欺瞞と偽りによって黒く醜く
染まった羽を 鴉は嘆いた







怒りのままに梟を追い回していた鴉は





いつしか不吉をまとい 見当違いの
相手へ害なすようになってしまった







鴉は己が羽で全てを染めんと企む







二度と取り戻せぬ 白く美しい羽に
焦がれている事に気付かずに…












第一訓 姿が変わっても中身は結局一緒











スズメの声が響き渡る気持ちのいい朝





「おはよーございまーす…ってアレ?
銀さーん、いないんですか?





いつも通りに出勤してきた新八は、辺りを
見回しながら家主の姿を探す







そこに寝室から寝巻き姿の神楽が現れる





「おはようアル新八」


「おはよう神楽ちゃん、銀さんは?」





問いかけに、彼女は眠い目をこすりながら呟く





「何か昨日 と飲みに行くっつってたネ
まだ帰ってないアルかあの天パ」


「みたいだね…全く
今頃どこほっつき歩いてんだか」





ため息混じりに新八がソファに座った時







「ウソだろぉぉォォォォ…!」







妙に甲高い声が、厠から響き渡った







「何だ、トイレにいたアルか」


「みたいだね 全く昨日どんだけ飲んだんだか」


「オーイ銀ちゃん、私もトイレ行きたいネ
さっさとウ○コすませて出ろよ」


ちょっと神楽ちゃん!
女の子としてその発言はどーなの!?」


「うるっせぇよ!今それ所じゃねえの!!」





ドアの向こうから返った返事に新八が眉を潜める





アレ?何か銀さん、声が変じゃない?」


「そんなの知るかヨ 早く出てくれないと
私この場でもれるネ、もうギリギリアル」


「頼むからもらさないでね ただでさえサーバーの
規約にケンカ売ってんだからこのジャンル」









ザバーと勢いのいい水音が流れ





「カンベンしてくれよ…これ小さくなってる
だけじゃなく毛もねぇし ツルッツルだし」





落胆した言葉が開いたドアから聞こえ


厠から出てきたのは…







天然パーマの銀髪に死んだ魚のような目で
気だるそうな顔をした小さな子供








「え…あれ?誰君?


「お前どこから入って来たアルか!
何だか銀ちゃんに似てるアルな」


「てーか顔だけでなく服まで一緒だし!
まさか今度こそ隠し子とかじゃ…!?」





戸惑う二人に、子供は呆れたように言う





「アホかお前ら ここにいるんだから
オレが銀さんに決まってんだろーが」







よく晴れた 朝の爽やかな気配は





「「ウソぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」」





二人の上げた悲鳴に掻き消された











「目が覚めたら子供になってた、ねぇ…」





煙管を吹かしながら 物憂げに銀時を見るお登勢







あの後、色々と騒いで喧しかったのか
下にいたお登勢が怒鳴り込んできて


そのまま騒ぎがより大きくなり


とりあえず子供をつれて、下のスナックで
色々と話を聞く事となったのだが





あくまで子供が"銀時本人だ"と主張をし





埒が明かず最終手段として 卵に
DNA照合をしてもらい







結果…信じられない事に、本人だと
認められたのであった









「つーか源外のジジイ、また妙なシカケ
たまにくっつけてやがったのか…
まぁお陰で助かったけどよ」


「ありがとうございます」





卵はペコリと頭を下げ 拍子にごろり
首が落ちて転がった





ちょっとたまさんんん!
首に気をつけてくださいよ!」


「申し訳ありません」





言いながら、卵は床に落ちた首を拾い上げる







「にしても 一体何があって
子供に戻っちまったってのさ?」


「だからぁ、昨日と飲んで戻ってきて
うっかり便所で寝ちまって…気が付いたら
ガキの姿になってたんだってマジで」





椅子に座りながらイチゴ牛乳をすする銀時へ
タバコを咥えつつキャサリンが言う





「オ前ラ、ナンカソッチ系ノヤバイ仕事トカ
手ェ出シタンジャネーノ?」


「テメェと一緒にすんな猫耳ババア」


ンダトコラァ?ケンカ売ッテンノカ!」





二人は、カウンター越しに火花を散らしあう







「バカ二人は放っておいて…本当に昨日まで
銀時に変化は無かったんだね?」


「そうアル、昨日までは
いつものサイズの銀ちゃんだったよ」


「僕らが昨日やってた仕事も、別に
変なクスリ飲んだりとかじゃなかったですしね」


「…ったく、何がどうなってんだか」







銀時の言葉の余韻を追うように
小さめの足音が外から近づいて来て…







「オイ、これどーいう事なんだ銀さん!」





甲高い怒鳴り声と共にスナックへ入ったのは


妙なスーツに身を包んだ、金に近い銀髪の子供





すかさず卵が顔を入ってきた子供に照準を合わせ
立ちすくんだ彼に、目からの光が当たる







「照合開始…照合開始… 本人と断定





告げられたその一言に、全員の表情が
驚愕へと彩られた







「っえええええ!
さんまで子供になってるぅぅ?!」



「オイィィィ!何で!?
お前までガキになってんの!?」



「それはこっちの台詞だろーが!!」







流石に落ち着きを取り戻したお登勢が彼へ訪ねる







、まさかとは思うがアンタも
心当たりがないってのかぃ?」


「ああ…目が覚めたらこのザマさ」


「役に立たないアルな」


「俺だって無理やり居酒屋のハシゴに
つき合わされた後 記憶がねーんだよ」


「昨日どんだけ飲んでたんだアンタらぁぁぁ!」







新八の追求に答えず は近くの席に腰掛ける







「ニシテモサン、ヨクソンナシュミ悪イ
スーツノ子供サイズガアリマシタネ」


「失礼な事言うな…サイズについては
黙秘させてもらう」





ムッとした顔で端的に言った彼に
嫌な笑みを向ける神楽と銀時





「減るもんじゃなしハッキリ言っちゃえヨ〜」


「そーだそーだ、どーせ管理人のくっだらねぇ
ご都合とかそんなんだろお前も」


「「ご都合とか言ってやるなよぉぉぉ!!」」







唱和したWツッコミの残滓が漂う空間に
外からの足音が再び近づいてきて…







「ま…まさか銀時と殿もか!?」





店に入ってきた黒い三つ編みで作務衣の少女


無表情なその顔を青ざめさせている





、血相変えてどうしたネ?」







神楽に答えようとして、いきなり卵から
光線を浴びせられ は身を固くする







「照合開始…照合」


「いや、確認しなくて大丈夫ですから!」





新八のツッコミから一拍遅れて、お登勢が
まだ光線を発する卵の頭を軽く叩く





「つーか今オレ達もって言わなかったか?」


「ああ、間違いなく言った







両者の視線に 頷いたは口を開く





「兄上が幼少に!」


「「省きすぎだろぉぉぉぉ!!」」





瞬間、銀時との見事すぎる
同時飛び蹴りが顔面へと炸裂した









眉一つ動かさず 溢れた鼻血を拭きながら







「目が覚めたら兄上が…兄上が
何故か知らぬが幼少の頃のお姿に…!」





が皆へ説明した経緯を
簡単にまとめてしまうと





早朝に目覚め 稽古を終えて戻ると


家にいた兄が子供の姿に変わっていたらしい







「マジでか」


「始めは私も目を疑ったが…ブカブカの
着物をまとった兄上の姿は記憶の中に
残る面影に近しくてな」


さんの方も、やっぱり原因は
分からないんですか…」


「うぬ 昨日は私も兄上も普段通りに
仕事をして戻って来ていたゆえ」







淡々としたその言葉に、銀時と
顔を見合わせる





「どうやら、ガキになったのは
オレ達だけじゃねーみてぇだな 


「ああ…街に出て色々調べる必要がありそうだ」







言いつつ出入り口まで歩いていく二人へ
お登勢が声をかける





「一応、源外に話を通しとくから
何かあったら相談しときな」


「ああ すまないなお登勢さん」


「源外のジジイにねぇ…当てになんのかね」









こうして万事屋の三人と、
加えた五人組が街へと情報を集めに出かけた







「それにしても、銀さんとさんの
小さい頃って初めて見ましたよ」


「案外 今とそんなに変わらないアルな
迷子にならないよう迷子札つけるヨロシ」





言いつつ伸ばした神楽の手は軽く叩かれる





「っせーな、あーあ早く戻りたいぜ」


「全くだな この姿じゃリーチが短いし
CQCや武器もロクに使えん」


「悩む所そこですかさん…」


「だよなぁ、やっぱ毛があってそこそこの
長さと太さがねぇと格好がつかねぇよな」


「「そこの話じゃねぇよ!!」」







彼がどこを見て言っていたかは…言わずもがな







「銀時は何の話をしているのだ?」


聞き流せそして忘れろ…てゆーか
何で俺達と一緒にいるんだよ」


「何 皆について行けば、兄上が元に
戻る方法が分かるやも知れぬと思ってな」







拳を力一杯握って断言した無表情の彼女に
ただただ呆れるばかりの







 の行動はほとんど兄貴がらみよ
聞くだけ無駄ネ」


「…そうだったな」








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:吉原炎上で共演させていただいたので
こちらも共演長編を書き初めてみました〜


銀時:子供化って何?コ○ン君ですかコノヤロー


狐狗狸:まぁ発想と書き始めの動機はそっから…
つーか「sanagi」のEDの幼少な皆からだけど


新八:何時の話!?それより銀さんと
さんの服って…あれどうなってるんですか?


狐狗狸:銀さんは自前のを詰めて無理やり着てます
さんは…伸縮自在のスーツとかそんなん?


神楽:マジで適当アルな、の兄貴は?


狐狗狸:やーあの人は…今頃自前の着物を一着
詰め直して着てると思います


新八:器用だなオィぃぃぃ!!




次回 ドンドン現る子供化に、共通点が?


様 読んでいただきありがとうございました!