一日半が経過し、七人は到着した
ヴィナスと共に町民達の奪還のため


港に停泊させた専用艇に乗り込んだ







「話には聞いていたけれど…本当に
子供になったのねジャック」





普段は割合無表情で通している彼女の
興味の視線を全身に浴び


簡易テーブルに設えた子供用の椅子に
ついていた彼は、居心地悪げに眉を寄せる





「物珍しそうにジロジロ見るな
それで、奴等の本拠地はどこにある?」


「どうやったのか…江戸が管轄している
諸島郡の一つに中規模の基地を作ったみたい」





近くの機械を操り 出現させたモニターに


江戸からある島へ伸びる赤いルート
現在地らしき丸が表示される





秘密裏に作られた基地か…
規模が違えど、あの時の作戦と同じだな」


「あの時って…ジーンって奴の計画を
止めた時のコトだよねぇ?やっぱ」







誰ともなく不安げに言う長谷川に





答えを返したのは ヴィナス





「サンヒエロニモ半島ね…懐かしい話」


「ヴィナスさんも、さんと一緒に
作戦に参加してたんですか?」


「昔の話よ 坊や」





軽く顔を向け 艶やかな笑みで
彼女が意味深に返した途端





モテる男は辛いアルな〜アイツが
いるのにこの女ともしっぽりいったか?」


「向こうでビッグ・ボスとか呼ばれて
アソコもビッグです〜ってか?でも今は
毛も生えてないリトルサイズに逆戻りだよな」





隣に座る銀時と側に寄った神楽が
以心伝心のスピードではやし立て始めた











第十二訓 牛乳を飲む時は気をつけろ











アンタだってそうだろ!
つーか元の姿でもアンタのよりゃデカイわ!」


「いやデカけりゃいいってモンでも無いぜ?
モノが立派でもテクが疎かじゃ話になんないし」


「長谷川さんに言う程のテクがあるのか?
俺はサイズには自信があるね、少なくとも」


下らんな、大きさや技巧に拘った所で
愛がなければそんなモノは役に立たんぞ!」







話題を軌道修正しようと新八が口を挟む





「女性が三人もいるんですから 猥談は
自重してくださいよ!」



「うるせーよ、童貞(ガキ)は黙ってろ」


その当て字やめろぉぉぉぉぉ!
今はあんた等のがガキだろーが!!」





…が、銀時の一言により逆に火に油を
注ぐ結果で終わってしまう







「どーせ元に戻ろうが戻るまいが
お前らの粗末な棒は役立たずネ」


あん?オレのマグナムなめんなコラァ!
だって大きい方がいいよなー?」


「よりによって聞く相手がアレ!?





それまで成り行きを見守っていた彼女は
名指しされ、四人を無表情に見回し


あっさりとこう言い放った







「…お主らより兄上の方が大きかったぞ」







まさかの爆弾発言は男達を沈黙させるのに
絶大な威力を誇った





「男ってみんなバカアルな」


「アナタお人形みたいな顔して
そっちの話もイケるクチなのね?」


「どういう意味だ?私は今の背の丈を
差しただけなのだが…」





首を傾げながらのその言葉も


富士山から戻った元F1レーサーと
同じような状態の五人の耳には届いてない







「とにかく目的地に着くまで時間があるから
少し潜入計画を立てましょう…それと」


一旦言葉を切り、一抱えほどの小さな
保冷ケースを取り出すと





「パラメディックから預かった四人分の
解毒剤も今の内に渡すから 飲んでおいて





ヴィナスはテーブルの上にそれを置いた





「薬の効果は実証されているのか?」


「利発そうに見えるけどバカでしょアナタ
人数分の薬を作るだけで手一杯よ」


「ずいぶん無責任だなオィ、もし飲んでも
効き目なかったらどーすんだよネーちゃん」


「まぁ万が一薬が効かなかったら
もう一度子供からやり直せばいいじゃない」


それ何のフォローにもなってないし!
美人なのに性格ドキツくない!?」





不満タラタラな三人を横目に新八が
保冷ケースを目で差し 訊ねる





「…あの、疑うわけじゃないんですけど
大丈夫なんですか?その薬」


「腕前に関しては保障出来るんだが
何分 状況が状況だからな…」


「飲まないのは勝手だけど、効果が発揮されるのに
時間かかるらしいから早めに摂取した方がいいわよ?」


「そうなのかヴィナス殿?」


「ええ、元の薬の効力を無力化する抗体が
体内で出来るまで数時間ほど必要
と聞いてるわ」


「…仕方ない ここは薬の効果と
の仲間の腕に期待するしかあるまい」





ため息をついて手を伸ばした桂に続き







「ったく何でオレがこんな目に…」





意を決した三人が保冷ケースの封を開け
中に納まる人数分の薬ビンを手に取って





早速口に…運ばず 中身の液体を
じっくりと確かめている





「この解毒薬、色匂い共に牛乳に見えるが」


「成分の安定と副作用とかの関係で、牛乳と一緒に
摂取しないと作用しないから混合したみたいよ」


「…何で混ぜるの?何で牛乳がとろっとしてるの?」


「そんなの知らないわよ 後で
パラメディックに聞いてちょうだい」





ビンを傾けるごとにドロリとクリーム状に
流れ込む液体は、余計に不信感を煽る





「これ牛乳ってゆうか期限切れて
腐った牛乳のトロみかただよね?」


「色も白いし、何かヤバイものを
ほうふつとさせるんだけど…」


長谷川さん!それ以上は言うなっ
確実に飲みづらくなるから!!」


「いいからさっさと飲めヨじれったい」


「リーダーの言う通りだ、牛乳に多少
トロみがつこうが飲む事に支障などない」


「そ、それもそうだよな?」







二人が飲むことを決意したと同時に
神楽と銀時がアイコンタクトを取った





「ちっとこれ落とさず持ってろよ」


「む?なんだ厠か?」





解毒薬のビンを受け取った
側に立たせたまま 彼は言う





「おいお前ら ちょっと見てみ?」


「「ん?」」





一口目を含んでいた桂と長谷川が
呼ばれて、スイっと顔を上げると







待ち受けていたのは超絶に変な顔×2





「「ぶっぶぉぉぉ!!」」







耐え切れず二人は同時に口に含んでいた
牛乳を吹きだしてしまった


が、銀時と神楽 ついでに嫌な予感が
していたは急いで退避したため





もろに牛乳の飛沫を浴びたのはだけ







今ので両者の持っていた薬ビンは落ち
中身は、瞬く間に零れてしまったようだ







器官に入ったらしくもがき苦しむ桂を他所に


鼻から牛乳垂らしつつ長谷川が叫ぶ





「ちょ二人とも!何してくれてんだァァ!!」


「いやーだって牛乳飲んでる奴がいたら
とりあえず笑かすのは基本じゃね?」


鼻から牛乳〜はガチアル!」


「「小学生かアンタらは!?」」





と新八の寸分狂わぬツッコミが飛んだ





「飲むのを止めてて正解だったぜ
ったく何をするかと思えば下らない…」


貴様らぁっごふっ、お陰で薬が
ほとんど零れごふげふごはっ!」


「ちょ桂さん!ビンなら拾いますから
無茶しないで」





咽たまま普段の調子で身体を曲げたので


勢いあまって椅子から落下した桂は
床に頭をぶつけ 声もなく痙攣する





「ってホラァァァァ!!」


「…桂殿にマダオ殿、ヒドいではないか」


「あぁゴメンゴメンちゃ」


言いかけた長谷川の言葉が止まる





事故とはいえ吹きかけられたモノが牛乳


しかも解毒薬を混合しているせいで
妙にとろみのついたシロモノ


更に言うなら先程まで 擬似的な液体
連想していた事もあり





整った顔や黒い髪に散ったそれらは
最早、アレにしか見えなくなって





「ががががが顔し…ぶぉぉぉっ!!





大量の鼻血を吹き出し、鼻と股間を押さえ
長谷川はテーブルに突っ伏す







「新八、何故マダオ殿は私を見るなり
鼻血を出して倒れてしまったのだ?」


「いいいいやあのっ、とにかくこれで
顔吹いて!てかこっち見ないで…!」





牛乳まみれの彼女を直視できず


新八が耳まで赤くしてハンカチを差し出すも
お子様二人が受け取る手を阻止する





拭かねぇ方がいいぞ〜これ新八君
後で拭き取ったハンカチをオカズに…」


「マジきしょいね 寄るなケダモノ」


「オメェらの発想のがキモいわぁぁぁ!!」





そのまま乱打の応酬にもつれ込む三人を
ボンヤリ眺め、は首を捻るばかり





「…布はいつから食せるようになったのだ?」


「頼むから知らないままでいてくれ!」





もそちらを直視出来ぬまま
やや乱暴にポケットティッシュを差し出した







「で、そこの二人は飲まないのかしら?
出来れば早く作戦会議に移りたいんだけど」


「オレぁ練乳モドキよりアンタの乳が飲み
…スンマッセン調子こきました
飲みますから無言で銃口向けんの止めて」







二人が胃もたれしそうな解毒剤を飲み干し





今度こそ真面目に作戦会議が始まった





「内部は幾つかの施設に分かれているけど
半分は研究棟や武器庫・食料庫のあるブロック


残りの半分は管理が厳重でまだ実態が
掴めてない…現在調査中ってトコね」





上空から撮影された島の表面には


山や岩肌、木に溶け込むように偽装された
基地らしき建物が垣間見え…





「あの…この基地、大きくないですか?」


「メガネ変えた方がいいわよ坊や
こんなの、あの時の作戦の半分もないわ」


知りませんよそっちの過去話は!
てか明らかに島の半分以上が…」


「落ち着けよ新八 島が小っさ過ぎて
基地がはみ出してるだけだろ」





モニターを睨み、彼は眉間にシワを寄せる





「参ったな…これは迂闊に上陸したら
すぐ発見されて おしまいだな」


「心配無用よジャック、潜入口として
警備が薄い二箇所が判明してるわ」







彼女が示したのは、あからさまに
何か飛び出しそうな仕掛けが見える断崖と





海に直結しているやや大きめの用水路







「個人的には死角も多い断崖からの進行を
『用水路ぉぉぉ!』





間髪入れず唱和した五人の強い要望により
潜入ルートは用水路からに決定した








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あとがき(というか楽屋裏)


銀時:ぶっちゃけよぉ、この解毒薬の下りいるか?


神楽:これあからさまに無理矢理ネタぶち込んでる
話数稼ぎの話アルな


新八:何とんでもねー事語ってんのアンタらぁぁ!
てゆか管理人さんどこいったんですか!?


桂:管理人ならば長谷川さんと一緒に
ヴィナス殿にスリッパで叩かれておったぞ


新八:G扱い!?ここでも無理くり
今週のWJネタぶち込んで描写放棄かぁぁぁ!!


ヴィナス:いいのよ 後で扱き使って辻褄合わせれば


新八:黒っ!




…スイマセン、今度こそ本拠地へ侵入開始です


様 読んでいただきありがとうございました!