先日の一騒動は、数日の内に屯所内の隊士と
MSF隊員に知れ渡って


喫煙中の両者は談笑しつつその話題をしていた





「おい聞いたかよ、うちの副長が
見廻組と一悶着したらしいぜ」


「ああ、ボスも被害に遭ったと聞いた」





見廻組はここ最近の間に有名になった警察組織で


「名門のボンボン共から俊英をよりすぐり
組織したっつー…」


「いわばエリートでできた真選組だな」





だがしかし新設されるや否やあらゆる組織を
ゴボウ抜きする活躍を見せているのは


ひとえに見廻組を束ねる局長"佐々木 異三郎"


…この男の功績によるところが大きい





当人は切れ者で名門・佐々木家の長男


のみならず剣を取れば「二天」、筆を取れば
「天神」…ゆえに「三天の怪物」と呼ばれ
幕府の信頼も厚い、と語って隊士はため息一つ





「またエライのにケンカふっかけたね副長も」


「そういえば、佐々木って…」





隊員の言葉に触発され、隊士は小姓となった鉄が
異三郎の 腹違いの弟だと言うウワサと


あまりの出来の悪さに厄介払いされた事を話す





「今回の件もアイツを副長がかばったとか…」


「あの鬼の副長と呼ばれる土方十四郎がか?」


「あんなボンクラ局中法度にかけて
さっさと斬っちまうと思ったが…」


「そういえばお前らのトコじゃ
そういうのいた時、どうしてんだ?」


「オレ達の場合は即前線に送り込んで
戦死させてるな ああいう輩はすぐに
狙い撃たれて脳髄をブチまけるのがオチだ」





厳しい意見を織り交ぜつつ四人は鉄を揶揄し


「ああいう坊ちゃんは、早めに辞めさせんのが
一番効率的だと思うがな」


確かに、なまじ名門出だけに扱いづらいし
その上こんな火種になるようじゃさっさと
クビにした方が真撰組のためっ…」


「おい!」





MSF隊員が、喫煙室に近づく鉄本人
気がついて声を上げる







急いで煙草の火を消し姿勢を正した隊士二人と


"ボスに恥をかかせまい"と同様の態度を
とる隊員を目前に黙ったまま、ガムを噛み続け…


噛み終え 冷や汗を垂らす隊士二人へ向けて





失礼します先輩ぃぃぃ!大変お手数
おかけしますが、ちょっとそちらの自販機使わせて
頂けないでしょうか!!」



鉄は丁寧な言葉遣いで礼儀正しく頭を下げた











第三訓 兄弟は義理でも本物でも争う











『…え?』





いきなりな対応に困惑する周囲を他所に


"煙草調達の任務を副長より仰せつかった"
真面目な口調で仰々しく名分を口にし


彼らの間を横切り自販機の前へ進み出て


商品を購入する…と思いきや





「えーとマヨセンのライトだったな…アレ?
メンソールだったっけ?いや待て確かメンソールは
吸いすぎるとイ○ポテンツになるという都市伝説が
あったハズだ!副長をイン○テンツにするワケには」


などと余計なお世話と偏った知識による理論
ダダ漏れでひと通り展開させて


隣のいかがわしい自販機へと移動する


「そうだ、煙草の代わりにアレを買っていけば…
○ンポテンツを防げる上副長も元気になるぞ
いや待てしかしコレも子供に悪い影響が」


「いいからさっさと買えぇぇぇぇぇ!!」





痺れを切らし、鉄を自販機にめり込むほど
蹴り飛ばした土方の後ろから





「やりすぎだろ土方さん…」


呆れながらが現れ 四人は目を見開く





「ふ、副長!?


「ボスまで!?」





構わず煙草の銘柄をめり込んだ男に
教える土方へ、おずおずと隊士が声をかける


何サボってんだ?切腹させんぞ」


「いや切腹なら後でしますけど…
あのそれ…誰ですか?」


「寝ぼけてんのか?お前らにも紹介したろ
こないだオレの小姓になった…」


が説明に続くように自販機から顔を出した鉄は





「佐々木鉄之助ですよ」


さっきとは全く違う、少女漫画チック
キラキラの瞳をしていた





『いやしんねーけどこんな奴ぅぅぅぅ!!』


隊士とMSF隊員の二人が同時にツッコミをいれた





ちょっと待てぇぇぇ!しばらく空いた間に
ほとんど別人になってんじゃねーか!」


「つーかそんな顔してたっけ!?」


「スイマセン、自分ベビーフェイスが恥ずかしくて
グラサンで隠していたものですから」


「いやなんでグラサンかけただけで
ヒゲ生えたり抜けたりしてんの!?」






色々思うところがあり、今までの自分を捨てて
新しく生き直す決心をした
彼は胸を張って言う





「Bボーイはもう卒業、BからCへ一歩踏み出し
ちょっと大人になった今の自分は…Cボーイッス!


「いや大人どころか子供に戻ってますが!?」





上司ばりのツッコミの最中、鉄の仲間だった
外人二人も後ろについて頭を下げるが





自分も真撰組を…江戸を護るために
尽力するッス!
ホラお前たちも頭下げろ」


「オイお付きのBボーイにいたっては
CボーイどころかA(アキバ)ボーイだよ!
どう見ても退化してるよ!






しまいにはAボーイがCボーイの謝罪の姿勢に
Cのノリをグダグダと始めてしまい





「邪魔だどけ」


土方にケツを蹴り飛ばされて、仕事へと戻る





ああ!待って下さいッス副長!」







一連の流れを 呆気に取られて四人は見ていた





「い、一体何があったんだ…あの二人…」


「何でもいいんじゃないか?」


「ボス?」


「色々あったんだよ、鉄も、土方さんもな





意味深な発言に首を傾げる隊士と隊員達を
横目に、は小さく笑う





彼は知っていた…土方が鉄と同類であり
茨の道を突き進む


"バラガキ"であると







「そういや…銀さんとは大丈夫かな」





心配げにが呟いた、ちょうどその頃







見廻組の留置所にて身柄を拘束されていた
二人を引き取りに 沖田が迎えに行っていた









「旦那、それにもおつとめご苦労様で…」


相手が言い終わるのを待たずに銀時は


手錠に繋がっている鉄球で攻撃を加える





「ひでーな旦那
わざわざ釈放手続きしてあげたのに」


へぇ〜そうなんだ でも逮捕までの
手続きしたのも君たちのようなもんだよね」


そりゃ土方さんとあのボンクラでしょ
オレにゃ関係ありませんよ」


「ウン、オレでもないけどね」


「やめぬか大人気ないぞ銀時」





一応は止めるだが、涼しい顔しての
鉄球攻撃回避の攻防は収まらず


あわや沖田の顔面に直撃する寸前で





銃声と同時に 鉄球が粉々に砕け散る





どうか真撰組を責めないで頂けますか?
責任は全面的に当方にありますので」





彼らが真選組と関わりがあることに
異三郎は形ばかりの狼狽を口にして続ける


「一体どうお伝えしたらいいのか
わからないのでメアド教えてもらえますか?
一日中長文謝罪メール送りつけるんで」


「じゃあKUTABAREELITE@bocomo.ne.jpで」


「しかし鼻はドーベルマン並みの自信が
あったのですがね アナタ達からは確かに
深い業の香りがしたのですが…」





などと言いながら携帯のアドレス入力をして


「脅威の幸福論 攘夷志士幸福法」という
怪しすぎるサイトに繋がり戸惑う彼をよそに





「え、何?何か臭った?確かにこれ二日目だけど
ちょっとコンビニ行くとき着ただけだよ」


銀時はしきりに服の臭いを着にして、沖田と
に嗅いで確認するよう頼みこんでいた





「まぁ正確に言うと誤認逮捕ではないですからね
四捨五入したら犯罪者ですからねこの人ら」


「人聞きの悪い事を言うな、人間なんてみんな
四捨五入したら犯罪者だバカヤロー 夏休みの
ガキなんてなぁラジオ体操以外犯罪に手を
染めてるようなもんだぞ、


「いや、私に振られても返答に困る」







この場にがいたならば


(犯罪者の基準浅すぎだろ!)


などのツッコミが返ってくること請け合いだが


生憎ツッコミ属性が不在のままなので
ボケが蔓延しているのであった







「慰謝料、スクーターの修理費その他諸々
いくらでも出しますからお好きな額を
このチラ裏にでも書いておいてください」





たかり屋同様に見られている態度と発言に
銀時は差し出されたチラシを破り捨てる





チラ裏だぁ?エリートが庶民バカに
してんじゃねーぞ!こんなもんでオレ達の
傷付いた心が癒せると思ってんのかあん!?」



「同感だ、虫が好かn「トイレットペーパーに
書いていいですか、横長の方が色々とアレなんで」



が、直後 浅ましくトイレットペーパーに
額を延々と書く彼を見て は唖然とした





銀時…家賃が苦しいなら今月少し貸すぞ?」


年下の女に同情されるとか、旦那の
マダオ能力マジパねぇや」





思い切り見下した物言いも無視して
桁を増やし続ける相手を眺めてた沖田は


「旦那、そんなもんに書いても無駄ですよ
何故なら水に流されるだけです





お後がよろしいようで、とうまい事言って
トイレットペーパーをつまんで鼻をかむ





「佐々木殿、気遣いは結構でさ」


「ああてめっ何してんだ!」


「ウチの副長が色々と粗相しでかした
らしいんで これでお相子ってことで」





騒がしい銀時を無視し、異三郎は会話に応じる





「いえ、そちらではゴミである愚弟の処理も
お頼みしましたから なんなら処分費用
上乗せしていいですよ」


ついでにゴミ扱いされた天パがノリツッコミで
キレる様を 少女は無表情で眺め ため息





「いやそいつも果たせなさそうなんで
言ってるんですよ 困りまさァゴミ出す時ゃ」


分別してくれねーと、と普段通りの口調で
言いながらペーパーを丸めて沖田は続ける





不燃ゴミかと思えば、存外燃えるゴミ
だったらしいですよ この季節に暑苦しくて
風流もクソもねーや」





そしてペーパーをポイ捨てして


「まぁ全く役には立たねーが灰になるまで
コキ使ってやりまさぁ」






慌てて拾う銀時の叫びを後ろに歩き出す







「沖田さん、一つ忠告しておきます





その背中へ異三郎は次の言葉を投げかける


"腐ったゴミは二度と戻らない、どころか
菌を撒き散らし周囲までも腐らせてゆく"






「早めに始末しないとアナタ達真撰組も
大変なことになりますよ」



「……旦那、行きますぜ」


いくわけねぇだろ!返せ俺の
10000000…アレ、なんぼだっけ?」







守銭奴全開の銀時を見下ろして、彼は言う





「そんなにお金に困られているんですか」


あたりめーだろ!テメーらボンボンと違って
オレ達ぁ生きてくだけで精一杯なんだよ!」



じゃあ…お仕事紹介してさしあげましょうか?
できればアナタもどうですか、さん」





彼女は、にべもなくキッパリと言い切る





理由も無い故断る それより
槍はどこだろうか総悟殿」


「ああ、あのボロ槍なら旦那の薄汚ぇ棒切れ
一緒にこっちで預かってるぜぃ」


失敬な 私の形見を通販商品と一緒にするな」


「オメーらせめて悪口は本人いねーとこで言え」


平然とした無表情で横切ろうとする相手へ


彼は静かに、ただ一言





田足家の件を不問にすると言っても?」





"田足"の名には立ち止まり 振り返る





っ!何故それを」


「警察舐めてもらっては困りますよ
アナタと、アナタの兄が何をしたのか

…知らないと思っていましたか?」





鋭い緑眼を真っ向から受け止めて彼は続ける





「もう田足はいない、お蔵入りになったから
自分の罪はチャラ…なんてことはありませんよ」


「…百も承知だ」


「それなら話が早い、容疑者兄妹の身柄
今ここで確保しても当方は」


兄上は!…兄上だけは見逃してくれ、頼む!





土下座をしようとするを、異三郎は
言葉で押し留めた





「いいですよ、私とて鬼ではありませんし
終わった事をいつまでも引きずっても
仕方ありませんからね」


耕す勢いでほじくり返しんじゃねぇか」


「さて、仕事の話をしましょうか
あまり時間はなさそうですので」





話を切り替え、場所の移動を命じる
似たような無表情の男に


は 抱いた一抹の不信感を濃くする








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あとがき(管理人出張)


狐狗狸:土方さんがウチの子嫌いなのって
ある意味同属嫌悪かも…なんて戯言はともかく
兄弟率と主役のブタ箱率高い漫画だなーコレ


銀時:今更だろ、つーかも案外ブタ箱に
行った回数多くね?いいのかソレ夢主として


狐狗狸:真選組に保護されたり留置されたのも
含めたらかなりの回数だしねぇ いっそ
検挙され率ナンバーワンな夢主に鞍替えしても


土方:だからどこ目指してーんだよ!


異三郎:いえいえ、ちょい悪箱入りヒロイン
いうことで売り出す線もありかと思いますよ


沖田:スレてきたら調教のしがいも出てくるし
一粒で二度美味しいたぁこのコトでぃ


銀時&土方:斬新すぎるわぁぁぁ!!




更生に励む鉄に土方は手紙を託すが、そこに
過去からの因縁が迫る…!


様 読んでいただいてありがとうございました!