目を開けると、そこは見慣れた光景だった
「またこっちに来たのか 」
「はい、父上」
三途の川のほとりで、川を挟んで対岸の
死した父上と向かい合う
「そっちもまた色々と大変そうだなぁ」
父上は会う度に、いつもカラカラと
太陽のように豪快に笑っておられる
しかし 今は違っていた
至極、厳しい顔をしておられる
「でも今回は、結構 危ないな…」
「私はそちらに近づいているのですか?」
「…ああ、このまま 川を渡るも
戻って戦うのも一つの選択だ」
重々しく呟き 父上はこうおっしゃった
「ワシは強制はせん、決めるのはお前だ」
私は先程までの行動を思い出し、
迷わず 決断を出す
「…まだ、私は三途の川を渡るわけには
いかぬのです 父上」
「そうか、それでこそ ワシの娘だ」
「……すみませぬ」
「気にするな、気長に待ってるからな 」
意識は再び闇に溶け
もう一度開いた目は、見慣れた顔を映し出した
第六訓 マナーモード着信無視と連絡忘れの
代償は後でデカくなって戻る
「おお 目覚めたか」
「大丈夫?」
安堵する桂殿と心配そうな兄上を見つめ返しつ
身を起こし、辺りを伺う
「桂殿に兄上…一体どうしたのです?」
「それはこっちが聞きたいよっ!桂さんが
ずぶ濡れで血を流してたを連れて
帰って来た時どうしようと思ったもの!!」
「すっすまぬ兄上!どうか泣かないでくだされ!!」
あああ兄上を困らせてしまうとは私はなんて不甲斐ない!
とにかく泣き止んで頂かねば、いや
それよりもいっそこの場で責任を取って切腹を
「ウホン!オレが虫の息の所を急いで連れ帰り、
殿に処置をしてもらったのを忘れないように!」
「…そうだったのか、ありがとう桂殿」
「本当 感謝します、桂さん」
兄上の表情が複雑だった訳はわからぬが
とにかく 泣かせずにすんでよかった
ありがとう、桂殿
改めて傷口を見ると 銃弾は左胸の少し上、
肩口に近い部位を貫通していた
もしもあと少しでもずれていたら
私は亡き者となっていただろう
「…何があったか話せるか?」
桂殿の言葉に、首を縦に振って
「神楽を助けようとして船で撃たれ」
「最初から説明していこうね!」
兄上の指摘が入り、私はあの時からの経緯を
事細かに説明をした
「何と、リーダーが人質に…それは大変だったな」
「でも、 お願いだから無茶だけはやめてね
僕は本当に心配だよ」
「以後気をつけます、すみませんでした兄上」
うんうんと頷いてから、ん?と
首を傾げて 桂殿が兄上を見やる
「しかしそれなら何故、殿は
先に家へと帰っていたのだ?」
問われ、兄上は麗しい微笑を浮かべ
「それは聞かない約束ですよ」
言いながら今度は逆に桂殿へと問う
「てゆうか桂さんも 外出するならどうして
携帯に一言連絡くれなかったんです?
戻った後、何度か電話したのに…」
「あーすまん、やはり最近の機械は
脆くてな 壊れてしまった」
ほうら、と瞬間的に桂殿は
携帯らしきバラバラの部品を見せて懐へ
隠そうとしたのを 兄上に阻止される
「いやコレ爆弾に改造してる跡
残ってますよね、明らかに」
改めて見てみれば たしかに見慣れぬコードや
時計板がついている
「え、いや これはその…」
「爆弾にの救出…まさか、
船にこっそり潜入していたとか?」
答えはなかったが 明らかに目は泳いでいる
そう考えれば、私を助けられた事も
船からニオイがした事も説明がつく
「……桂殿 約束を破られた上
兄上の連絡を無視するとは言語道断」
私は ゆっくりと槍を構える
「覚悟していただこう」
「えっちょ待てタンマっぎゃあああぁ!」
制裁を受け終え、
「黙っていてすまなかった…高杉達の戦艦が
停泊している場所は以前から突き止めていてな」
桂殿が鼻血を垂らしつつそう言った
「たった一人で潜入して、内部を調べるなんて
あなたも相当無茶苦茶ですねぇ」
「迷惑をかけたな殿…明日 船に潜入し、
そこで奴等と決着をつける」
「無論、私も 神楽との約束を果たすべく
桂殿にお供仕らん」
どさくさに紛れて発言する
反対されるかと思いきや、
「勝手に話を進めないで、と言いたい所ですけど
そう言って止められるアナタ達ではないでしょう」
深いため息をつきつつも 兄上は私達を
キチンと見据えてこう言われた
「ちゃんと生きて帰って来てくださいね
二人の大好物、作って待ってるから」
「…美味いそばを頼むぞ、殿」
「お約束します、必ず兄上の元へ戻ると」
兄上に誓った翌日の早朝
自然と目を覚ますと、居間に桂殿が
どこかの系図らしきものを広げていた
「おはようございます 桂殿」
「ん、か 早いな」
「それは…例の戦艦の内部であろうか?」
ああ、と頷いてから 少し戸惑ったように
桂殿が続ける
「しかし、リーダーのためとは言え
本当にオレと来る気か?」
「何度言われようと決心は変わらん」
「…愚問だったな、失礼した
それでは具体的な道順等を教えておく」
兄上が今だ寝ているため、声を潜めて
潜入する道順などを話し合う
「潜入時は敵方に悟られぬ格好がいいぞ」
「なるほど…なら桂殿はエリザベスの扮装で
潜入するのはどうか」
少し冗談を交えて言ったつもりだったのだが
「馬鹿を言え、とっくにもう準備は出来ている」
言いながら、エリザベスの衣装を出された時
私は正直 戸惑いを隠せなかった
「い…いつの間にそれを作ったのだ」
「ん?まあそれはトップシークレットと言う奴だ
いくらとはいえ教えるわけにはいかん」
「そうか、なら聞くまい」
途端 桂殿の表情があっけなく崩れる
「え、いや…聞かなくていいの?
気にならないの?どうやって作ったのとか」
「聞かれたくない事なら
聞かぬ方がいいのだろう?」
「まあ そうなんだけど…」
教えられぬと言ったのは桂殿なのに
何故 不満げな顔をしているのだろう
桂殿は時々意味がわからぬ
落ち合う場所と、攻め込む時間帯を決め
「じゃあオレは先に仕掛けをすませてくる
は心残りが無いよう、過ごしておけ」
「…了解した 必ず落ち合おう」
互いに家を出、私は万事屋へと向かう
神楽の言葉を銀時と新八に伝える為に
ポツリポツリと降り出す雨が身体を打つ
…傘を、持って来ればよかったかと
思ったとき 急に雨粒が途切れる
振り向くと、そこに雨合羽姿の総悟殿が
「よぉ、新八君の姐御見なかったかぃ?」
「あ 総悟殿…妙殿がどうかされたか?」
総悟殿は近くに落ちていたらしいピンク色の本で
私に降りかかる雨粒を遮ったまま続ける
「いや なんか近藤さんが昨日の休日から
死期迫っててお妙さんに会いてぇって」
「そうか怖いな、見かけたら伝えておく」
「頼むぜぃ…あと昨日の一件を知ってるか?」
首を横に振ると 物憂げなため息と共に
衝撃的な言葉が飛び出した
「例の辻斬りと万事屋の旦那がドンパチ
やらかしたらしくてこっちもヤバいらしいぜぃ」
「そ、それは誠か!?」
「辻斬りの正体は人斬り似蔵っつー野郎でねぃ
高杉と手を組んでるってウワサの…」
みなまで聞かず、私は走り出す
まさか まさか神楽だけでなく銀時までも
危険に晒されていたなんて
せめてあの時どちらかに忠告していれば
…すまない!
階段の下までたどり着き、一気に階段を
駆け上がって玄関まで―
「「あ」」
鉄子殿と、鉢合わせをしてしまった
…ここは とりあえず初対面のフリを
しておくべきだと判断する
「どうぞ」
「いや…あの、どうぞ」
譲り合いの末 二人で呼び鈴を押す
「はーい」
声と共に、妙殿が玄関から現れ
互いに会釈をする
「あら ちゃん…と、こちらの方は?」
「何やら銀時に用事があるらしい」
「何の御用で?」
たずねられ、鉄子殿は恥ずかしそうに口ごもる
「あのォ銀さんなら今は…」
「ここにいるぜー」
玄関先に ひょっこりと銀時が姿を現す
総悟殿の話通り、上半身が包帯に覆われている
「…銀時」
「おーもいんのか、まぁ二人とも入れや
来ると思ってたぜ」
最後の一言を鉄子殿に向け 入室を促す
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あとがき(というか楽屋裏)
狐狗狸:今回は、本当に色々無理クリだった事を
この場を借りてお詫びいたしま
銀時:無理クリすぎだろがぁぁぁ!!(飛び蹴り)
狐狗狸:痛っ、ちょ銀さんこれ病人の蹴り!?
銀時:うるせーよ!前回神楽とに
出番取られて今回こそはと思ったら最後にしか
出てねーじゃん、オレ 本当に主人公!?
狐狗狸:次からごっさ出番増えるから落ち着いて
沖田:旦那はまだマシでぃ、オレなんか
に最後まで話聞いてもらえてねぇし
狐狗狸:いや友情出演だから仕方ないし
てゆうかビニ本を雨傘代わりって…
妙:あーあ、あの時ゴリラの息の根
止めとくべきだったわ(鉈構え)
狐狗狸:お妙さんその発言洒落になりません
桂:…何というか、今回オレの話でも
あるならとの絡みを増やしても
銀時:テメェは人妻好きだろーがぁぁ!(蹴)
沖田:死ねェェかーつらぁぁ!(バズーカ)
狐狗狸:うーわー、総攻撃食らってるー
次回、いよいよ船へと乗り込む…!
様 読んでいただきありがとうございました!