三人が店の前に突入するまでに、


銀時は 何をしていたのか…







(話は 昨日の時間に遡る)









「あーもう 何がやばかったのかなー
何つかもう泡だらけだよ 小便が





ずっと公衆厠にこもっていた銀時が、頭を抱えて
のろのろと出て来た





相変わらず発言が 少年誌の主人公とは思えないほど


世知辛く、かつ色んな意味でギリギリである







「やっぱパフェ控えなきゃダメか…いやでも
太く短く生きるのが男道だしなぁ」





とぼとぼと道を歩きながら 甘味所をじっと
見ている所からすると、


筋金入りの甘党だと改めて感じさせられる







新作ソフトぉ?何だ貧乏なオレへのあてつけか?
銀さん新作って響きに意外と弱いんだぞこのヤロー」





店先を見つめながらよく分からない愚痴を
飛ばしていた銀時が ふと、道の向こう側を見た







丁度 向こう側に立ち並ぶ長屋の一つから


あの店にいた店の女―が出て来た所だった











第九訓 放置しとくと後で危険











銀時が、彼女の後ろをしばらく歩み





人気がなくなった所で声をかけた







ようネェちゃん、この辺に住んでたのか」





驚いて振り返り、目を少し丸くしたが







「貴方はあの時のお客様…ですよね?」


すぐに微笑んで 華やかな声音で
明るく喋る





「まーな アンタの小奇麗な顔が印象に残ってて
ずっと探してたんだよ」


「まぁお上手ですこと 嬉しいわお侍様」





ニッと笑う銀時に美しく微笑む





「このを憶えて わざわざ呼び止めて頂いて
恐縮ですが、これから仕事がありますので…」





そのまま歩み始めようとするの肩を


ガシっと掴んで言い寄る銀時





「まぁいいじゃねーか、どうせ店も休みだし
新作ソフトでも食いながら語ろうぜ?」


「いえでも 私はヒマでは御座いませんので」





ヒマ、を強調し わざとらしく眉を潜める


それでも掴んだままの腕は緩まない







「オレぁ、アンタに用があんだよ
 





一瞬 の表情に動揺が走ったのを


銀時は見逃さなかった





「…どう言う事ですの お侍様?」





取り繕うように浮かべた微笑に、銀時は
掴んでいた肩を離して 少し距離を取る





「自分の妹突っぱねといて、よくまぁ平気な顔で
働けるモンだなぁ冷血女…いや 冷血漢か?







銀時の一言での顔から表情が消え―







「…どうやら 隠し立ては出来なさそうですね」





"彼女"から出た声は、低い男の声だった





「よく僕が男だと気付きましたね」


オレの股間のセンサーは ちょっとや
そっとじゃ誤魔化せねーよ」





言いながら アゴに手を当てつつ


銀時は"彼女"の身体をジロジロ眺め回す







「しっかしよぉ 見事なもんだ、体型もさっきの声も
新八の姉貴より女らしいな…よくついたまま
そこまで整形できたな」


「あの そういう事を言わないで貰えますか
周囲には一応、って事で働いてるので」





先程とは打って変わって "彼女"…いや"彼"
冷たい視線を浴びせ掛ける





「それに 体型と声帯を変える事位造作も無いです
僕とは、関節を変えれる特殊な天人と
人の間に生まれた子ですから」


月からの使者かテメーは」




銀時は世代限定でしか分からないボケをかました


…正しくは"月の化身"なのだが







「しかしよぉ、生き別れの兄弟だってのに
あそこまで突っぱねるか フツー」







は俯き 銀時の言葉をただじっと聞いている





「出会い頭に他人のフリでおまけにビンタ一発
幾らなんでもやり過ぎだろ、イノキか?」









その言葉に、俯いていたが口を開く







「僕は に顔を合わせる資格なんか…
ないんです」





両の手の平を天に向けて広げ、何かを
抱えあげるような形のそこをじっと見つめて





「僕の手は、血と罪にまみれていますから」







まるで その手が今もなお、血にまみれて
いるかのように目を落とす









「例の 新聞記事の事件か?
家政婦は見たっつーアレ?」







こくり、とが重々しく頷いて





「僕の罪は 一生かけても消えないでしょう」





遠く どこか寂しそうにの視線は宙空を舞う







「…が僕を探してくれていたように、僕も
ずっと の事を思ってました」


溜息をついて、重々しく二の句が告げられる





だからこそ に会わない方がいいんです」


「…アイツが、それぐれーで引き下がると
思ってんのか?」







答えぬままで は静かに頭を下げ





「あなた方には悪いんですが 
伝えてくれませんか?」





ひた、と眼を見据えながら 静かに言葉を続ける







罪人の兄はもういない…もう兄を探そうとせず
生きたいように生きてくれ
、って」









少し間があって 銀時がボリボリと頭を掻く





ホンット 兄妹揃って面倒くさい奴等だな」





苛立ったように眉をしかめながら、







「妹は常識ない上兄貴探してどっかいなくなるし
兄貴は長い間女に化けてたせいで 思考まで
京の女みてーにネチネチネチネチ、やってらっか」





繰り出される銀時の説教に はひたすら
押し黙りながら項垂れている







「テメーらが何背負ってんのかしらねーけどよ
そーいうのは 生きて、自分で伝えろよ





ハッと気付いたようにが懐を探る


お探しの物はコレかい、お兄さんよ?」





銀時がニヤッと笑いながら 手に持った


遺書小刀に見せつける





「あっ…!」


と会わせる前に自殺されちゃ
オレ達がアイツに殺られるからな」


「返し…」


の言葉半ばで 銀時は彼の目の前で


遺書をびりびりと破り捨て、


ついでに小刀も空中に放り投げると
腰に刺した木刀で真っ二つにへし折った





「テメーとを会わせんのが、仕事でね
その後は本人達でケリをつけろよ」








呆然と佇むをその場に残して





銀時は万事屋へと ゆっくりとした足取りで戻っていった







―――――――――――――――――――――





(一方、こちらは
三人が突入する前の状況―)









私は槍で入口を破壊し、部屋を抜け出した





何やら この場所は基地のようになっていて
妙に入り組んだつくりになっている







中も何やら騒がしい様子で、そこここに
怪しい者達が走り回るのを見かけた







バッタリと出くわした者も 叫び声を
上げる前に気絶させ、


出口を探して 私は奥へと足を進め





一体…何なのだ、この騒ぎは」







やがて 突き当りらしい大き目の部屋にたどり着いた








上の店で見た者達の姿も認め、私は
物陰に隠れて様子をうかがう







切羽詰ったような声が 耳に届く





「例の失敗作はまだ駆除できんのか!」


「しかし 奴は既に数多の侍や天人を取り込んでいる
通常の攻撃は最早効かん


外で少々暴れさせすぎたか…まさか暴走して
我等のアジトを破壊し始めるとは…!」









―そう言えば、ここの所 侍や天人が
何者かに襲われたり


行方不明になる事件があったが…





あの会話からすると、その件はこの場所
関係しているのか?







「おまけに上では幕府の犬どもが網を張って
我等を待ち伏せている…しつこい奴らめ!


「高杉め…こうなる事が分かっていて
このアジトから身を引いたのか!」



どうします?このままじゃあの化け物と
ここで心中ですよ!?」


「早くアイツを駆除しない限り、隠してある
船でこの星から逃げられないからな…」







ここは予想していた以上に大変な場所だったようだ


最早 一刻の猶予もない、早くこの場を





「誰だお前は!?」





背後からの声と共に飛来してきた一撃を槍で弾き、


私は部屋の中へと踊り出た







「貴様…小娘 今の話を聞いていたな?!





驚愕の表情を敵意へと変え 奴等が
私に近づいてくる





たちまちに四方を取り囲まれ、私は槍を構え







その時だった







ドォン!…ドォン!ドォン!





大きな音が、壁の向こうから鳴り響き


周囲の動きが止まる







ドォン!ドォン!ドンドンドンドン!





音は次第に激しさを増し、壁にピシリとヒビが入る









ヤツだ…ヤツが ヤツが来る!!


「貴様らは一体―!?」









叫んだ言葉の後半は 壁が大破する音に遮られた








――――――――――――――――――――――
あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:前回三人が突入した話書いてたのに、
今回はそっからの続きでなくてスイマセン!!


銀時:何 今回出番オレだけ?てか初っ端の出番
かなりかっこ悪いんだけど やり直していい?


神楽:銀ちゃんは出られただけまだいいヨ 私なんて
出番 名前変換とここだけアル!


新八:…あの そもそもどうして僕等、話に
出番ないのにここにいるんですか?


狐狗狸:君らは三人でワンセットでしょ?


新八:何!?僕等某ファーストフード店
メニューに載ってるんですか!?


神楽:私ダブルバーガーがいいアル!


新八:そー言う話じゃなくて、本編語ろうよ!
折角のあとがきなんだから!



銀時:オレ アップルパイマッ○フルー○ー


新八:だからそっちの話じゃねぇって!
もっと前半の会話とかさんが聞いた話とか…




相変わらずあとがきが本編以上にグダグダなので
軽く補足を入れときます




真選組は例の店での事件と今回話に出た
"侍と天人を狙った"事件でバタバタしてました


店の事は知らなくても、もう一個の
事件は一応耳にしてた…って感じです(アバウト)


次回はちゃんと三人突入の続き書きます…


様 読んでいただきありがとうございました!