新八と神楽が桂殿の後を追って
どの位経ったかは分からぬが
いくら倒そうとも 鬼兵隊の者共の
勢いは一向に減る様子が無い
…桂殿は、無事に高杉の元へ着いただろうか
新八と神楽はどうなったであろう
「挟み撃ちにしろぉぉ!」
前方と後方から浪士が接近するが
「甘い」
後ろ手に槍を渡し、その場で自らが身を捻り
両端をほぼ同時に迫る両者に当て 昏倒させる
これでは埒が明かぬ
いまだに戦う皆のものには悪いが
そろそろ三人の後を追わねば
―何か 嫌な予感がする
「皆のもの、エリザベス 後は任せた!」
聞こえていたかどうかまでは知らぬが
私はそれだけ言うと 船内へ向かう
内部へ入った途端、奥の方で
何かが崩れたような破壊音が大きく響く
砲撃の爆音とも 桂殿の仕掛けていた
爆弾の音とも違う
嫌な予感が 更に強さを増す
通路を駆け、次の部屋へ行こうとし
横手から閃く殺気を感じ
反射的に槍の柄で何かを弾く
今のは 弾丸…とすると、あの銃女か?
少し後ろへ退がり 槍を構えなおす
私の行く手を塞ぐように現れたのは
銃女では無かった
第十訓 乱闘の加勢はタイミングがシビア
大鎌を携えた河童の天人と
銃を構える 目の異様に大きな天人
「何だコイツ、桂の仲間か?」
「ケケッ 知るかよ、とにかく一緒に
首を捧げりゃ見張りの俺達もいい目見れんぜ」
何故 この場所に天人が?
いや…そんなことはどうでもいい
「貴様等の相手をする暇は無い、邪魔立てするな!」
今は、皆の所へ赴くことが先!
「そうは行くかよ、テメェはここで死ね!」
大鎌使いが私に向かい 手にした獲物で
袈裟と切り上げの連打を繰り出す
見切ってかわし、或いは柄で受け流し
距離を取って高く跳ぼうと身構え
「よそ見するなぁ こっちだ!」
見当違いの方向から 銃弾が飛んできた
「くっ!」
横跳びに身をかわした所に大鎌の
一振りが待ち構えていて
瞬時に槍の柄の底で鎌の刃を叩き
軌道を狂わせ 受け流す
「…一体どこから」
気配の方を見やるが、そこには
銃使いの姿が見えな…いや
うっすらと姿を現し 再び風景に
溶け込んだのをこの目でしかと見た
銃使いは姿を透明に出来るのか…厄介極まりない
時間もあまりない 先に片方を叩く!
もう一つの気配に気を配りながら
大鎌使いの河童へ迫る
「飛んで火に入る何とやらってか!」
河童は私に向かって距離を詰め
こちらが足を止めた一瞬のうちに半歩退がり
手にした大鎌で 素早く首を狙う
敢えて踏み込み距離を狂わせ
こちらの動きが止まった所の素早い一撃…
通常の者なら避ける間もなく首をひと刎ねだ
だが、私とてこの程度の修羅場は潜っている
足へ力を入れて床を蹴り
袈裟懸けに切り払われた大鎌を、
更に前へと距離を詰めつつ屈んでやり過ごし
「なっ?!ど、どこへ」
戸惑う相手のアゴへ 下から伸び上がるように
突きをお見舞いした
「ぐがっ…!」
血飛沫を上げ、河童のような天人は倒れる
「ケケッ、あっさりやられやがって
まあいいさ オレがこの小娘を殺ればいい」
残る一人は風景に溶け込んでは
姿を表しをくり返し、
移動も素早いため 気配があちこちに
散って動きがつかめぬ
…せめて、僅かでも隙があれば
穂先を叩き込めるのに
内心歯噛みしながら銃撃を弾き返していると
少し離れた場所に 突如何かが転がる
「、目を閉じろ!」
響いた声の主を確認するよりも先に、
何かを感じ 忠告通りに目を閉じる
音と共に 転がったそれから閃光が瞬いた
「うわっ、な 何だ!?」
驚いたような声が、右斜め後ろから響く
―そこか!
私は振り向かぬまま 身をのけ反らし
声と気配を頼りに槍を突き入れた
「ぐわぁっ!」
槍を引き戻し 光が収まって目を開けると
そこには姿を現した天人が転がっていた
「…先程の助勢は誰が」
ざっと見渡すが、気配はすれども姿は見えず
私の名を知っていた所といい どうやら
敵ではないようだが…
奥の方で また轟音が鳴り響く
「急がねば…!」
私は奥へと向かって駆けて行く
――――――――――――――――
「…まさか、こんな所でに会うとは」
物陰に隠れたそのまま 俺は誰にとも無く呟く
成り行き上、この船に潜入した所
桂さんと鉢合わせしそうになるわ
なんか表で攘夷浪士達が戦ってるわで
上へ下への大騒ぎだ
オマケに紅桜の破壊の大半は桂さんが仕掛けた
爆弾で何とかなっているようだ
…お陰で仕事はかなり楽になったが
少しばかり釈然としない
この先に 暴走した似蔵が暴れているようだ
出来れば加勢したい所ではあるのだが
俺にも…まだ仕事が残されている
悪いがここは、彼等に任せよう
「すまん銀時、新八、神楽、それに
…死ぬんじゃないぞ」
言って、そのまま別の場所へと向かう
――――――――――――――――
そこへたどり着いた私の目に映ったのは
この世のものではないような光景だった
紅桜に取り込まれた似蔵らしき怪物
奴の腕に刀を突き刺す鉄子殿
「鉄子ォォ!!」
あの音の発生源であろう天井の大穴から
鉄矢殿が呼びかける
「コイツは死なせない!」
鉄子殿の視線の先にいるのは
「これ以上その剣で 人は死なせない!」
触手に絡めとられたまま、気を失う銀時
駆け寄る合間にも 似蔵が鉄子殿に
右腕の刀を振り上げ
それが届くよりも先に、神楽が蹴りで跳ね上げる
「そのモジャモジャを」
続く神楽の足払いでバランスを崩した化物の腕に
「放せぇぇぇ!!」
新八が剣を突き立て
私も二人に続き 銀時殿の身体に巻きつく
怪物の触手らしき物を槍で斬りつける
が、頑強な上に相手が暴れるため
中々切り離せないでいる
「銀時 何をこんな所で眠っているのだ
もう朝だ、早く起きぬか!」
絡む触手を斬り続けながら呼びかける
「の言う通りネ!
銀ちゃん とっとと目ぇ覚ますアル!!」
神楽も 似蔵の首を腕で絞めながら
必死に声をかけている
「銀さぁぁぁん 目を覚ましてください!!」
新八も鉄子殿も それぞれの腕に刀を刺し
それにしがみつきながら耐えている
…それだのに 何故目を覚まさぬ
お主は、強い侍のはずだろう!
「お主の魂はこの程度の男に屈するほど
小さなモノではないはずだ!
私に…それを教えてくれたではないか!」
幾度かの私達の呼びかけに…眉が微かに
動いたように見え
しかし怪物が自らの巨体と両腕を大きく振り回し
私達は、堪らず吹き飛ばされて
床に叩きつけられる
急ぎ身を起こすと、吹き飛ばされた鉄子殿に
似蔵は紅桜を大きく振り上げ
「鉄子殿!」
咄嗟に間に入るも 左手の触手に吹き飛ばされ
壁に叩きつけられる
「がっ…!」
「さぁぁぁん!」
「鉄子殿…逃げ…!」
駄目だ 間に合わぬ―
垂直に紅桜が振り下ろされる まさに直前
鉄矢殿が上から飛び降り、鉄子殿を
遠くへ突き飛ばした
粉塵が収まらぬ内、すぐさま私は
鉄子殿の方へ駆け寄る
「鉄子殿!鉄矢殿!だ―」
そこには突き飛ばされて無傷な鉄子殿と
少し離れた所に、血塗れで鉄矢殿が倒れていて
―兄上のあの時の姿を 思い出させた
どうして…どうしてこの場にいながら
間に合わなかった
また、私は同じ過ちを
呆然としていた私の脳を 鉄子殿の
泣き声が揺り起こした
「兄者…あああああああああ」
すぐ側で 怪物が今度こそと鉄子殿に迫る
嘆いている暇などない
今度こそ 傷つけさせるものか
私は鉄子殿達の間に立ちはだかる
こちらに向けられた剣先の動きが
酷くゆっくりと見え―
刹那、奴の動きが止まり
左腕の方へと視線を向ける
そこに刺さった刀を引き抜き
銀時が 似蔵の顔を切り払った
――――――――――――――――――――――
あとがき(というか楽屋裏)
狐狗狸:そろそろクライマックスに向かってます
とりあえずの力量もお見せ出来た所で
銀時:オィィィ!オレ今回一言も
しゃべってねーよ!どー言うことだコラァ!!
狐狗狸:でも見せ場はあったし、次回は
銀さんのターンなんで許してね
銀時:それ前回も言ってたろぉぉ!!
新八:てゆうか何でMGSのあの人出てるの!?
狐狗狸:頼まれちゃったし、ちょうどの
戦闘シーンに絡めりゃ行数稼げるなーと
神楽:大人って汚いアル!
肥溜めにハマって溺れればいいヨ!
新八:ちょっ、神楽ちゃんんんん
お食事中の人がこれ読んでたらどうすんの!
銀時:うまくねぇんだよ 幾らあの剣の
装飾がウ○コだからってなぁ
新八:とぐろを巻いた龍ぅぅ!
アンタらさん並のKYですかぁ!!
神楽:と一緒にされたら心外ネ
狐狗狸:それ同族嫌(殴られ)ぶるぁ!
河童天人=桂が戦ってたのが悟空と八戎(?)の為
目のデカイ奴=カメレオンっぽい天人って事で
次回 銀さんが紅桜に決着をつける…!
様 読んでいただきありがとうございました!