店の者達に、外へと放り出されたあの後





私は一人 雨に打たれるのも構わず
呆然と道端に立ち尽くしていた







わたしの名前は

あなたのお兄さんではありませんわ






追い出されてもずっと あの人の顔と言葉が
頭の中を駆け巡る







 お前まだそんなとこに突っ立ってんのか?
タクシーに轢かれてもしらねーぞ」





ぐるりと首を声の方に向けると、傘を差した
銀時殿達がそこにいた





傘差さないと風邪引くアルよ





神楽殿がそう言いながら 私に傘を開いて手渡す


「……かたじけない 神楽殿」





私が傘を受け取ると、新八殿が一歩近寄ってきた





「あの後 僕らも色んな所を探したんですけど…

さんのお兄さんらしき人
やっぱり、見つけられませんでした」







追い出されて道をとぼとぼ歩く私を見かねてか


新八殿や銀時殿や神楽殿が 手分けして
色々な場所を尋ねて回ってくれていた





けれど 期待していた情報は…得られなかった様だ







「ひょっとしたらの兄ちゃん、ここには
いないかもしれないアル」


「いいや…この街にいる筈だ


「まだあの人の事が気になってるんですか?
きっと他人の空似だったんですよ」


「あのとか言う女だって違うっつってるし
やっぱオマエの早とちりなんじゃねーか?」





溜息混じりに言う二人の言葉を 私は大声で否定した





「そんな筈はあるものか!あれは…
兄上だったんだ!!」








だって、あの人の名乗ったという名は―


私達の 母上の名前なんだ





絶対に 偶然や早とちりなどではない







「でも違うって言ってたヨ」


けれど私には分かる あれは兄上だ!
きっと何か事情があり、あのような―」



「というかそもそも 何でそこまでお兄さんに
会う事にこだわるんですか?」


新八殿の言葉に 私は答えられず目を伏せる





「っ…今は 言えぬ







生まれ出た沈黙を 雨音が埋める





「とにかく雨も強いし 早く万事屋帰ろうヨ
私あったかいモノ飲みたいアル」


「ウチにあったかいモンなんて白湯しかねーぞ」


お茶っ葉ぐらい買いましょーよ…まぁとりあえず
万事屋に戻りましょ さ、さんも」


差し出された手を 私は払いのけた







「いい 私はこれから先程の店に戻る」





それだけ言うと 皆に背を向けて歩き出す





「お前っ…いい加減にしろよ
ちょっと聞いてんのかコラ!





銀時殿が 私を後ろから両腕で
私の両肩を抱えて戒める


もがいても簡単に振り解けない







「放せ 私は…兄上に会わねばならないのだ!





私は瞬時に両肩の関節を外し、戒めを
抜け出して走り出す







「うわっ…おい待て 


「待ってください さん!」


ー!」





銀時殿達の声を後ろに聞きながら、私は
関節を直しながらあの店を目指す







銀時殿や新八殿や神楽殿が分からなくとも


あの人は…あの人こそが 兄上なんだ!







途中、何者かに肩がぶつかるが





おい そこの者、今ぶつかったぞ」


「スマヌが…私は急いでいる故、ご免!





白くて大きなキグルミを連れている、
派手な女装の殿方に頭を下げ


私はあの店へと向かった









一度たりとも 忘れた事など無かったのだ


間違えるはずなんて無い





なのに、どうして 兄上…!












第六訓 新聞は四コマを読む為だけに存在しない











「何アイツ ニュルって抜けたニュルって
ホールドしてたのにニュルって…気持ち悪っ!」



タコの天人だったあるか?」


無いからそれは!だってどう見たって
人間でしょさん!!」


「いや 見た目が人間っぽいだけなら
そこのチャイナ娘だってそうだろ」


「そりゃそうですけど つーかこんな事してる
場合じゃなくてですねー!」


「お前達 揃ってこんな所で何をしている」





が単独行動を行い、慌てている三人の前に
何故かゴスロリ服を来た桂が現れた


フリルのある黒い傘も違和感無く似合っている





「オメーに言われたかねーんだよヅラ
今度は何のバイトだそれ?」


ヅラではない 桂だ、これも攘夷への
資金活動と変装を兼ねての物だ」







ちなみに桂の後ろには


"護巣露理倶楽部 新装OPEN!"
と描かれた看板を担いだエリザベスもいる





色々ツッコみたいですが今取り込み中なんで…
来た時 黒髪で三つ編みの人が通りませんでしたか?」





訝しげに桂を見ながら 新八が尋ねる





「その者なら ついさっきそこでぶつかって行ったぞ
呼び止めたら何やら急いでいてな」


だあぁ役立たない!どうせならそのまま
呼び止めたままでいてくださいよ!!」


「いやしかし 何やら礼儀正しかったし
本当に急いでいたようでな…」


「新八、銀ちゃん まだ今なら間に合うネ!


「あのクラブでまた問題起こす前に
とっとと捕まえるぞ!」





その言葉と共に駆け出す三人







が、すれ違う直前…桂が銀時へ囁く





「忠告しておこう、この先に出来たあのクラブは
気をつけた方がいいぞ…何やらきな臭いからな」


「…どーいうことだよ ヅラ」


「ヅラではない 桂だ」





お互いその場で足を止めたまま 言葉を交わす





「悪名高い宇宙海賊"春雨"や 高杉の手の者が
出入りしていたと聞いている」


「……こんな時に厄介だなオィ」





「何してるね銀ちゃーん!


「遅いですよ銀さん 早く早くー!」


新八と神楽の呼びかけに 銀時は再び走り出す





「最近、侍や天人を狙った事件が相次いでいる
らしいから気をつけろよー」





口に手を当て 桂が雨音に負けない声量で
向こうへ駆けていく銀時達に忠告した







――――――――――――――――――――――







雨脚が強くなり、すっかりずぶ濡れになった


走ってるうち いつの間にか傘を無くしたようだ





…だが、そんな事はどうでもよかった







私はクラブの前にたどり着くと、裏口を探し
そこから店内へと潜入した





「兄上は…兄上は…何処に…」







店内を探し回るも、先程の場所はおろか


何処にも兄上の姿は見つからない









ここにはいないのか
…しかし、何だ この違和感は?





前に店に入った時には気付かなかったが…


何かが おかしい







「あっ…いたぞ、また あのガキだ!





どうやら私がいる事に感づいたらしく、
店員達がこちらへと近づいてくる





私は従業員用の通路を通り、


目に付いた部屋に駆け込んだ





「あのガキ…何処に行きやがった!?







店員達の足音と怒号が


部屋を通り過ぎるのが聞こえた







入った部屋は物置らしく 雑多に物が置かれている









…やはり、おかしい





事務所などの必要な設備を差し引いても、


明らかに外からの店の面積と
店内の間取りが合わぬ





まるで 別の空間が存在するかのような







「どこにもいない…後はこの部屋だけか!





店員の声が 部屋のドアのすぐ側に聞こえる


私は慌てて奥へと移動し―





っ!?





進んだ先に、床が無かった







――――――――――――――――――――――







「銀さん…僕 さんの苗字、どこかで
聞いた覚えがあったんです」







目的地へと走る最中 新八が前を進む
銀時を見ながら話し掛ける





「やっと思い出せました…たしか
だいぶ昔の新聞に乗ってたんですよ」


「ほぅ まさか下着ドロの記事じゃねーだろーな」


「この状況でそんなもの思い出したって
意味ないでしょうが!」



「大体新聞なんて、端っこの四コマしか見るとこないネ
ケツ拭く紙の方がよっぽど経済的アル」


「お子様は黙ってろ!」





一旦神楽にそう叫び 気を取り直して
新八は言葉を続ける





天人の資産家が殺害された事件があって

同時に、養子に来たお兄さんと妹さんが
失踪したって乗ってました」


「よくある話アル どうせその後お兄さんが
怪盗フンドシ仮面になったとかそーいうオチネ」


「無いから!つーかどう転んでそーなんの!
一々話の腰折んのやめてくんない!?」






神楽に新八がツッコんだと同時に、銀時が足を止める







「間違いねーのか 他人の空似とかじゃなく?」


「はい、苗字が珍しかったから…間違いないと思います」


事件が起きて失踪…オイオイ、ベタ過ぎんだろ
その冗談はよ」





銀時のぼやきに 新八は首を横に振る







「僕たちが探しているのも依頼した人も…
冗談じゃなく、殺人事件の関係者ってことですよ」







雨はまだ 叩きつけるように激しく降り注ぐ








――――――――――――――――――――――
あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:長編も何やらシリアスになって来ました
夢主がかなりの暴走気味です


銀時:話の形態もどっち付かずになってんぞ
何で視点以外も混ざってんの?
混ざり物ですか 遺伝子組み替えですか?


神楽:私遺伝子組み替えより 藁に入った
納豆の方がより好きアル!


狐狗狸:話の形態は展開上仕方な…神楽ちゃん
何で白いご飯茶碗で大盛り持ってるの?


新八:さんもお兄さんも殺人事件の関係者って
この後の展開どうすんですか!?


狐狗狸:あと数年で時効になるしネタバレになるから
まだ詳しく言えないんだって(爆マテ)


銀時:またかよ!ネタバレに〜とか言っときながら
本当は大したネタでもねーんだろ?


神楽:それにここはネタバレの場と言っても
過言じゃないから 思い切り先の展開話して大丈夫ネ


新八:大丈夫なワケあるかあぁ!お前等長編と
あとがきのロゴス崩すつもり満々か!?



桂:それよりオレの出番はあれだけか?
まったく何故オレが女装など…


銀時:本編でも女装してるし 似合ってるから
問題ねーだろーが グダグダ言うなヅラ


桂:ヅラじゃない 桂だ




段々これから謎(ってほどでもないですが)を明らかに
していきます…高杉も出たりして(何)


様 読んでいただきありがとうございました!