なんのこっちゃ、と言いたげな
七人を無視しパラメディックは続ける
『あなた達が飲んだのは遅効性の長期薬
で、町で散布されたのは即効性の高い方
…そう考えた方が辻褄合うでしょ』
「効果時間の違いという奴か」
「んなもんどっちでもいーんだよ
とっとと薬もらって元に戻りてーのオレは」
苛立ったように頭を掻く銀時を
見やり、彼女は画面越しに笑った
『あらそう?その姿結構かわいいわよ
少なくともダメな普段よりずっといいわ』
「どういう意味だこのアマぁぁぁ!
お前がどんだけ普段のオレを知ってんだぁ!」
「落ち着いてください銀さん!
普段ダメなのは事実でしょ!!」
「んなことねーもん!銀さんこれでも
黙ってたらイケメンだもん!!」
「全く説得力無いアルな むしろ池面ね」
仲間内での言葉によるフルボッコで
ちょっぴり涙目になった銀時を無視し
横からが訪ねる
「烏魔 梗子については何かわかったのか?」
『ええ、元科学者としての経歴は
結構高かったみたいよ この人』
言葉と共に映し出されたのは、一枚の写真
証明写真と思しきそれには
一人の女が 無表情に写されている
肩につくよりは短めに切られた
茶混じりのすっとした黒髪
やや面白の顔立ちは美人といっても
申し分ない造詣ではあるが
釣り上がり気味な目尻と眉のせいか
どこか取っ付き難そうな印象を与えている
第十一訓 この作品は実在の(略)
『生態学や人体解剖学を得意としていて
芙蓉プロジェクトも、その知識を買われて
加わっていたみたいね』
烏魔の功績らしきデータが二三枚
スライドされた後に
新聞のスクラップのような絵が割り込む
『ただ、機械家政婦事件が起こる一年前に
起こした交通事故が元で入院
…そのすぐ後に資格も剥奪されてるわ』
「事故の原因はなんだったんですか?」
『衝突事故ね 被害者は軽症だったそうよ
ただ烏魔さんの方は…』
「…夫と子を、亡くしたのだな」
事故の悲惨さは大きな見出しに写された
原形を留めぬ車にそのまま現れていた
いたたまれず被害者の顔写真へと
視線を移した長谷川が 声を上げた
「あれ?このオッサン、こないだTVで
蒸発したって騒がれてた社長じゃね?」
釣られて他の面々もそちらへ目を向ける
「…本当だ!この人、あの大手
電機店メーカーの社長さんですよ!!」
「毎年のように阪 神のセールやってる
店員が無愛想なアソコアルな!」
「あーあのマッサージチェアの試乗
頼むと嫌そーな顔するアソコか」
「そんなだからあの会社、経営が
急降下して落ち目になってんだよなー」
「「ちょ、作者の私怨混じってね!?
訴えられるから即刻取り消して!!」」
良心的なWツッコミで話の脱線を阻止し
「そういやTVでもニュースが
流れてたな…不注意運転だっけか?」
話題を戻した彼へパラメディックが答えた
『裁判では完全に彼女の過失と立証されて
それが解雇の引き金になってる』
「そんな!事故で夫と子を失って
いるというのに、何と惨い…!!」
僅かに顔を歪め 呟くに頷き
『…とにかく 経歴に傷がつき
学会を追放された彼女は退院後
それきり行方をくらましたそうよ』
言葉を途切らぬまま、彼女はモニターに
ある写真を表示した
『これが失踪する直前に撮られた
最後の一枚よ』
そこにいたのは、初めの写真とは
別人のような女性だった
俯いた顔は血の気が失せた様に青白く
憔悴しきった目は、手で添えた
自らの腹へと注がれている
「悲運な未亡人だ…ぜひとも会って
夫と子を失った悲しみを癒してやりたい」
「おまっ、人妻だったら何でもありかよ
こんなキッツイ胸なし女のどこがいいんだか」
「まー趣味は人それぞれっつーけど
ヅラッちも物好きだねぇ」
「貧乳好き加減はと同レベ、ルグレッ」
銀時の末端の語尾がおかしくなったのは
名指した当人によるCQC式
チョークスリーパーのせいである
「どういう意味だ?」
「ちょタンマタンマ!首キマるって!
マジでこのまま落ちちゃうぅぅぅ!!」
「妙なことを言うな銀時は、どこから
落ちるというのだ?」
どんどん青紫色になる彼の顔色を眺めつつ
無表情に問う彼女を唖然と見つめてから
パラメディックは近くにいた
二人へ問いかける
『…ねぇ、話には聞いていたけど
あのって子はいつもああなの?』
「今頃気づいたアルか?」
「素でやってるから、ある意味
性質が悪いんですよ」
会話を交わしている合間に、銀時の
限界が近づいていた
「見える…三途の川から青白くて
目と口が黒い人が迎えに来てるぅぅ…」
「ぬ?そんな迎えはおらぬはずだが」
「いやいやいや、そこは止めるべきだろ!
本気で銀さんやばいからね!?」
状況を見かね、ため息をついた桂が
の肩を軽く叩いた
「それだけやれば反省しているはずだ
放しておやりなさい 助さん」
「何で水○黄門?まあいいけど」
本格的に危なかった銀時を開放し
何食わぬ顔で彼は本題へと戻る
「しかし、烏魔は何故ジーンと結託を…
そもそも倒したハズの奴が何故生きていた…?」
『実は別の任務で動いている情報提供者が
教えてくれたんだけれど…』
やや表情を暗くして、言いづらそうに
次の言葉は紡がれた
『あの時倒したジーンは、クローン体
だった可能性があるらしいの』
驚きながらも その返答は
どこか心の中で予想していたものだった
「本当に…銀さんが言った通りに
なっちまったみたいだな」
「だから言っ…げほ、てーか
今のは本気で苦しかったぞゴラァ!」
喉を押さえて息を整えた銀時の右手が
凄まじい速さで彼の股間を握り締めた
当然 襲い来る激痛に苦悶の表情を浮かべ
相手はそこを両手で押さえて身体を
くの字に折り曲げる
「うぎゃあ!どこ掴んでんだぁぁぁ!!」
「るせぇ!さっきのお返しじゃぁぁ!!」
流れで乱闘に発展し、慌てて三人が仲裁に入る
「身も心も子供に戻ってどーすんですか!」
「ちょっと、一旦落ち着けって二人とも!」
「事は一刻を争うのだぞ!早くこのドッキリを
終わらせなければ大変なことに」
「「お前いい加減ドッキリ離れしろや!」」
が 収まる所か余計に被害が拡大して
ガキ大将のケンカへと悪化する
『何やってんのよあなた達!?』
「やめるネバカども!サニーが起きたら」
「黙らぬか愚か者どもが!!」
騒ぎを収めた一声は、確実に怒りに満ちていた
「こうして無駄な時間を過ごす間よりも
皆を助け出す方が重要ではないのか!!」
『ご、ごめんなさい』
の迫力と正論に 男どもは
思わず素直に頭を下げた
「全く…まさか年下に教えられるとは
思わなんだな なぁ銀時よ」
「ったく、こういう時だきゃ
しっかりしてんだよなーコイツ」
棒立ちになったMk.Uへ 彼は
気を取り直して質問をよこす
「パラメディック、奴らの本拠地について
何か情報は掴めているか?」
『…情報提供者のお陰で判明してるわ
場所はヴィナスに伝えてあるから
彼女と一緒に行動してちょうだい』
画面に映る彼女の真顔に影が宿る
『あのジーンが絡んでいる以上、何か
恐ろしい計画が潜んでいるかも…気をつけて』
「了解した ありがとう」
しかしの笑みが、不安を拭った
「ヴィナスさんはどれ位でここへ
着きそうですか?」
『専用艇の用意もあるけど、早くて一日
遅ければ三日って所ね』
「そんな悠長な!待つ合間に兄上の身に
何か起こってしまったら私は…!」
「落ち着け、あのピーマン兄貴が
そんな簡単にくたばるタマかよ?」
「そうさ…きっとあの人や街の人達も
無事でいるはずだ だから皆は」
言葉の先を 銀時の手が押し留めた
「おっと、テメェ一人にいいカッコは
させねぇぜ?」
「置いてこうったってそうはいかないネ!」
「子供にされた借りを返さなきゃいけねぇし」
「こんな悪質なドッキリは、即刻
終わらせて文句を言ってやらねばな」
「だからドッキリじゃないんですって…」
頼もしいわね、とパラメディックが呟く
『この人達強いんでしょ?連れて行くのも
いいんじゃない?ジャック』
「気軽に言うなよ!普段ならまだしも
今は俺も含めて子供だけなんだぞ!!」
「案ずるな お主らが元に戻るまで
私が皆を護ってみせる!」
駄目押しの一言が利いたのか
説得は無駄と悟り、彼は六人へと告げる
「分かった、連れて行くよ」
そして側にいたへ小声でささやいた
「…吉原炎上篇とは立場が
逆になっちまったが、頼りにしてるぜ」
「うぬ!」
――――――――――――――――――――――
あとがき(というか楽屋裏)
狐狗狸:こっから先がやっと本チャンに
入りそうです あーよかったよか
パラメディック:よくないわよ!せっかくの
私の出番、ここだけってどーいうこと!?
新八:って何でここにいるんですかアンタ!?
銀時:そーだそーだ、ここは共演スペースに
指定した覚えはねーぞ 許可取れ許可
パラメディック:うるさいわね 元々この長編
ジャックと共演なんだしガタガタ言わないの
狐狗狸:そういう問題違うし…
ここから、敵の本拠地へレッツゴー!!
様 読んでいただきありがとうございました!