弾丸も刃も、共に選ぶことなく土方は


コンクリートの壁へ異三郎を縫い止める





「そうして飾られてんのがお似合いだぜ
汚ぇバラよ…戦場(ここ)にはてめーらの咲く
花畑なんてねぇよ」






だが串刺しになった自分に興味が無いかのように





「本当にあきれた人ですね 土方さん
事件の収束よりも市民の安全が大事だとでも」


他人事めいた様子で、彼は土方が私情を
優先しただけだと指摘する





「あなたが救いたがってるのは
我が愚弟などではない


土方家の…可哀そうな自分(ぐてい)だ





警察に課せられた使命は罪を雪ぐことではなく
罪を裁くこと その為に罪人以上の咎を負う
覚悟が必要となる…だが


罪を恐れる土方に人を裁くことはできないのだ
と、彼は迷いなく言い放つ


「私達には誰も救う事などできはしません
己さえも救う権利はありはしない…

歯車はただ回るだけです もう止まりませんよ





その言葉に感づいたが辺りを見渡せば


隊士の人数が、大幅に減っていることに気付く





「時間切れです 土方さん、さん」





ビルの内部へと入りこんだ複数人の見廻組


既に鉄と知恵空党がいる場所へたどり着いていた





「一人残らず殲滅せよぉぉ!!」





眼前に迫られ 鉄をも道連れにしようとする
眠蔵だが、隊士達は両者へまとめて刃を振るい


二人の叫びが木霊して辺りに土煙が舞う





同時にが土方を支え、すぐに鉄の元へ急いだ







…それを尻目に 刀から開放された異三郎は
携帯を取り出しある番号を呼び出す





「もしもしサブちゃんですけど
見廻組の手引きご苦労様でした、おかげで
難なく奇襲が成功しましたよ」


『これでオレ達の仕事はシメーか』


「ええ、後は我々が上手くやります」





ようやくビルの上へとたどり着いた二人が
見たのは、鉄と浪士へ斬りかかる白い制服達





―が 一斉に床へと崩れるように倒れる光景


「こっからはオレ達の好きにやっていいんだな」


「それは助かる、少しばかり苛立っていた所だ」











第七訓 どうせ悪なら暴れにゃ損ソン!











銀さん!?それにまで!?」





見廻組から鉄を護るようにして、携帯片手の
銀時とが佇んでいた





それでも電話口の異三郎は変わらず態度を崩さない





「ほう寝返りですか、結構ですよ

元よりメールもロクに返さないのと
ドがつくほど機械音痴のメル友なら」


プロペラ音が土方のすぐ後ろに轟いて





「アドレス帳に残すつもりはありませんから」





上空から、幕府が所有している武装ヘリが2機
鎮座して廃墟上の者達を挟み撃ちにしようとしていた





「んなこったろうとは思ったぜ」


「逃げ道を塞ぎ、一網打尽か
使い走りの捨て駒とは…甘く見られたものだ





眉間に薄くシワを寄せるを視線でなだめ


いつもの口調で、銀時は"待てよ"と言う


「生来ポリ公とは気が合わねえ 真撰組(くろ)にも
見廻組(しろ)にも交ざるつもりはねぇ」






たかが悪ガキ共相手に江戸の二大警察が
こぞって情けない


身内救う事しか考えねぇ不器用なポリ公


誰も救おうともしない器用なポリ公



どっちの味方も御免こうむる と言い放って





彼は"か弱い後輩ども"の味方をすると言った





「てめーらが何も救わねえってんなら、オレぁ
罪人だろうと丸ごと救いとってやらぁ」





木刀を右肩へ担ぎながら前へと進み出て





来いよ、鬼の副長 まずはてめーからだ」


銀髪の侍は土方へ不敵な笑みで挑発する





「この攘夷志士 白夜叉の首
とれるものならとってみやがれ」






彼に習い 人と思えぬ緑眼で睥睨しながら
も敢えて忌み名を名乗る


「貴様らには止められぬ、この鬼と…亡霊を」







二人の名乗りに、その場の全員が驚き





土方当人は―とても愉快そうに笑いをもらす





「佐々木よ、どうやらてめぇとんでもねぇ野郎を
歯車に巻き込んじまったようだな」





斬りかかろうとする見廻組の隊士を押しとどめて
代わりに土方が、刃を銀時へ向ける





「あの天下の悪ガキ共はてめぇらの手に負えねぇ」


「まさか亡霊まで混じってたとはな…
久々に骨が折れそうだ」





もまた、緑眼の娘へと共和刀を突きつける





「ガキ一人に踊らされた野郎共がぬかしやがる」





暴れやすいように人質を斬ってやろうか?


叩かれた軽口へ、けれど相手は鉄一人のために
後ろのクソガキ共をしょっぴけないなら殺せと返す





「今さらガキの一人や二人殺った所で変わるかよ
そんな大層な人間じゃねぇだろ」







許しを乞うつもりも許されるとも思ってはいない


そもそも自分が罪を裁くつもりなど毛ほどもない





だが 罪を裁くことや雪ぐことが出来なくとも


自分達にしか出来ない事もあるだろう、







自らの過去と、鉄との数日を重ねながら





トレードマークの煙草をくわえて土方は


"どこかの物分りのいい野郎"のように
諦めるつもりはないと言って







「悪ガキが、罪人(わるがき)見捨てたら
シメーだろーが」






どこかふっ切れたような笑みを浮かべた





「それでも殺るってんなら、殺れよ 悪ガキ







いつも通りのふてぶてしい笑みで刀を
手にした彼へ同程度の凶悪な笑みを返し


銀時は、次の瞬間 鉄をビルから蹴り落とした







あまりにも迷いのない行動に周囲がわずかに
呆気にとられてしまい…





「「ホントに殺る奴があるかぁぁぁぁ!!!」」


「テメェが殺れっつったんだろうがぁぁ!!!」





土方とが思わず叫びながら斬りかかり


叫び返す銀時と共に無言でも斬りかかる







刃が噛み合う寸前で、訝しんでいた異三郎は





「違う」


彼らの狙いが 互いの首ではない事に気づいた







「局長!人質確保ぉぉぉ!!」





落ちた鉄の身体に打たれた縄を、廃墟内にて
待ち構えてた山崎がギリギリでつかんでいた


その知らせを受けて近藤もバズーカを上へ構え





「よくここまでこらえたな!もう我慢はいらねぇ!
大暴れしてやれぇぇぇ!!」



互いに臨んでいた、銀時と土方が





「バラガキ共ぉぉぉぉぉ!!」







ヘリへ振り返り悪魔のような悪ガキの笑顔を見せた







フェイクだ!構わん浪士ごと撃て!!」





下からの命令が執行されるよりも遥かに早く


悪ガキ二人が近くにあったガレキを自分の刀で
ヘリへと弾いて、フロントガラスを景気よくぶち割る






寸分狂わず こちらも走りざま目で示し合わせ


共和党の上へ乗ったを、がもう一台の
ヘリ目がけて飛ばし


散弾銃さながらの速度と手数で穿たれた槍の刃が


ガラスを容易く砕き散らし、操縦士を怯ませる






そこへ近藤が着弾させたバズーカが屋上に
爆煙を作り出し 辺りの視界を奪う





局長!まっ前が!!
おまけに爆煙で敵が確認できません!」





彼らの姿を見失い、辺りを探る白い制服の
後ろへとあっさり回りこみ


刹那煙から現れた銀時と土方が相手を沈める





「奴等爆煙に紛れて…!」


しめたぞ!ポリ公どもが仲間割れしてるうちに
早くとんずらするぞ!」


「穴だ!爆発であいた穴から逃げるぞ!」





この騒ぎの隙に乗じて、知恵空党の浪士達が
穴からビルからの脱出を図る







しかし…落下したその直後





いつの間にか設置されていた三角木馬
ライドオンしてしまい悶絶





「ハイい〜ち、ハイに〜、ハイさ〜ん、ハイし〜」


する間もなくバットを握りしめた沖田に打たれて
次々フェードアウトしていく





「待てェェェェェ!
…下SMバッティングセンターだったぁ!」



「とんでもねぇドSスラッガーが
バッターボックスに立ってっぞ!」



「いやSMバッティングセンターって何!?」





ツッコミを入れる間に後ろからも浪士が飛んでくる


そう…信女によって卓球のラケットで
加減もクソもなく打ち返された浪士達


「と思ったらこっちでそのまま
ラリーしてっぞぉぉ!」



「オイ何の勝負してんだコイツら!
ただのドSスポーツじゃねーか!」



階段だ!今なら見廻組もいない!」





駆け下りる浪士の顔面に何かがぶつけられる





「ハイい〜ち、ハイに〜、ハイさ〜ん、ハイし〜」


それは階下で待ち伏せてた山崎が投げるあんぱん





待てぇぇぇぇぇ!!こっちはあんぱん工場だぁ!
戻れぇぇぇ!表の手すりつたって逃げろ!!」



泡を食って彼らは手すりの方へと走りこむが…





「ハイい〜ち、ハイにっ…ハッ…さ…ん」


ダメだぁぁぁぁぁ!!
ゴリラが延々と昇り降りしてるぅぅぅ!!
股間に生まれた新感覚を延々と楽しんでるぅぅぅ!!」



あっちだ!いちかばちかビルを飛び移るぞ!!」





と浪士が向こう側のビルに飛び移ろうとした瞬間


バズーカの発射音と共に、その背中に
何かが取り付けられ


「うわっ、な、何だこの風船みたいなのは!?





現状を確認する間もなく撃ち落される





「ハイい〜ち、ハイに〜、ハイさ〜ん、ハイし〜」


それは下にスタンバイしたカズが、浪士一人一人に
つけたフルトン回収バルーンを


ライフルで撃ち落としていたからである





「こっちはプーヤンだぁぁぁ!!風船取り付けた後
プーヤンのごとく撃ち落としてくるぞぉぉぉぉ!!」



てか何がしたいんだよあいつ!?風船付けて
助けたいのか撃ち落としたいのかどっちなんだ!?」



「どーすんだ逃げ場がねぇぇぇぇぇ!!」





正に知恵空党の者達にとって 四面楚歌の状態だった









戦況の様子を意に介さず
異三郎はヘリに射撃命令を下す





『しかしこれでは敵と味方の判別が!』


「構いません、動くものは皆標的です」





爆煙が少しずつ晴れてゆくと、黒い制服が見えた


それにつれてビルの上のあちらこちらで
真選組の隊士が倒れている有様を操縦士達は見る





「真撰組が…既にやられています」


『動く者は?』


『誰もっ…あっ…一人だけ!!味方です!!





ただ一人残っていた、見廻組の白い制服を
来ていた人間がゆっくり振り返る







…それは見廻組の制服を着た土方だった





「土かっ…」


その報告がなされる前に、彼は2機のヘリの
間目がけ安全ピンを抜いた手榴弾を放り投げる





「手榴弾だぁぁぁ!!」


「退避しろ早くぅぅぅ!!」





錯乱した操縦士達が操縦を誤り、プロペラを
廃墟へ接触させてしまう





「操舵不能!!メーデー!メーデー!!」





慌ててヘリ内から退避しようと機内の人間が
右往左往する合間





手榴弾は、爆発せずにただ床に転がっていた





それを拾った土方は焼きそばパンを出し


手榴弾から出したマヨネーズをとかけて
二つのヘリの爆発をバックに頬張る





ありがとよ、こいつのおかげで
どこでもマヨネーズが食える」


「それはシギントに言ってくれ、安全ピンの
機能を維持したまま作るのに苦労したみたいだし」





ステルスを使い、辺りを駆けるの声が
苦笑交じりに返してからこう呟く


「さて…最後の仕上げだ








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あとがき(管理人出張)


狐狗狸:悪ガキ本領発揮きましたが…お二人さん
一体何やってんですか!?おいバトルしろよ!


沖田:息抜きついでの攘夷浪士掃除ってヤツでぃ


のぶめ:少しは休憩を挟まないと身体に悪い


土方:ドSどもはほっとけ、にしてもあの
グラサンは何がしたかったんだマジで


狐狗狸:本来はバズーカ爆煙で浪士達を
混乱させた隙にあのフルトンプーヤンで鉄を
救出する手ハズだったんですよ多分


山崎:どっちにしろ落下は確定!?
つかオレ間に合わなかったらアウトじゃん!!


銀時:ダイジョブだって、そーなった時は
一緒にいるゴリラがどーにかすんだろ


近藤:いやいやいやオレがあの位置じゃ
結局 鉄アウトじゃん!落下死確定じゃん!!




バラガキ達の戦いに終止符が打たれ、そして鉄は…


様 読んでいただいてありがとうございました!