身柄は
独立都市 吉原が責任をもって保護しよう」



「吉原の万事屋になれとでもいうのかよ」


「いやオカマBARに丁度人手が足らん」


「「だったら宇宙のがマシだ」」





と、ここでこっそり後ろに控えてたそよ姫が
やけに嬉しそうな顔で言う





「じゃあこれは国盗ならぬ 玉盗合戦ですね」







軽い沈黙の後、銀時は迷わず神楽を叩いた





「いたっ何で私アルか」


こっちが聞きたいわ!お前がアレ連れてきたの?
お前があんな下ネタしこんだの?」


「銀ちゃんがいたいけな少女に下ネタばっか
言ってるからこうなるネ!」






しばし呆然と眺めていた五人だったが


両者のケンカに、そよ姫を皮切りにやがて
全員が笑い出し


…しまいにはケンカした当人達も大笑いした







笑いが収まり、月詠が五人へと訊ねる





「吉原がためにぬしらがここまで身を張る必要は
ありんせん、引くなら今のうちじゃ」





もう遅い、と銀時が小指を見せて返す





「約束しちまったからな」


「…そうか、ならば、約束じゃ


己の髪を一房切り…月詠は


全員で、一緒に生きて戻る誓いを口にする





万事屋三人も、も、


自らの髪を少し取り 互いの髪を指へ巻き付け





「約束だ」


手を重ねて、舞蔵を伴い鈴蘭の元へ帰る
心中立てをその場で交わす








「今生の別れは済んだ?」





いつの間にか屋根の端に佇む信女へ新八が問う





「まさかのぶめさんも…」


「私は見廻組の生き残り
任務を遂行しなきゃいけない





しかし、その後続いた言葉と彼女の行動は


彼らにとって予想外のものだった









「そこをどけモブども」


「姫様ブッ殺すどおおぉぉ」





そよ姫を人質に、神楽と信女が自分達を囲む兵を脅し





「きっ貴様ら姫様になんという無礼を!!


「百遍処刑されてもその罪贖えぬぞぉぉ!!」


「じゃかしーわコルァ臭ぇ口でしゃべんなアル」


「次しゃべったら一言ごとに姫様の指
おとしていくから」





真っ青になる新八や、額を抑えるらが見守る中





「だ…だずげで〜
ど…どぼして私がごんな目に゛ぃ〜」



必死の泣き顔で姫が助けを求め


勝手にしゃべった咎として、信女が腕を切り落とす





吹き出す血にツッコミ二人を含む周囲が慌て





「姫様ぁぁぁ!!」


ハイ またしゃべったから腕一本」


「わっ…わかった!!道を開けい!!


「ハイまたしゃべったから足…「もういい
もういいわ!!」






容赦無いやり口と吹き出す血に、兵達が
血相を変え脇へ逸れて


先へ進んだ銀時達が一旦物陰へと隠れてから







「うまく行ったね」


隠していた両手で血糊(ジョニー提供)を取り出し

満面の笑みでそよ姫がそう言った





そう…さっきまでのやり取りは、彼女達による
迫真の演技だったのだ







「血ノリでごまかせるかドキドキしたけど
みんなのビックリした顔面白かったね」


「「「ねー」」」


「「ねーじゃねぇんだよドS三人娘!!」」


「取り乱すなお主ら
この程度、普段のお遊びでは軽い方だぞ?」


「「どんな遊び方してんの姫様ぁぁぁ!?」」


の発言により姫の天然Sっぷり
改めて再確認されつつも





「姫様これ以上は危険です、どこかにお隠れ下さい」





身を案じて月詠が進言するが


そよ姫は、頑として聞き入れなかった







「何も知らなかったとはいえ爺(じいや)を
城(ここ)に縛りつけていたのは私です」





気づけ無いまま、護ってもらっていたから





「だから今度は私が爺(じいや)の力になって
あげたいんです…どんなにはしたないって叱られても」


「そよちゃん…」


「はしたなくなんかありませんよ
アナタは立派な一国の姫君です、そよ姫様





やわらかな笑みで肯定され





「ありがとうさん
さあ早く、叔父上はこっちです





笑み返した姫が、先導して階段へと駆け出していく









…そこで足を滑らせて


段差に頭を打ち付けたそよ姫は


あっという間に血ノリまみれになって気絶してしまう


しかもご丁寧にダイイングメッセージで
"よろずや"と残すぐらいの徹底ぶりだ





「「姫様ぁぁぁぁぁぁあああ!?」」


ちょっとぉぉぉ コレっ力になりたいって
言った矢先に気絶しちゃったよォ!」


「完全に殺害現場みたいに
なっちゃってるぞぉぉぉぉぉぉお!!」



まさかの事態に、さしもの彼らも動揺を隠せず





「こんな所見られたら大変っ…」


「バラした方が早い「早くないと
言ってるじゃろーが!!」



「そうとも早まるな信女殿、脈はある」


「「やめてぇぇぇ!(おまえ)が言うと
フラグ確定になるからぁぁ!!」」



「アラやだ私ったらはしたない
アレ…はしたないが遅れてくるよ」


いっこく堂もいい!!つか意味ないから銀さん!!」





ボケ合戦をかましまくった所で





貴様らぁぁぁぁ姫様に何をしたぁぁ!!」


追いついてきた兵士が、階段下へと殺到してゆく





振り返った銀時達がその様子に表情を引きつらせた





「大群が押しよせてくる!!」


「マズイな、この数じゃ一溜りもないぞ」





早々と石段を上がりきった神楽が





「そよちゃん ちょっと待っててね」





言いつつ姫を近くの茂みへ放り込んだのと


兵隊が段上を駆け上がって行くのは同時だった





「国賊めが

全員残らず討ちとれぇぇぇ!!」



「女子供も容赦するなぁぁ」








数に物を言わせ、突き出されたいくつもの警杖を





開いた傘で難なく防ぎ彼女は言う


女子供?言ってくれるアル」





立ち止まる男達の横手を駆ける両脇の進軍は


踊るように死角を縫って突き出される
槍の柄によりことごとく阻まれ


「吠えるな、刈られる覚悟無き愚か者が」





傘に抑えられた棒の上へ飛び乗った信女が


「あの主にしてこの臣あり
つくづく女をナメくさった国





神速の居合で警杖と、彼らの足場となっている
階段を切り崩して飛び上がる





舞い上がった土煙を目にして





「撃てぇぇぇぇ!!」


階下で距離を取っていた兵隊が一列に並び
取り出した銃の先を向けて引き金を





引くより早く、飛来したクナイに銃口が塞がれ


或いは遠くから狙い撃たれた弾丸に銃身を
弾かれて銃撃を阻止される





「ならば、止めてみろ


軽々と空を舞い、兵達の只中へ月詠が降り立つ





「ぬしらが嘲(あざけ)た 女を」





まだ遠い距離から、無線とライフルを構えたメリルが


傘を片手に階段の元へ着地した神楽が
不敵に笑い言葉を引き継ぐ





「護ってみなさいよ」


「女の涙で固めた 虚飾の城を」






取りこぼさぬように、背後へ音もなく


回り込んだと信女が微動だにしない
無表情で揃えて得物を身構える





「貴様らがその名」


「忘れたのならばもう一度しらしめてやろう」


「殺れぇぇぇぇぇぇぇぇええ!!」






雄叫びを上げて兵士達が彼女らへ襲いかかり


増援に駆けつけた者達が、刹那息を呑んだ





佇んでいた同志が…彼女らの攻撃によって
一斉に倒れ伏したのを目にして






『傾城 国崩しに参る』







背後の階段からも降りてくる番兵の一群へ





「やれやれ、おっかないもんだ」


傾城5匹がご同行とは」


「将軍を相手取るより、よっぽど骨が折れそうですね」





どこか不敵な笑みを浮かべ





「悪い事は言わない、援軍を呼んでくるんだな」


将軍家直参だかしらねーが、泰平の時代に
なま腐ったてめーらなんぞに俺達の相手が務まるか」

腰に刺した木刀や銃を抜き放った銀時達も地を蹴って飛ぶ





「「「こちとらあのアバズレどもと
毎日戦国時代送ってんのじゃいぃぃぃ!!」」」










警杖を構えた兵達だけでなく、抜刀した侍や
銃を手にした者も多く入り交じるが


距離を取ろうが詰め寄ろうが


一切合切関係なく、端から吹き飛ばされて
次々と七人に倒されてゆく





大上段に打ち込んだ刀を素手で弾かれ


「なっ…!?「鍛錬が足りん」





下から交差させる形で、左腕からの刺突が
みぞおちへと叩き込まれて侍は倒れ伏す





「相変わらず、ぬしの槍は
近くも遠くも変幻自在じゃな」


「月詠殿のクナイ捌きには負け申す」


「褒めても何も出んぞ…クナイ以外はな!





一呼吸の合間に放つクナイが、こちらを
狙撃せんと狙う兵の手の甲へと突き刺さる







…だが、終わることなく兵士は湧き出し





いまだ遠くのメリルがサポートしていても
彼ら七人を押し包む軍勢は厚い





「銀ちゃん 一人あたり何人アルか」


「百人…二百人、やめた…眠っちまいそうだ」


数えようとして、あまりの多さにバカバカしくなり


諦めた銀時が六人へと言う





「いいか…一歩たりとも仲間から離れんじゃねーぞ

背中は任せて何も考えず
てめーの眼前の敵だけ斬り伏せろ





いつになく真面目な顔つきで





「てめーが倒れない限り 誰も倒れやしねぇ」





有象無象の大群に怯む事なく





「一本の刀になれ、壁をぶち抜け
将軍のあのふざけた城(おもちゃばこ)ぶっ潰すぞ


力強く吐き出された言葉に、背中を合わせた
彼らも呼吸を合わせて





「国盗合戦 開始だあああああ!!」





先陣切った銀髪の侍へ、迷いなく続いていく





「とっ止めろぉぉぉ!壁だぁぁぁ壁になれぇぇぇ!!」





行く手を塞ぐ者共の一番前


葵の紋を兜に抱く、隊長らしき男を





「賊共をこれ以上将軍(うえ)様の元へ近づけっ…」


「うすいぃぃぃぃいい!!
サガ○オリジナルよりうすいぃぃぃぃぃぃ!!」



命令を下している最中に盾ごと踏み台にして

周囲の兵達を銀時が遠慮無く蹴散らす





残る六人も それぞれ体術と得物を駆使して


迫り来る番兵を果敢に打ち倒し続けてゆく





「それでもてめーら 将軍の御旗(はた)しょった
幕府軍(さむらい)かぁぁ!!」



「とっ…止まらんんん!!先陣(まえ)も」


右陣(みぎ)も」 「左陣(ひだり)も」


殿(うしろ)も…つけ入るスキがっ…」





一撃食らわせる所か、ロクに近づくことさえ
ままならないその有り様に





止まることのない七人を"巨大な弾丸"だと
倒れゆく者達は揃って称した







「お待たせ!」


数人の兵士を投げ飛ばし、少し前に別れた
メリルもようやくに合流を果たす





メリル!ジョニーとスネークは?」


「横側へ回りこんでる、ガトリングとかの兵器が
まだ残ってるみたいだから気をつけて!」





むべなるかな、件のガトリングが進行方向の
段上へと一列になって控えていた








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:心中立て、銀さんだけ六人分なので
右手の指にも髪巻いて両手を重ねてます


土方:それ本文の方で書けや


沖田:つーかオレらのシーン
ばっさりカットされてるけど、どーいうことでぃ


狐狗狸:前回の反動と退助様サイドの兼ね合いで
こういう形になりました…ので刀向けんのやめて


のぶめ:体術もそこそここなすのね


新八:え?ああさんですか?
確か、槍が手元にない場合の無手での戦い方
練習を積んでいるって聞きましたけど


銀時:とかにか?その内アイツ波紋とか
覚えてきたりしねーだろーな


狐狗狸:それジャンル変わっちゃうから




あくまで補助程度なのでメイン攻撃はです

そして次回、年が明けてのお城訪問へ!


様 読んでいただきありがとうございました!