倒れた高杉に寄り添い 呼びかける銃女
「晋助様!!しっかり!晋助様ァァ!!」
「これは意外な人々とお会いする
こんな所で死者達と対面できるとは…」
鬼兵隊の一味らしき男が、驚いたように呟き
「あ…ああ ウソ……桂さん!!」
新八が 感極まったように桂殿を呼ぶ
…とっさに高杉の殺気を感じ取り 寸前で
身を屈めかわしていたとは、恐れ入った
「この世に未練があったものでな
黄泉帰ってきたのさ
かつての仲間に斬られたとあっては
死んでも死にきれぬというもの」
そのまま視線を 倒れたままの高杉に向け
「なァ 高杉…お前もそうだろう」
呼びかけに―低い含み笑いが答える
「仲間ねェ」
刀を杖代わりに、高杉が身を起こす
「まだそう思ってくれていたとは
ありがた迷惑な話だ」
懐の辺りから垣間見える 横薙ぎに
切り裂かれた本らしき物と
「まだそんなものを持っていたのか
お互い バカらしい」
桂殿が懐から取り出した、あの時の本は
全く同じものに見えた
「思い出は大切にするもんだねェ」
「いや 貴様の無能な部下のお陰さ」
対峙したまま、桂殿は続ける
「ロクに確認もせずに髪だけ刈り取って
去っていったわ…たいした人斬りだ」
ふ、と鼻で笑い 高杉がこちらに眼を向ける
「逃げ回るだけじゃなく死んだフリまで
うまくなったらしい…もお前に
影響されてるみてェだなァ」
「知らぬ 私のは元からだ」
間髪いれず、私は答えた
第九訓 進んだものに夜明けは来る
「で?わざわざ復讐に来たわけかィ」
「アレが貴様の差し金だろうが
奴の独断だろうが関係ない
だが お前のやろうとしている事
黙って見過ごすワケにもいくまい」
その言葉が終わるか終わらぬかの内に
横手から 突如爆発が起き
「貴様の野望 悪いが海に消えてもらおう」
驚き戸惑う者達を他所に、爆破箇所から
強烈な勢いで火の手が上がる
「工場がァァ!」
「紅桜がァァ!!」
…なるほど、危険を冒してまでの綿密な調査と
入念なまでの仕掛けは
あの生物兵器と工場を確実に破壊するためか
「かつらァァ!!」
「貴様ァァァ!
生きて帰れると思うてかァァ!!」
殺気立った浪士どもが、武器を手に
我らの周囲を取り囲む
桂殿は、携えた刀で神楽の戒めを斬る
私もそれに習い、槍の穂先で戒めを裂いた
「江戸の夜明けをこの眼で見るまでは
死ぬ訳にはいかん」
油断なく気を張り 桂殿は口上を続ける
そして、刀を正眼に構え
「朝日を見ずして眠るがいい」
宣言をしたと同時に 自由になった神楽が
桂殿の胴にしがみつき
「眠んのは てめェだァァ!!」
「ぶごを!!」
この間のTVで共に見た"バックドロップ"を
勢いよくブチかました
見事なまでに甲板に顔をめり込ませた桂殿に
「てめ〜人に散々心配かけといて
エリザベスの中に入ってただァ〜?」
神楽を括りつけていた磔を引きずり
「ふざけんのも大概にしろォォ!!」
新八が弧を描くようにしてそれを
思い切り叩きつける
あまりの行動に、私も周囲にいる浪士どもも
彼らの行動を見守るだけになっている
「いつからエリザベスん中入ってた あん?
いつから俺達だましてた?」
二人からは怒気の気配がありありと見える
触れると火傷しそうなぐらいだ
だが、新八と神楽の気持ちも 分からなくは無い
もし私も同じ位置にいたならば
似たような状態になっていたと思うし
「ちょっ待て 今は、そういう事
言ってる場合じゃないだろう」
「…桂殿、もうしゃべらぬ方が身の為かと」
「茶々をいれるなっ、ホラ見て
今にも 襲いかかって来そうな雰囲気だよ」
尻餅をついたまま 二人を宥めかかる桂殿だが
「うるせーんだよ!!
こっちも襲いかかりそうな雰囲気!」
まったく聞く耳を持つ気配は無さそうだ
…仕方ない、少し助勢しよう
「…新八、神楽 桂殿とて事情があったのだ
もうその辺で勘弁しておけ」
「何だヨそれ はだまされてて
悔しくないアルか?」
「そうですよ!僕らやさんが心配してたのに
この人はずっと、エリザベスのフリしてたんですよ」
「いや それはれっきとしたワケがだな」
一言も告げぬこともあるだろうが
エリザベスの姿が、余計火に油を注いだか
「…私からも薦めたのがマズかったか」
つい口に出してしまった呟きを聞かれ
「えっちょっとさんんんん
どういう意味ですかそれ!?」
ものすごい形相で新八が私に詰め寄ってきた
…ここはとりあえず 昨夜兄上が
見事に追求を逃れたかわし方でやり過ごそう
「それは聞かぬ約束だ」
「そんな約束してねーヨ」
誤魔化しきれず神楽に鋭いツッコミと
スネ蹴りをもらい 少し痛かった
疑いの視線が桂殿だけでなく私にも向き始めた所で
「待て 落ち着け、何も知らせなかったのは
悪かった 謝る」
立ち上がりつつ 桂殿が黙秘の真意を話し始める
それと共に、周囲の浪士達も落ち着きを
取り戻したらしく
手に手に武器を構えなおし襲いかかろうとする
「ゆえにこうして変装して」
なおも悠長に語る桂殿の両足をそれぞれが掴み
「だからなんでエリザベスなんだァァァ!!」
叫びながら、二人が足を持ち上げ
桂殿をぶん回し 駆け寄った尖兵どもを蹴散らした
「うおおおおお!!」
物凄い回転で包囲の輪が広がったのを見て、
私は桂殿を回す二人の足元に身を畳んで
潜むことにした
「ちょっと!何やってんですかさん!」
「これぞ完璧な陣形だ、お主らが
桂殿で敵を遠ざけ足元を私が守る」
「おお!考えたアルな!!
ヅラ回すのは私達に任せるネ!!」
桂殿には悪いが しばらく回っていてもらおう
「近寄れねェ!まるでスキがねぇ!!」
「何やってんスかァ!!」
銃女が痺れを切らしたように叫び―
「!!ん アレは」
男の呟きに、皆が視線を砲弾が
飛来した方向の虚空へと向ける
轟音と共に速度を上げて 船が近づく
船首に先陣切って佇んでいるのは
―エリザベス…!?
そのまま船が衝突し、そこからエリザベスと
桂殿の仲間の浪士達が乗り込んでくる
『高杉ィィィィィ!!
貴様らの思い通りにはさせん!!』
エリザベス達は鬼兵隊の連中を退けながら
私達四人を守るかのように、周囲を囲んで集う
「エリザベス…みんな」
「すみません桂さん いかなる事があろうと
勝手に兵を動かすなと言われておきながら」
「桂さんに変事ありときき いても
たってもいられず…」
「やめてくれ そんな顔で謝る奴らを
叱れるわけもない」
位置的には 仲間の浪士達の顔は見えぬが
涙を流しているであろう事は、声だけでも
私にもわかった
「それに謝らなければならぬのはオレの方だ
何の連絡もせずに」
「桂さん あなた、一人で
止めるつもりだったんでしょう」
囲いを攻める浪士達の勢いが増す中で
高杉が 船の内部へと逃げていくのを
私達は、ハッキリと見届ける
「かつての仲間である高杉を救おうと
騒ぎを広めずに一人で説得に…」
かつての仲間…そういえば、桂殿もそう言っていた
おそらく、銀時と桂殿と 高杉は
肩を並べあえる間柄だったのだろう
思考をめぐらせていた刹那
そこで囲いが崩れ 敵が中へと攻め込んできた
エリザベスは必死に桂殿を守り
新八や神楽も襲いかかる者達を撃退し
私も槍で迫る白刃を受け流し、逆に
穂先を突き入れて敵を打ち倒す
最中、背後を垣間見れば
エリザベスが、背後の桂殿に看板で
語りかけているのが見え
「すまぬっ!」
一言言い置いて、桂殿は高杉の後を追うように
船内を目指して走り出す
私は 間髪いれずに新八と神楽と戦う浪士を
薙ぎ倒し、桂殿を指し示す
「新八、神楽 桂殿の後を追え」
「合点承知アル!あのアマも船ん中逃げたネ
腕と腹の分ケリつけるヨ!!」
「でも、さんはどうするんですか?」
「私は後から参るゆえ、気にするな」
言ってから、ふと 思ったことが口をつく
「…それに 銀時ももうすぐ現れよう」
あの時感じた確信が ここに来て
より強くなったが故の台詞
…新八と神楽も それは同じだったらしい
納得したように笑い、
「そりゃ あの人も大バカですからね
じゃあさん、また後で!」
「今度は遅れんなヨ!!」
駆け抜けざまにそう言って、二人もまた
船内へと消えていく
「ここでは、私達が相手をしてやる」
私は エリザベスの隣に並んで槍を構える
「テメェェ…一体何モンだ!!」
吼える浪士の一人に、笑みを持って答えた
「貴様らに名乗る名などない、
有守流槍術 その身に刻め!」
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あとがき(というか楽屋裏)
狐狗狸:はい、今回は桂と新八と神楽のターン
時々高杉のターンでお送りし
銀時:オレはァァァ!?主人公オレだよねぇ!!
狐狗狸:次回登場フラグが立ってんだから
いいじゃないっすか〜
新八:てゆうかドサクサに紛れてさん
何やってんですかぁぁ!!
狐狗狸:ほら最近MGS共演を掲載してるんで
その影響でこう トラップっぽく
新八:ねぇぇよ!どんなトラップだよ!!
桂:折角弁明でリーダー達の目を逸らしたのに
何故助けてくれなんだよ!
狐狗狸:って言われてもそれ自業自得だし
神楽:てゆうかこないだからのの
決め場ゼリフ、全部死亡フラグっぽくね?
狐狗狸:思ってても言わない!
次回には 銀ちゃんが登場し…!?
様 読んでいただきありがとうございました!