すっかり静かになったかぶき町のある家の中
「遅いな…」
時計と外とを見やりつつ彼は呟く
「確かに外の様子は変だけど、僕は
あの子の方が心配だわ…」
美少年と言えるその表情を曇らせて
妹の忠告を受け、大人しく家で
吉報を待ち続けていた彼の耳は
「え…何、この音…は…」
街中で響き始めた"音"をハッキリと捉えた
場所が変わって、本部の研究施設内部にて
短く刈り込んだ白髪にベレー帽を被り
厳しい顔つきの軍人全とした男は
小さくなったへ視線を定め
「ごきげんようビッグ・ボス…いや
今はリトル・ボスと言った方が正確かな?」
ニヤリと不敵に口の端を上げる
「何故、生きているジーン!
あの時倒したはずだ!!」
「私がお前に倒された?はて?
なんのことかなジャッ「あーこのハゲた
オッサンがお前んトコのバカか?」
出会い頭の緊迫感をぶっ壊したのは
彼の隣でジーンを指差す銀時だった
第九訓 MGS比率が高くなっておりますが
あくまでこれは銀魂です
「貴様、人の台詞を横から遮るんじゃ」
やや面食らいつつも仕切り直そうとするも
「そうだぞ これから折角プロデューサーが
自らドッキリ種明かしをしてくれると言うのに」
「バカアルなヅラは〜こんなショボイハゲが
プロデューサーのワケないネ、精々ADよ」
「どうでもいいから早く帰らせて欲しい
兄上が心配で心配でたまらぬ」
「言いたい放題かあんたらぁぁぁぁ!」
約三名の好き勝手発言+新八のツッコミが
立て続けで場の空気を破壊し
流石のジーンも呆気に取られていた
「バカ達は放っておいて…何故生きている?
それに学会を去った烏魔 梗子を引き込んで
一体何を企んでいるんだ?」
「ほぅ…もうあの女の事を突き止めているとは
流石だな ジャックよ」
「誤魔化すな!街中の成人や俺達を
子供にしてお前は何をしようとしている!!」
「私は何もしていない、あの女に己の力を
振るう場と手足となる配下を貸しただけだ」
そこに複数の足音が迫り
「いたぞ!例のガキどもだ!!」
「ジーン様、ここは我々にお任せを!!」
七人とジーンの背後から 銃を構えた
黒服達数名が迫り来る
「っヤバいぜ銀さん 囲まれ―」
「手を出すな!!」
が、首謀者である男の一声が
周囲の動きを止めた
「し、しかしジーン様」
「私は今こやつ等と話をしているのだ…
無粋な真似をするなら貴様から排除するぞ」
「はっ 失礼致しました!」
敬礼し、黒服集団はその場で銃口を下ろし
直立不動の体勢で控える
片眉を上げて銀時が口を開いた
「こりゃたまげたな…おいオッサン
アンタオレらを狙ってたんじゃねーのかよ?」
「当初はな…しかしこちらの準備が整った今
貴様等は最早脅威では無くなったのだ」
「甘いなジーン、薬のデータは既に確保した
このバカ騒ぎが終わるのは時間の問題だ」
宣言に しかし相手は余裕を崩さなかった
「いかにも まさしくここまでは
茶番に過ぎない…だがこの流れはあくまで
こちらの予定通りなのだよ
この場所は所詮仮初のモノに過ぎない
計画は依然、然るべき場所にて進行中だ」
「そんな…これ以上何をするつもりですか!」
「いずれ分かろう…最も今更貴様等が
何をしようと手遅れだがな」
槍を構えたと指を鳴らした神楽が
揃って一歩前へと進み出る
「見くびるなよハゲ、こっちはテメーを
今すぐぶちのめして止めさせる手もあるネ」
「兄上に危害を加えるつもりなら
こちらとて容赦せぬ」
「私を倒しても無駄だ、この計画は
あの女が仕切っている…止まりはしない」
「例え全てが烏魔とやらの策略としても
貴様が行っている事は、明らかに罪だ」
「そーだヅラっちの言う通りだ!
計画だか何だか知らねーが勝手にガキにされて
オレら迷惑してんだぞ!!」
「罪?迷惑?愚かな…我等のこの計画が
そのような個人的感情で量れるものか」
フン、と子供二人を一瞥し
ジーンは滔々と言葉を語り始める
「いいか、善悪の判断など所詮は個人の中に
線引きが存在する 絶対的な正義などありえぬ
…なればこそ指導者が必要なのだ
絶対的な理想へと導く指導者が!!」
「そんなものはこの江戸の街に必要ない!」
否定するを 彼はせせら笑って見下す
「果たしてそういい続けていられるかな?
このぬるま湯のような平和など 強大な力が
加えられれば簡単に壊れる脆いものだと知って
それでもお前はここを守るつもりがあるのか?」
耳栓をしていても、なおジーンの声音には
抗いがたいような気迫がこもっており
七人の内の半数は我知らずたじろぎ
余計な口を開く者がいないと気付き
不敵な笑みがますます深くなる
「例えばお前達七人かお前達の知り合いに
私へ与する者が紛れないと誰が言える?
昨日までの隣人が、戦友が、家族が、
お前達に銃を向けるかもしれないぞ?
お前達を恨んぶるぁぁぁぁ!!」
盛り上がりつつあった演説の正に真っ最中
炸裂した銀時と神楽のW飛び蹴りに
ジーンは仰け反りながら吹っ飛んだ
「ゴチャゴチャうっせーよ、ったく黙ってりゃ
ワケわかんねー長話始めやがって」
「ちょっとぉぉぉ!敵とはいえ
話の最中で不意打ちは卑怯でしょ!?」
「油断してる方が悪いアル そもそも
途中から私も話聞き流してたネ」
「同じく」
「ちっとは飲み込めおバカ三人んんん!!」
しかしながらはちょっぴり
飛び蹴りかました二人をGJと思っていた
「何て乱暴な、全く最近のガキは…」
呟きつつ身を起こし口元から零れた血を吹くと
「まあいい…これはほんの挨拶程度だ
それでは私は失礼するよ諸君」
「待て ジーン!!」
「お前達、奴等の始末は任せたぞ」
彼に答えず ジーンは短く黒服に告げると
踵を返して立ち去った
黙したまま佇んでいた黒服軍団が動き始める
「ちっ、どーやらもうひと暴れしなきゃ
ミッションクリア出来ねーらしいな」
「上等アル ブッ叩くのOKなら
ハンターの一人や二人恐るるに足らずネ!」
「無茶ですって、こんな大勢の銃を相手に」
「落ち着け新八君、俺に考えがある
…みんなちょっと耳を貸せ」
やや中央に固まった七人へ銃口が向けられ
「撃て!!」
銃の引き金が引き絞られる直前
グレネード二つが前と後ろに投げ放たれ
思わず腰が引けた黒服達の只中で
勢いよく煙が噴射される
『うわあぁぁぁぁぁ!?』
「今だ 突っ切れ!!」
の声を合図に彼らは混乱した敵陣を
蹴散らしながら 包囲網を突破した
「煙玉を持参しているとは…流石殿」
「いやスモークグレネードだからアレ
…って、似たようなモンか」
「つーかこっから先どうすんだよ!」
「ともかく一旦この場所を脱出して
俺の家で作戦を…伏せろ!!」
足を止めて伏せた七人の頭上を掠め
ミサイルが やや離れた地点で爆発した
「何アレ!?何かデカイカラスみたいなのが
ミサイル撃ってきたよ!!」
「!アレは大使館で見た謎の兵器では…」
「ああ、っくそ こんな時に!」
空を舞う黒い無人機の砲撃が再び放たれ
同時に彼らは弾かれたように走り出す
爆撃を避けつつ、時折手持ちの武器や
爆弾で相手を退けるも
兵器は速度を落とさず追撃を続ける
「うわあぁっ、来た!!」
正面切って突っ込んできた二機が
銀時とへ狙いを定めた瞬間
「はぁぁぁぁ!」
その場で飛び上がり、槍ごと縦に回転した
の斬撃が機体を両断し
即座に起こった爆発と共に破片が散る
バラバラと降り注ぐそれに構わず
いまだ宙を旋回する数機に向けて
槍の刃先と殺気とが突きつけられた
「二人へ手出しするなら、お主らを
真っ先に地獄の鬼と対面させてや」
言葉半ばで頭上に大き目の残骸が直撃した
無論それが彼女の言葉と意識を奪うに
十分過ぎる威力を持っていたのは言うまでも無い
「「真っ先にお前が地獄行ってるぅぅ!」」
「っだぁぁぁ!オメェただでさえ死神に
好かれてんだから気をつけろっての!!」
音もなく近づいていた死神を全員で
追い払い、応急処置を行おうとした所
残った無人機がまとめて彼らへ接近する
「カーカーカーカーうるさいアルぅぅぅ
空気読めカラスもどきぃぃぃぃ!!」
イラっと来たらしい神楽が手近な残骸を
引っつかみ、物凄い速度で連投し
直撃した何機かがバランスを失い
他の兵器を全て巻き込んで墜落した
「欠片であっさり落としたぁぁぁ!
さんの立場丸々潰したよこの子!?」
「でかした神楽、この隙にさっさとズラかんぞ」
「「切り替え早っ!」」
こうしてどうにか本部を脱出し
かぶき町へと戻った銀時達は
明らかな違和感を感じて、立ち止まる
「何か変です…街が、静か過ぎません?」
「ああ、街をうろついていたはずの
黒服どもの姿も無くなってる」
「銀ちゃーん 何かあちこち酒臭いネ」
「ビールかドンペリのぶっかけ祭でも
おっぱじめたってのか?コリャ」
むせ返るような酒のニオイに鼻をつまみつ
眉根を寄せる七人へ
答えるように、無線が鳴り響いた
「どうした?」
『大変よ!
サニーちゃんが戻ってこないの!!』
「な…なんだって!?」
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あとがき(というか楽屋裏)
狐狗狸:ジーンさんの長台詞が今後の課題です
が、銀魂なんで何とかなるかなーと
新八:ならねぇよ!今回で年内最後の
更新だってのに相変わらずやりたい放題か!
神楽:うるせーよ新八、アレはんトコの
ハゲが全部悪いんだよ
銀時:そーそー 中の人既にいるのに
なんで掛け持ちさせんだってハナシだよな?
新八:禁句ぅぅ!そこ禁句ぅぅぅ!!
長谷川:てかオレらいつ戻れるの?
桂:よもやこの姿で年越しではあるまいな
…ってあれ?管理人はどこだ?
狐狗狸:(このステルス超便利…/inダンボール)
サニーの銃の出番&この後の展開は
年明けた本チャンに持ち越します!(謝)
様 読んでいただきありがとうございました!