百華のほとんどと外国人二人を引き上げさせ
ビルの屋上から城内を双眼鏡で偵察する最中
「元将軍に会いにこっそり江戸城に忍び込んだのが
バレたら俺達どうなる」
「死罪でしょ」
「じゃあ将軍を出待ちして近づいてったらどうなる」
「死罪だな」
「それじゃあよぉ、ババアの花魁と
ジジイの元将軍どっちが金ためこんでると思う」
「そりゃ流石に将軍様だろうな・・・それで銀さん
いい加減何が言いたいんd」
「よし作戦が決まったぞ、まずは月詠とゴリラ
警備のスキをついてお前ら城に忍び込め
そのスキに俺は警備にそれを密告し将軍から
褒美をもらう これで完璧だ」
「「こうすればもっと完璧に(なりんす・なるわよ)」」
余計な提案を口にした銀時は、側のタンクに
クナイで貼り付けられ銃弾を浴びせられていた
鈴蘭の客と噂されていたのは先代将軍こと
十三代将軍 徳川定々
天人襲来の折、倒れた十二代将軍に代わり
売国奴と叫ばれながらも開国を推し進め
幕府を立て直し、名君と言わしめた
そして将軍職を辞した今もなお
相談役として城中で絶大な権威を持っているとか
「かなり偉いのだな」
「間違っちゃいないが…その一方で遊興が
派手な事でも有名で、将軍家始まって以来の
数の側室を抱えてたんだ」
「要するに何だ 土曜夜8時暴れん坊将軍
よろしくって事か」
「土曜どころか毎日夜8時
暴れん坊将軍よろしくですよ」
「でもなぁあのババアは男と吉原から抜ける
約束をしてたんだぜ?それ程の地位がある
スケベ将軍ならババアを落籍してかこえるだろう」
銀時の疑問を、新八は"体面の悪さによる
家中の目を気にした"と推測するけれど
月詠とメリルはその意見を真っ向から否定する
「果たすつもりもない約束に整合性なんていらないわ」
「百戦錬磨の太夫が客の戯言に惑わされたのも
相手が次期将軍だったとすれば納得がいく」
「奴はその地位を利用して、鈴蘭さんを
もて遊んで捨てたのよ…許しがたいわ」
「「標的(ターゲット)は将軍で決まり(ね・じゃな)」」
「「標的(ターゲット)って言い方止めてくんない」」
第ニ訓 じいやはきびしいからいやー!
Wツッコミも虚しく女二人によって
城内侵入作戦が将軍抹殺計画へシフトしていく
物騒かつよからぬ流れのその側で
並ぶ少女二人は、双眼鏡で城内を眺めていた
「ムダな計画立てなくても、お城に入って
将軍に会うだけですむ話ネ」
「そうは言うが今から文を出して間に合うか?」
「んなまどろっこしいマネいらないヨ
私なら顔パスで楽勝アル!任せるネ」
「頼もしいが、この通り近頃は警備が厳しい
下手に騒ぎを起こすは…ん?アレは」
「むおっ!パンツ丸見えアル!」
半ばのぞきに夢中になっている神楽をヨソに
双眼鏡から目を離したは、手元から
携帯電話を取り出し…眉をしかめて呟く
「気は乗らぬが、試す価値はあるか」
そんな少女らのやり取りの傍ら
月詠は無謀を承知で城へと乗り込もうとしていた
「オイ!!」
「わかっておる…将軍に罪はありんせん」
一夜の夢を見る吉原で、交わされた約束など
月とともに忘れ去られるのが理(ことわり)で
月詠とて身に沁みて重々承知しているのだが
それでも来る事のない相手を待ち、一生を
閉じようとする鈴蘭を見殺しには出来なかった
「遊女(おんな)は吉原のために一生を尽くした
ならば吉原も遊女(おんな)がために尽くそう」
振り返らぬまま、彼女は決意を口にする
「かりそめの夢しか見せぬ月は もういらぬ
最後の月は…夢を叶えんがため昇る」
一度は同じように将軍を恨み、諭されて
冷静さを取り戻したメリルも
「…っ私も行くわ!」
自らの動機と月詠の言葉に押されて歩き出す
…そこでようやく"行動"が終わったと
彼らと同じように話に耳を傾けていた神楽が
「待たれよ二人とも」
「その夢 無謀なんかじゃないアル」
ビルを出てゆこうとする背へ呼びかけた
堂々と江戸城の門前へやって来た神楽が
側に佇んでいる見張りの一人へ耳打ちをすると
通用口越しに、現れた白い制服の者と見張りが
二度三度 何かを話し合い
…そして、しばしの間を置いて
「開門んんんん!!」
呆気にとられた銀時と新八、月詠にに
メリルにジョニーの目の前で
堅牢な城門が大きく開いて
「控えおろうぅぅぅぅ!!
そよ姫様のおな〜り〜」
「神楽ちゃーん!!さーん!!」
「姫様はしたないですぞ!!」
背丈の低いお目付け役らしき老人を引き連れ
そよ姫当人が笑顔で駆け寄ってくる
「そよちゃん」
「久し振り元気にしてた!!」
「姫様!人前で抱擁などはしたないですぞ」
呆然としている六人をよそに
「もぉ〜しばらくきてくれないから
さびしかったんだよ、手紙も少ないし」
「ゴメンね〜中々とも都合つかなくて」
「誠に申し訳ない」
「いいんですよ、こうして二人で会いに
来てくれたんですから…あっそうだ!
約束してた新作の酢昆布もってきてくれた?」
とても仲良さげに二人で手を取りあって
「ほらも一緒に回るアル!」
「い、いや私などが混ざるなど…」
「遠慮なさらないで、ホラ!」
佇んでいた作務衣少女まで巻き込んで
しまいには三人でスキップ踏みながら回り出す
笑顔2照れ1の楽しげなメリーゴーラウンドを
「え?何アレ 誰アレ、ハイジとクララ?」
「僕の記憶が確かなら…現将軍の妹君
そよ姫様ですね」
「オレの記憶が確かなら姫様はあんな小汚い
ハイジとユキちゃんとヨロレイホーとかやんないよ」
信じられないと言いたげな眼差しで彼らは眺める
一国の姫君と繋がりがある事に驚き
輪から解放されたへが訊ねる
「どうやってそよ姫と知り合ったんだ?」
「お忍びの姫と会って以来、文通などしているぞ
私も縁あって手紙や伝言などを引き受け」
『経緯を話せぇぇぇぇ!!』
普段通りの要点がズレた返答へ
キレイに唱和したツッコミを無視して
「今日は私の友達も連れてきてるけど大丈夫?」
「勿論、神楽ちゃんの友達は私の友達ですもの」
姫に頭を下げられ、逆に銀時の方がかしこまるが
「ホントにモジャモジャだね」
「あの神楽ちゃん何余計な事言ってんの」
「じゃああっちの
人間かけてるメガネがぱっつぁんさん」
「人間かけてるメガネって誰ェェ!?逆!!
僕の事どんな風に伝わってんの!?」
神楽によってアレな前情報を吹きこまれてたり
顔見知りらしいが紹介した
二人の男女を指さして
「ちなみにその二人は新婚ホヤホヤのリア充で
ネオ秋葉でコスプレデートも」
神楽が余計な個人情報教えてどつかれたり
「じゃあそちらの女性は?」
「これは吉原から将軍を暗殺しにきた…ムゴッ」
思わず神楽の口を塞いで気まずくなった月詠を
「アレですコイツは吉原から将軍悩殺しに来た
デリバリーヘル…「どんなフォローじゃ」
とんでもないフォローした銀時がクナイを
頭に頂戴したり
「デリバリーヘルさんですね」
「結局地獄(ヘル)デリバリーしとるじゃろーが!!」
「姫様!!やれデリバリーヘルスだぁ
ファッションヘルスだとはしたない!!」
「いや誰もそこまで言ってないですけど」
「せめて略してデリヘルさんとお呼びくだされ!!」
「何も変わってませんよ!!」
お付きの老人までボケに回ったりで大混乱が
引き起こされたものの
八人は無事、城内へと通されたのだった
「…ごめんなさい折角遊びに来てくれたのにコソコソと
じいやもこんな時に無理言ってしまってごめんね」
「姫様のわがままには慣れ申した
また城から脱出されるよりはマシでございます」
「あのぉ〜何かあったんですか?」
恐る恐る訪ねた新八へ、姫は城内に戒厳令が
敷かれていると口にした
「姫様機密情報ですぞはしたない!!」
「この人達は大丈夫よ、じいや」
最近になって幕府要人の襲撃事件が相次いでおり
城内は厳戒態勢でピリピリしているのだとか
「なるほど…警備が厳しかったのはそれでか」
「も…申し訳ありません、何か大変な時に
お邪魔しちゃったみたいで」
かしこまる彼へ、姫は笑って答える
「いいんです、この所お城全体が暗い雰囲気で
心細かったから 皆さんに会えて元気が出ました」
「そうですか」
返事は、襖の開けられた縁側から聞こえた
「ならば仕方ありませんね、本来なら
こんな事態ですから姫様のご友人とはいえ
お帰り願わなければと思っていたのですが」
特別に見逃しましょう、と言いながら
「私の友人(メルトモ)もいるみたいですしね」
携帯片手に、縁側へ腰掛けていた佐々木 異三郎が
振り返ったのを目の当たりにして
銀時が顔を引きつらせ
が僅かに眉根を寄せる
「さっ…佐々木殿…申し訳ない、これはっ…そのっ」
頭を下げるじいやへ異三郎は鷹揚に両手を上げ
「我々見廻組が殿中の守りを預かった以上
姫様方の身は絶対安全ですから」
下手人が攘夷浪士だという予測を口にしつつ
「元攘夷浪士が潜りこもうと何の問題もありませんよ
ねっ 白夜叉殿」
すれ違った銀時の手へ携帯電話を握らせ
ついでとばかりに、無表情に腕を組んだ
作務衣少女を見下ろし問いかける
「それでさん九代目携帯の具合はどうですか」
「十代目だ、それと今日こそは携帯をお主に
返したいのだがいい加減受け取ってもらえぬか」
「以前にも申しましたでしょう?教材代わりに
差し上げますから活用してくださいと、オマケに
今回の皆さんのご入城にも役に立ちましたし」
「確かに便利だが私には不相応故返すのだ
破壊した分と紛失した分の請求も、必ず払う」
お互いに表情はロクに動かないものの
彼女の声と態度には、それを凌駕するほどの
必死さが器用にも表されているのだが
「遠慮なさらず、アナタのような亡霊が
立派なメル友になるまでの貸しですから」
と言い切って相手が立ち去ったため
「…携帯など…文明の利器など…っ!」
「「(さん)がヘコたれたぁぁぁぁ!?」」
「し、しっかりしなんし!」
ガックリとヒザを折ったに、らは
本日何度目かの衝撃を味わったのだった
「姫様くれぐれもお静かに これ以上問題を
起こせばこの六転舞蔵の首が飛びますので」
「そよちゃん今日は何する?鬼ごっこでも
しようか「きいてた!?じいやの話!!」
姫の自室へ通された神楽は、もはや
当初の目的を忘れて遊ぶ気満々なのだが
厳戒態勢を敷かれた城内と 信女が姫の警護を
行っている状況を理解している銀時達は
迂闊に動けずに悩んでいる
「鬼ごっこなど許しませんぞはしたない!!」
「かたい事言うなヨ、だからお前爺嫌とか
あだ名つけられるネ」
「じいやってそーいう意味だったの!?」
「違うよ神楽ちゃん じいやのじいはG(グレート)
…つまりG(グレート)に嫌って事なの」
「流石はそよ姫殿、博識ですな」
「姫様ぁぁ!!さらにヒドくなってますけど!!」
「いい加減にしなんし神楽」
と自由に城内を動くため、じいやと番犬を撒くべく
月詠が会話へ割って入り
「この状況で鬼ごっこなどしたら
警備の者達に迷惑じゃ」
もっともらしく諭してから、徐ろに缶を取り出し
「ここはおとなしく「缶蹴り」にしよう」
姫達へ缶蹴り(及び隠れんぼ)を推奨し始めた
むろん彼らの懸念通りじいやは承知せず
「缶を蹴る位ならじいやを蹴りなされぇぇ!!」
「「「そこぉぉぉぉ!?オイぃぃぃぃ
一番はしたないのじいやじゃねーか!!」」」
庭の砂利へ四つん這いになり、尖ったヒールで
踏みつけるよう要求したので男三人のツッコミと
「G嫌ぁぁぁぁぁ!!」
姫の悲鳴&投げた缶がぶつけられた
そんな彼らの騒ぎを見過ごすワケもなく
「缶蹴り、爺嫌蹴り…そんなもの認められない」
「げっ!!やっぱ来やがった おい!
お前囮になってあの番犬まいてk」
「断る 逐一首を狙われる身にもなれ」
「オメー言っとくけどそれブーメランしてるよ!
お前もマヨネーズ狂の首狙ってるからね!?」
不毛な言い争いも無視して、歩み寄った信女が
刀を鞘から抜きながらこう言い放つ
「爺嫌斬りがいい」
「「お前も参加するんかいィィィ」」
「爺嫌斬りって何ィィ!?
最早ただの殺人ゲームだよ!!」
なし崩しで結局じいやも信女も遊びへ
参加する流れになり
流石にマズイと思った銀時とが
ルール変更を提案するものの
「じゃあ私が鬼 見つけた人を斬っていく」
「犠牲者増加してんだろーが!!」
「どんだけ人斬りてーんだてめぇ!!!」
ガン無視で缶を握りしめ、彼女は
銀時へ開始を促す
「と、止めなくていいのかな…」
「信女殿は頑固だからな、私は姫の方へ行く」
ため息をつきは、笑いながら逃げる
少女二人へと追いつき行動を共にする
戸惑っていたジョニーも
「ジョニー!アナタはじいやさんの方を追って!」
「わ、わかったよメリル!!」
メリルの指示を受け、必死で逃げた新八と
じいやの背中へを追って駆け出す
…直後に鳴り響いた轟音と
"起こった出来事"を六人が知るのは、大分後である
――――――――――――――――――――――
あとがき(というか楽屋裏)
狐狗狸:ウチの子は某短編以来 そよ姫と神楽間の
手紙配達とか遊びに行く伝達、時たま話し相手などを
引き受け暗躍してました
銀時:待てその言い方不法侵入のニオイすんだけど
神楽:ささいな問題アル、そもそもツッキー達の
話が無くても酢昆布持って遊びに行くつもりだたネ
そよ姫:お二人が来たって伝えてくださって
本当に助かりました
異三郎:いえさんが携帯で事前に予告線を
張ってくださったので姫様や部下を無駄に
警戒させずに済み、こちらも助かりましたので
のぶめ:退屈していたからちょうどよかった
新八:抜刀しながら言うの止めてください
何なのこの人超怖い!!
狐狗狸:遊び相手は爺嫌にお願いします
舞蔵:爺YHAAAAAAA!?
原作ではきっと、見張りに脅し気味の伝言
→じいやへの報告→そして姫に…と推測
様 読んでいただきありがとうございました!