「よかったみんな無事で…」
サニーは順繰りに銀時達の顔を見回して
ピタ、とへ視線を止めた
「サニー殿…会うのは初めてだな、私は」
「知ってるわ、神楽から聞いたから」
まじまじと彼女を見つめ サニーは続ける
「あなたが…ピーマン妹さんよね?
本当に無表情なのね 人形みたい」
「どーいう教え方したの神楽ちゃん!?
いやサニーちゃんこの人は」
「不本意ながら当たらずとも遠からず」
「誤解解こうとしてるんだから
空気読めぇぇぇ!」
「んな事どーでもいいネ!それよりサニー
こんなトコまで何しに来たアル!」
神楽の叫びをきっかけに、彼らは
ハッと我に帰る
「そうだ!それに何故俺達に
発信機なんかつけていたんだ!!」
「つーか手際よすぎだろジジィ!
きっちり説明しろやぁ!!」
「今から答えっからぎゃーぎゃー喚くなよ」
言うと、源外はニッと歯を見せるように笑った
第八訓 部屋が静かだと時々
耳キーンてなるよね
「なーに 、お前ぇさんの仲間から
ちぃと頼まれごとを引き受けたまでだ」
「俺の仲間から…誰からだ?」
「そいつぁ名乗らなかったがな
お前さんの味方っつってたぜ…なぁたま!」
倒れたままの黒服を縄で縛りながら
呼びかけに答え、卵は頷く
「ハイ、その方はお二人が狙われている事と
この場所の詳細 それといざと言う時の
手助けをこちらに頼まれました」
「…手助けは嬉しいんだけどさ、こんな
カワイイ女の子が薬のロックなんて解けるの?」
「おーおー、ずいぶんナメられたもんだな
サニーよ いっちょ腕前見せてやれ!」
コクリと小さく頷き、サニーは
モニターの前へと立つ
「このデータを調べればいいんだね?」
「ああ…頼むぞ」
の一言にもう一度首を振り
キーボードへ乗せたサニーの手が
信じられない速さで滑り出していく
そして数分も立たずに、モニターに
別の画面が表示された
「出たよ!これが薬のデータだよね!!」
「うそぉぉぉ!こんな小さな子があっさり
データ引き出しちゃったよ!!」
「サニーには高いエンジニア能力があるんだ
この程度のハッキングはお手の物さ」
「すっげーカッケェアル!」
「よくは分からぬが、すごいなサニー殿!」
「うむ、小さいながら大した子供だ」
賞賛の声を受け サニーは少し頬を赤らめる
「薬のデータはたまさんに預かってもらって
後で向こうに送れば、中身を解析して
解毒剤を作ってもらえると思う」
「よかったですね銀さん!これで皆
大人に戻れますよ!!」
「っしゃー!そうと決まりゃこんなトコ
とっととおさらばしようぜ!!」
「いや銀さん まだ奴の目的が分からない以上
ぬか喜びは出来ないって…聞けよオィ!」
元の姿を取り戻せる希望を見出し
浮かれる彼らへ水を差したのは
「おぃサニーよ、薬作った奴の名前ぇ
…"烏魔 梗子"って書かれてねぇか?」
源外のこの一言だった
「…うん 書いてある」
「ジジィ、テメェなんでんな事を…」
「源外殿…それは誰なのだ?」
驚く七人を他所に 彼は淡々と口を開く
「流山が芙蓉プロジェクトを研究していた頃
一時期だけ加わっていた科学者でな…
女だてらにそこそこ名前の知られた奴だった」
「聞いた事がある 確か事故を引き起こし
夫を死なせ…自らも瀕死の重体を負ったと」
「それだけじゃねぇのさ」
小さく首を横に振り 小さな呟きが零れる
「奴さん 一命は取り留めたが…
変わりに孕んでたガキは流れたらしい」
「って事はその人、旦那さんだけじゃなく
子供まで事故で亡くして…」
「でもどうしてそんな人がこんな事に
関わってんだよ?」
「オレが知るかよ…事故の後、アイツが
首切られてから名前すら聞かなかったからよぉ」
一旦言葉を切り、源外がゴーグル越しに
彼へと視線を向ける
「お前さんの仲間が教えてくれるまではな」
「…なるほどな それならアンタが
ソイツを信じたのも頷ける」
やや置いてけぼり感を喰らい、やる気なさげに
頭を掻きつつ銀時は言う
「つー事は何だ?その女とんトコのバカが
手ぇ組んでやがんのか今回のコレは」
「味方だけでなく敵まで共演かよ
どんだけ黒い圧力が働いてるアルか」
「無いからそんな圧力は」
パタパタと手を振りつつ新八は弁護をする
「しかしジーンが後ろ盾についてるとしたら
かなり厄介だな…」
「殿 ジーンとは何者なのだ?」
「ああ、俺が江戸に来る前に起こった
ある事件の首謀者でな…」
彼は全員へ簡単に、その事件の内容を話した
「オレらと会う前にそんな事やってたんだ…
なんつーか、すご過ぎて現実感ないんだけど」
「普通ならそれが当たり前さ 長谷川さん」
「しかしおかしいではないか、お主の話では
そのジーンとやらは死んだのだろう?」
「ああ…死亡は確認したから間違いない」
「どーだか、大方三流作者だから 死んだのは
実は替え玉でしたってパターンじゃね?」
銀時のこの言葉を有り得ないと否定しかけるも
思い直して 彼はこう言う
「…可能性はあるかもしれない」
「あの、どっちに納得してます?」
「ジーンだかベンだか知らないけど
今更どんなバカが来てもへいちゃらネ!」
「いや、奴を侮ってはいけない
奴の声には特殊な力があって、聞いてる内に
次第にその言葉に洗脳されてしまうんだ」
「洗脳って…そんなムチャクチャな」
「しかも性質が悪いのは洗脳された側には
その自覚が無い事だ」
「とすると、この男達もジーンとやらに
洗脳されて従っているかもしれぬな」
桂の言葉に触発され、無表情のまま
は床に転がる機械を指差す
「先程のこの機械も もしやその者の
声か何かが発されていたのでは?」
「オィオィ、いきなり何言い出すのこの子は
あんなヘンな音が聞き取れてたのかよ?」
笑う銀時を筆頭に微妙な表情をする彼らへ
態度を変えず 彼女は頷いた
「ハッキリとではないが断片的には」
「「「…嘘ぉぉぉぉぉ!?」」」
ケーブルで薬のデータを移し始めつつ
機械を拾い 卵も賛同する
「詳しく中身を分析する必要はありますが
恐らく周波数を利用して その方の声による
特殊な音波を流すものだと思われます」
「マジでか…」
「周波数?何アルかそれ?」
首を傾げる神楽へ答えたのはサニー
「人の耳に聞こえる音には色んな周波があって
年と共に聞き取れる範囲が変わってくの
多分 この機械から流れてたのは十代の人が
聞き取れる音波なんじゃないかな?」
理路整然とした彼女の解説に全員が
感心の呻きをあちこちでもらす
「そっか、それで源外さんとたまさんは
大丈夫だったんですね…ってアレ?」
「サニーは何で平気だったんだ?」
聞かれて サニーはふふっと笑った
「それはね、このおジイさんのお陰なの」
「言ったろ?ヤボ用で遅れるとよ…
テメェら、こいつを持って行け!」
懐から取り出された耳栓らしきシロモノを
源外は 七人の手へと渡していく
「これは…普通の耳栓に見えるんだが」
「タダの耳栓じゃねぇ オレの発明した
特別製よ!こいつがありゃ奴さんの力も
洗脳音波もガラクタ同然だぜ!!」
「どういう仕掛けかしらねぇが、テメェも
たまにゃマシなもん作るじゃねぇか」
「一言余計だ銀の字ぃ!」
ペン!と頭を叩かれ、軽い小競り合いが
始まるのを横目で見ていたへ
「ジャック…これを!」
近寄ったサニーが、一つの銃を手渡した
「これは…お前のEZGUNじゃないか!
どうしてこれを俺に?」
「子供になったジャックじゃ殆ど武器を
扱えないって聞いたから…しばらく
それを貸してあげる」
「それじゃお前の護身用に渡した意味が」
「心配すんな!このガキはオレとたまが
しっかり守ってやるよ!!」
「無事ご自宅までお送りしますので
どうかご安心下さい」
サニーの両脇を固め、二人は笑いかけた
「大事なものだから、無くさないでね?」
ニコリと笑った彼女へ 彼は首を縦に振る
「ありがとう…必ず返しに戻ってくる
今度は元の姿でな」
「っし、じゃオレらは先に行ってるぜ!」
たまと源外はサニーを引きつれ、機械人形と
共に制御室を後にした
「さーてと オレらもとっとと出るとすっか」
「そうだな銀時 長居は無用だ
兄上のご様子も気になるしな」
「だからそれさんだけですってば」
呆れ混じりに階段を駆け下りる彼らの足は
「何を急いでいるのかね?折角来たのだから
もう少しゆっくりしていくがいい」
踊り場に現れた男によって 止められた
――――――――――――――――――――――
あとがき(というか楽屋裏)
狐狗狸:見所の一つ、サニーちゃんの活躍と
首謀者二人の名前がよーやく書けました〜!
神楽:誰アルか烏魔 梗子って?
狐狗狸:オリキャラです、詳細は追々
分かっていくのでここはノーコメで
銀時:つかどんだけ時間かかってんだよ
本誌じゃお天気合戦に決着ついてんだぞ?
桂:仕方なかろう銀時 今回はそれだけ
大仕掛けだということだ
銀時:どーだか、どーせワンパターンな
くだらねぇ展開持ってくんだろ三流だし
狐狗狸:…次の出番減らそっかなー
新八:さり気に圧力かけてるぅぅ!
てゆか、さんの仲間って誰!?
読みは"カラスマ キョウコ"です
言うまでもありませんが実在の人物とは
全くもって関係ありませんので!(謝)
様 読んでいただきありがとうございました!