リノリウムの床とコンクリートの壁が
無機質に続く 通路の先





ある棟へ続く扉の前に立つ黒服が
訝しげな顔つきで、彼らへと言った





お前達、本当にここの警備隊か?
ちょっと名前を言ってみろ」





問われて並んだ三人の黒服は答える





「しっ…志望でーす」


「トウブーンでーす」


「エー・ヌブンでーす」





中背中肉の マスクをつけたメガネと


妙に背の低い小太りの
赤い髪をした、ヒゲの黒服と


ひょろりとした背丈の割には顔が小さい
銀髪で咥えタバコの黒服
を見やり





「変な名前だな…まあいい、ちょっと
確認するからそこでま」


無線を出しつつ目を逸らした一瞬





顔面に吹きかけられた麻酔ガスにより
男の意識は断ち切られた







「おい、いつまでこの姿で動くつもりだよ
いー加減下に降りてぇんだけど」





見下ろす彼の言葉に答えたのは
隣にいる黒服の 膨れた腹の部分





「銀さんは顔出せるだけいいだろ
俺だって早いトコここから出たいわ」


「あらやだ、お腹のちゃん
もう言葉をしゃべれるようになったのネ」


「何その母性に目覚めた目?
妊婦気取りで腹さすんなイラつくんだよ」





などと小声で会話を交わしつつ、彼らは
曲がり角を慎重に進んで


「ちょっと待てぇぇぇぇぇ!!」


ぬぉっ!?どうしたのだ新八?」





メガネ…もとい新八があげた大声に
のっぽの黒服が足を止めれば


肩から上が不自然に揺れた











第十四訓 蛇足ではありますがお付き合いを











「何フツーに話スタートさせてんの!?
前回のくだりはなんだったんだよ!!」








…前回武器庫にやって来た黒服三人は





入った瞬間、待ち構えていた五人に
声を上げる間もなく瞬殺され





その後 銀時との提案により


気を失った彼らの服を借り
三人の黒服に成りすますことにしたようだ





ようだじゃねーよ!何モノローグで
ここまでの説明省いてんの!?」





ぶっちゃけこの辺で尺を詰めたいので
変装の様子はあとがきで語るのであっt


「それ単なる手抜きじゃねぇかぁぁぁ!!」


「声が大きいぞ新八君…にしても
提案したとはいえこの姿と偽名はちょっと」





いーじゃないですかギャグパートなんだし
こういう余分なお遊びがあっても





「余分じゃねーよ ちょっとムダなだけ」


「「どんだけ大会社敵に回す気だ!!」」





やかましいやり取りをしながらも


ちょくちょく敵を締め上げ、五人は徐々に
基地の奥深くへと進んでいった









殿、地下の区分が上よりも
大きすぎるようだが…?」





の緑眼が斜め下の少年を捉える







進むにつれ監視カメラなどの数が増え
警備が厳しくなり始めていたので





動きやすいよう彼らは変装を解いたようだ







「どうやらサイロ式の造りのようだ
今までの情報からすれば本命はこっちらしいな

…こんな所まで、あの時と同じか」


「たそがれんのは勝手だけどよぉ
広すぎだろ この穴倉!」


「もうとっとと町の奴ら助けて
あったかいお茶漬け食べたいアル…」





口の端から涎を垂らす神楽の意思に共鳴し


この世ならざる奇怪な音が辺りに満ちる





「お前の腹にはカエルのオーケストラでも
住み着いてるんですか?」


「食いモン無視しまくってたから
私のお腹今にも穴が開きそうアル」


「静かにしてろよ…カロリーメイトやるから」


ダース単位!?どっから出したのそれ!?」







小山サイズの栄養食を夢中で貪る彼女を尻目に
新八は急に 不安げな顔を見せる





「にしても、先に行った三人は
大丈夫なんでしょうか…」


「気にしなくていーだろ 悪運強いしアイツら」


「まぁ、少なくとも耳栓があるから
洗脳されることはなさそうだがな…」







呟き 見上げた先には特有の音波を流すための
音響機械が隅にひっそりと張り付いていた







「それにしても兄上達はどこにいるのだろう」


「…さらわれた町民の人数から考えるに
この先の区画のいずれかに監禁されているはず」





入手した図面を指していた彼の無線が
けたたましいコール音を響かせる





「こちら、どうした?」







鳴り出した無線から発せられたのは


聞き覚えのない、平坦な声音だった





『…聞こえるかジャック』


「誰だお前…お前が、情報提供者か?


『そうだ』


「一体何者なんですか?」


『まだ素性を明かせないが、現在
そちらに向かっている…いずれ分かる』


「ああそう、それでそちらさんの目的は?
まさか町の連中救助じゃあるめぇ」





突き放すような銀時に 一拍置いて相手は答えた





『依頼元は明かせないが、メタルギアらしき
兵器がこの島で開発されている情報を入手し
極秘の捜査を行っていた』


「それでジーンや烏魔にたどり着いた、と」


『…完成間近のメタルギア破壊を任命されていた
が、奴に邪魔され間に合わなかった』


「そんな…じゃあ僕ら またあんな奴と
戦わなきゃいけないんですか!?」







悲鳴染みた声音へ、情報提供者は
更に絶望的な言葉を口にする







『いや、RAYなどとはレベルが違う


メタルギア・ガンター…レールガンを2本を
装備した全長10mのメタルギア』


「んだそりゃ?お○場ガンダムに
対抗でもしようってのか?」


「今更過ぎるだろ…しかしそんな巨大な
メタルギアなんて何に…?」


『もしや奴はあの一「こら待たぬか神楽!」
…とにかく、また後で落ち合おう』





会話の肝心な部分が遮られたまま無線が切れる







「ちょっ空気読めよ…って
神ぁぁぁ楽ぁぁぁぁぁ!何してんの!?





無残に転がる残骸を越え、ラーメンの袋を
両手に握り締めた神楽が


目指すルートから脇に逸れた階段を下りていく





「こんな粉っぽいモンじゃ
アタイの腹は満たされないネ」


「いつの間にパクった!?
その即席ラーメンは返しなさいぃぃぃ!!」



そっち!?てか神楽ちゃんここ一応
敵地なんだから行動くらい自重して!!」







慌てて引き止める四人と腹ペコ神楽の攻防は





二階下の奥まった一室の前でようやく決着した







「年頃の女の子が飢え死にしてもいいアルか
この人でなしどもが…」


「年頃ならダイエットでもしてろバカ娘が」


「ったく遊びに来たんじゃないんだぞ
さっきの所まで急いで戻ろう」







言って彼らが動き出した直後





「貴様ら、江戸をどうする気だ!」





部屋の中から 少年特有の甲高い叫びが轟く







あら?もっと嬉しそうな顔しなさいよ
あと少しで自分の会社に戻れるんだから」







次に響いた女の声に、五人は顔を見合わせる





「この声…あの時の?


「どーやら、便所で騒いでくれた
あのオネーちゃんらしーな」







扉を薄く開いて覗き込めば、スピーカが無い
その室内にいるのは二人の人間





中央の家畜ゲージに押し込められた少年
きつい目つきで 白衣の女を睨んでいる







「この小娘が…ワシを誰だと思っとる!
ワシの一声で貴様ら皆、社会的に葬るなど」


「へーぇ、その姿で出来るならやれば?
大手電気会社の社長さん?





扉に背を向けてはいるが、嘲るような言葉と
悔しげな彼の呻きが 彼女の表情を悟らせる





「いつ仕込んだか知らんが、酒におかしな
薬など混ぜおって…!」


「飲んだのは自業自得なんでしょ?
聞いてるわよ 度が過ぎる大酒のみだって
…もっとも隠し事はまだあるみたいだけど」


「デタラメだ!
あの女に何を吹き込まれたか知らんが」



「烏魔主任を悪く言わないでちょうだい!
薄汚い権力者の分際で!!」






手荒にケージを蹴られ、反射的に
少年は身を竦めた







「貴様らが奴らと組む理由は何だ」


「…主任とあの方はこの世界を、子供だけ
平和な素晴らしい場所に変えると約束したわ


怒りと失望の只中にいた私達に
存在意義と居場所を与えてくれたの」





語る言葉はどこか夢見るような
頼りなさが滲み出ている







彼は顔を嫌悪に歪めて吐き捨てた





「イカレておる…貴様らは皆
あの狂人どもに踊らされているだけだ!」


「お黙り!!」





再び激昂した彼女がポケットから取り出した
リモコンを操作した瞬間


痛々しい悲鳴と鋭い雷撃のような音が
部屋を一瞬満たす






「痛いでしょう…それはあなたが殺した
息子の分だと思いなさい?」







痙攣しながら床から辛うじて顔を上げ


彼は、弱々しく呟いた





「違…あれはワシじゃ…」


「あら、ようやくもう一人のコト
白状する気になったのかしら?」


「そんな奴…知らぬ、あの時車にはワシしか」


「この期に及んでまだシラを切る気?
だったらもう一度身体に叩き込んであげる







震える身体を見下ろし、指先が
キーの真上にくるのと同時に





銀時が 女の内膝を膝頭で突き折った







思わずバランスを崩し、取り落とした
リモコンが床を滑り


の足に踏み潰されて止まる





「よぉ、また会ったなオネーちゃん
子供店長とデートかぃ?」



「どうせならその件 もう少し詳しく
語ってもらえないか?生憎情報不足でね」








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:前回引いておいた展開をあっさり
ブレイクしつつ、ソロソロ伏線回収をばと


銀時:ひざかっくんって前回と変わんねぇぇ!


新八:それよか長編でメタは無しだろ!?


狐狗狸:これからシリアスになるから雰囲気を
和らげたかったのです…スイマセン


神楽:謝ってモグモグ済んだらガリガリ
警察んごっくいらねーヨ


新八:一体何食べてるの!?それどっから
持ってきたの神楽ちゃん!!


狐狗狸:いぎゃあぁぁ!私の柿の種ぇぇぇ!!


銀時:アレがかぁ!?募金箱じゃなく!?
おま、どんだけオカキ食う気だぁぁぁ!!




ちなみに変装は…メガネ→新八+マスク
デブ→神楽+(胴体)+付けヒゲ
ノッポ→銀時+(胴体)+タバコ型麻酔銃です


"彼の罪"と恐るべき計画の一端が今、明かされる


様 読んでいただきありがとうございました!