橋の方まで移動すると、既に
エリザベス達が到着していた







「バカヤロォォ!!」





いきなり新八がエリザベスを殴りつけ





更に馬乗りになりながら襟首を掴んで
なにやら叫んでいるようだった







「お前が桂さんを信じないで
誰が桂さんを信じるんだ!!」








…どうやら、桂殿の生死を案じているようだ









新八の余りの剣幕に、彼らだけには
伝えるべきかどうか悩んでいると







急に新八が黙り込み





「………すいまっせ〜ん」





とエリザベスに謝っていた









一体 何があったのだろうか









その間に神楽は定春に





血塗れのサイフらしき物(恐らく 桂殿の私物)
の匂いをかがせると







「新八 私は定春といろいろ捜してみるアル」





定春と一緒に どこかへと駆け出して行く





「お前はエリーと一緒に
辻斬りの方を調べるアル!!」










どちらにつくか迷ったが エリザベスと新八が
何故か橋の上でぼんやりし始めたので







とりあえず神楽の方についていった











第三訓 他人の目は意外と気づかない











定春は桂殿の匂いを探すように街中を
鼻を鳴らしながら歩いている









…犬の嗅覚は人より優れていると聞く





このままでは、家にかくまった桂殿が
見つかってしまうのではないだろうか







「…んん?」







視線が合ったので、気配を隠すが
どうやら少し遅かったようだ





神楽がこちらへとやってきて―


私の潜入していたポリバケツを蹴った





 何やってるアルか?


「む、神楽か こんにちは」





見下ろす神楽に挨拶しつつ、転がり出た
ついでに関節を直して土埃を払って立つ







「こんにちはじゃねーよ 何やってるアル
さっきからこそこそこそこそ


「…仕事だ」


「ねーよそんな仕事ォォ!」







見事な回し蹴りを、上体を反らして
避けつつ逆に訊ねてみた





「ところで銀時はいずこへ?」


「銀ちゃんは別の依頼で動いてるね
私たちはエリーと別行動アル」


「そうか、邪魔したな これは侘びの品だ」





私は懐から酢昆布の箱を取り出す







万が一神楽に見つかった時のために
咄嗟に買っておいたのが役に立った







「こんなもんでごまかされると思うなヨ」







と言いながらも早速、私の手から酢昆布を
奪って食べ始めた





「それでは、がんばれ神楽 さらばだ」









酢昆布に夢中になっている間に 私は
その場から退散することにした











この場は一端、家へと戻り





桂殿に紅桜の件やエリザベスが
心配していた事を伝える事が先決







そう思い駆けている最中、何かにぶつかった









「オィコラ どこ見て歩いてんだ!」





よりによってこのタイミングで
瞳孔マヨ殿に鉢合わせするとは









近くに総悟殿の姿もないし、





今日は用があるので見逃すことにする









「む、すまぬ それでは」


「それでは、で済むかコラ」





怒声に引き止められ、振り返ると


こちらを睨む瞳孔マヨ殿の目が、
引き絞られた弓のように細くなる





「どうやら最近の辻斬りで、槍を持った女
襲われてたらしいっつー通報があってだなぁ」









なんと、昨日の事件を見ていた者が
いたというのか







…見られていた程度によっては





桂殿の立場も非常に危うくなる







私は、瞳孔マヨ殿の次の言葉を
固唾を呑みながら待った









「通報者が駆けつけた所 現場にゃ血痕しか
残ってなかったから、事件として扱われなかったが…」







タバコの煙をくゆらしながら、





瞳孔マヨ殿は 疑わしげに見下ろしてきた







「絶対 テメェが何か絡んでんだろ?
知ってること洗いざらい吐いてもらおうかぁ」












私は毛ほどにも表情に出さず答えた





「知らぬ 人違いだろう」


んなわけあるかぁぁぁぁ!
槍持ってうろつく女はテメェ一人しかいねぇよ!」


「そんな事は無い、戦時中の女子は
皆竹やりを持って訓練を怠らなかったと聞く」


「いつの時代のどこの話だぁぁぁ!」







怒鳴りつける瞳孔マヨ殿に 私は表情を
変えることなく、知らぬ存ぜぬを通した









…疑いを晴らすことは出来ずとも





この程度ならば、私と桂殿を結ぶ
接点が見つかることは無いと安堵した













辺りが夕焼けに包まれる頃







やっとの事で家へと戻るが…誰の気配もせぬ





兄上は仕事だから当然なのだが、桂殿は…?









慌てて室内を探し回っていると







「ただいま〜」







背後から、桂殿が現れた





…つまり 玄関の辺りから







「お帰り…ではなく桂殿 お主、
外を出歩いていても大丈夫なのか!?」


「ふふん、オレを誰だと思っている
変装の名人 桂小太郎だぞ!」


「なんと…いつの間に変装していたのだ!?」







驚く私に 桂殿は不敵に笑うと







「こんなこともあろうかと…見よ!
オレの蝶・特製変装セット〜!!







懐から、煌びやかな蝶の仮面
みょうちきりんな黒のタイツを取り出す









「それは変装じゃなくて仮装です
よくバレませんでしたね」





桂殿の背後から現れた、仕事着の振袖を
着た見目麗しき兄上


私達を呆れたように見つめていた





兄上!あの…お仕事の方はよろしいので?」


「辻斬り事件のせいでお客様の数が少なくてね
商売にならないから今日はお休みになったの」









なるほど、先の一件以来


浪人達も警戒して外出を控えているゆえ
客足が遠のくのも無理もない







……待てよ





もしもこのまま辻斬りが収まらねば
兄上が仕事できないことになる





由々しき事態だ!









「桂殿 ぜひとも高杉達を何とかせねば!」


「う、うむ もちろんだ」







咳払いを一つして、桂殿は気を取り直すと







「そこで、実は殿に 今から
買出しを頼みたいんだ」









懐から出した紙を、側にいた兄上に渡す





「この紙に書かれている品物を全て揃えてくれ」





私は兄上に近寄ると 渡された紙の中身を
横手から覗く形で眺める









「結構 量が多いな…」







ずらりと並んだ品の隣に 詳細と
求める分量が細かく書き記されている





前半の部分は薬品が多かった







「……あの、この"白い布"とか"黄色のラッカー"
っていうのは 何ですか?」


「それは後のお楽しみ、だ」


お楽しみって 桂さん…」







お楽しみとは、何なのだろうか?





揃えた後 桂殿が手品で鳩でも
生み出すのだろうかと密かに期待する











紙に書かれた品物の中に
幸いにも、専門的な商品はさほどなく





ほとんどが量販店で手に入る品だった









「それじゃあ お店が閉まる前に
順番に買いに行こうか」


「お供仕ります 兄上!!」


「頼んだぞ〜二人とも〜」







私と兄上は、桂殿を家に残し
頼まれた品の買出しへと繰り出した









―――――――――――――――







二人が出て行った室内で 桂は懐から
巻いてある紙を取り出して広げる









「…やはり 何度か潜り込まねば
行かぬようだな」







何処かの設計図のようなそれを見つめ





渋い顔で少し唸ると







殿には悪いが、やはり
オレが出向くしかないな」









こっそりと、家から出て行った








――――――――――――――――――――――
あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:かなりお待たせしました〜紅桜長編の三話目


新八:待たせすぎ!アニ銀ではもう動乱篇まで
いっちゃってるのに なにこの遅さ!


狐狗狸:仕方ないじゃない書いてる奴がマイペースだから


神楽:開き直るなぁぁ!定春 噛み付くヨロシ!


定春:ワン!


狐狗狸:ぎゃああぁぁぁ!


銀時:主役のオレが出ないでヅラはおろか大串君が
に絡むってどーゆーことオィ


桂:ヅラではない 桂だ


狐狗狸:紅桜篇はほっといても銀さんやヅラが
目立つので真撰組キャラは友情出演です
あと ヅラはデフォ(笑)


新八:てゆうか桂さんの懐から出した変装道具!
あれどう見ても他版権キャラの衣装うぅぅ!


神楽:そんなの今さらアル 中の人ももう出たし


狐狗狸:そうそう、それにアノ人の格好なら
誰も桂さんだとは気づかない


銀時:つーか気づきたくねぇよ


新八:中の人とかホンッと止めて!




次からはシリアス混じってきます…


真撰組のキャラも出来る限り友情出演
させていくつもりです はい


様 読んでいただきありがとうございました!