暗闇の中に ぼうっと映像が灯る







あれは…幼い私だ





散々殴られ 蹴られ、ボロボロにされて
泣いている私だ








そんな私の頭を 誰かの手が撫でている





、泣かないで







この声は……兄上の声だ


いつもそう言って 泣いている私を慰めてくれた







……それなのに、私は―――









目を覚ますと、私は花に埋もれていた





「ん?ここは…何処だ?あれ?


身を起こして辺りを確認すると 一面の花畑


確か私は 先程までかぶき町にいた筈だが…





何が起こったのか皆目見当がつかない、というか


側にいた筈の、銀時殿新八殿神楽殿
妙殿も姿が見えない……





「みんな何処へ消えたのだ?」







暫く考えたが分からないので 深く考えない事にした





とりあえず 私は自分と周囲の状況を確認する











第四訓 夢って案外、現実とのシンクロ率高くね?











「私の名は 、兄上を探す為に
仕事仲間の情報を頼りに かぶき町にやって来た」





身の回りの事を思い出しつつ、呟きながら花畑を歩く







「父上は幼い頃他界…その後 兄上とも生き別れ
裏稼業に手を染めた





脳裏にふと、三人で暮らしていた頃の
思い出が鮮やかに蘇る







「兄上に…会わなきゃいけない、会いたい
会いたい 兄上、兄上…」







呟きながら花畑を歩くと 大きな川が向こうにあり
人影らしきものが見えた





岸辺まで行くと、対岸の辺りに佇んでいるのは…





「…父上?」







幼い頃に死んだはずの父上が 何故か対岸から
私を手招きしている





おいで、





私は川の淵まで歩み寄る


父上が私に笑いかけている


懐かしさの余り そのまま私は
川へと足を踏み入れようと―







ダメ





誰かの声が聞こえて 足を止める


周りを見るけれど、他には誰もいない





行っちゃダメだ





再び聞こえる声


兄上に似ているようで 違う声







戻って来い…







誰の声なんだ?





……でも、戻らなければ


そうだ戻らなければ





私は 兄上に会わなきゃいけないんだ







足を踏み入れるのを留まった その途端


川から何故かしわがれた老女
群れをなして現れた





「う…うわっ!!」





思わず後退ると 老女が一斉に飛びかかる


―――気持ち悪かったので、脊椎反射で
素早く槍を組み立てて反撃した









それから何刻ほど戦ったのかは分からない






妙にハッキリとした手ごたえはするのだが
老女の数は減る所か余計に増えていく


というか 私の眼が確かなら、老女の手に
とかバズーカが見えるのだが…





どこから出たんだ その見た目にそぐわぬ武器は





「何だ ここは、地獄に通ずる穴でもあるのか!?







そう叫んだ時 何故か頭に鈍い衝撃を受け―





私の意識は闇に消えた













再び目を開けると 銀時殿の顔が見えた





「…銀時殿?いったいどうなされた?」


「どうなされたもあるかコルァ 一体
どーしてくれんだこの落とし前」





銀時殿に襟首を掴まれたまま 私は周囲に
視線を巡らせてみると…







そこかしこ抉れる街並み ボロボロになった
武装警察―確か『真撰組』の人間達





何故かバズーカと刀が転がり、一緒に
新八殿も倒れている





よく見れば銀時殿もボロボロ







「一体どうなったんだ 大怪獣でも通ったのか?」


大怪獣はテメェだアァァ!

何?無意識で暴れてたのアレ!?ともかく
槍で暴れるのは夜だけにしろバカヤロォォ!!


「んな事言ってる場合かぁあ!!」





新八殿並の 鋭いツッコミが何処かから飛ぶ







視界とともにぼやける頭を必死で動かす





「……何が一体どうなっている
誰か教えていただけないだろうか?」


ちゃんが私の卵焼きを食べた後
急に倒れたのよ?


「起きたら顔が青くなって 寝言呟いてたら
突然槍を出して暴れ始めたネ」





妙殿の言葉に 神楽殿の声がそう続ける





「新八や銀ちゃんや 私も止めようとしたけど
止められなかったアルよ」


「嘘こけ、オメーは被害拡大してたじゃねーか」


「んだと?お前もそのバズーカで暴れてたロ!







響いた第三者の声に神楽殿が反応し、そのまま
後ろの方でがやがや騒がしくなる





「そうなのか…しかし、まだ頭が霞みがかっている
ような感じがする」


その時、すぐ横手からだみ声が上がった





「きっとこの卵焼きに 何か毒物が
隠されていたに違いない、ちょっと参考までに毒味を」





そこには 重箱を抱えて卵焼きを口に入れようと
する、真撰組の人間らしき精悍な顔の者がいた


…あれ?この者どこかで見たような


しかも何だか父上に似た雰囲気がするぞこの御仁





そう思った刹那、





「何勝手に卵焼き食ってんだゴリラァァ!!」


妙殿が微笑を一変させ その人に殴りかかった





「…止めなくていいのかアレは」


「あーあれ?アレはいいんだよ、
ストーカーゴリラだから」







馬乗りで御仁を殴る、阿修羅のような
妙殿を見つめつつ 私は思わず呟いた





あ、ようやく視力が戻ってきたみたいだ…





「何だ よく見れば益々父上に
似ているではないか」


「え お前の父ちゃんゴリラなの!?」


「ゴリラではなく人間だ…ってアレは
ゴリラなのか?」


アレも人間だ!一応オレらの局長だぞコラ
つーかさっきからこっち無視してんじゃねぇよ!!」







横手から響く柄の悪い低い声に 首を向けると





真撰組の一員らしき、瞳孔の開いた男


…この者も見覚えが…?いやそれより





「銀時殿 この者瞳孔開いているぞ、早く病院へ
連れて行った方が」


「無駄だ無駄だ もう手遅れだよ」


テメェら斬るぞ、つかそこの槍ムスメ」





言いながら 瞳孔の男がこちらの眼前まで近づく





槍で市内を暴れまわる奴がいるって
通報受けたんだがよ…アレだけ散々暴れといて
意識が無かったで済ます気か?


「済ますも何も 事実だ


「顔色一つ変えずに言いきるか、ともかく
話は屯所で聞こう…連れてくぞ」





そう言われ 瞳孔の男に後ろの襟を掴まれ


間髪いれず再び、銀時殿に襟前を掴まれた





「おーい、ちょっと 意識無かったって言ってんだろ?
こいつにはよく言って聞かすから、勘弁しろよ」


「できるか、こんだけ暴れた奴を
野放しにしてたらこっちの面子に関わるんだよ」


「オレだって生活に関わるんだよ、依頼人が
お縄になったらマズいんだよ色々と」


「こっちも江戸の安全に関わるんだよ、最近
物騒だからヤバイ芽は手遅れになる前に摘まんとな」


「手遅れなのはオメーの眼と味覚だマヨネーズバカが」


「斬るぞコラ マヨ舐めんな!







仲が悪いのか 銀時殿と瞳孔の男が
火花を散らして争っている…が





どうでもいいけど、襟元から手を放して欲しい


苦しいんだが 二人とも 本当に酸欠寸前なのだが







「土方さん落ち着いてくだせぇ、手遅れ所か
もう末期でしょう?だからオレが一思いに」


「何バズーカ向けてんだ沖田ァァ!
末期なのはテメーの思考だ!!」






新たにバズーカ持った茶髪の一員が現れ、
瞳孔男はその茶髪に向かって刀を構えた







勢いで両者の手が離れたので、深呼吸をする


……はぁ し、死ぬかと思った





「…何なんだこの瞳孔の男は、危うくこちらが
末期になる所だ 本当に警察か?


「あー、この人はちょいとアレでねぇ
で あんた名前は?」


「普通は聞く方が先に名乗るのが礼儀だ」


「言うじゃねーか けどまーチャイナ娘と違って
気が合いそうだ、直感だけどねぃ」







よくよく見ると、この茶髪の者も見覚えがあった
確かこの三人は…





「んだコラ 依頼人とシケこもうと思って
口説いてんじゃねーよ、エロガキが





思い出そうとしてるその矢先、神楽殿の台詞を
口火に 二人の武闘喧嘩合戦が勃発した







テメーら何やってんだ!ったくガキは
これだから…」


「土方さん!大変です!!


「んだよ山崎」





やたらと地味な密偵(だろう男)が、瞳孔の男に
何やら慌てた様子で報告をする





「ここ数日見張ってた例の売人、ついに
動き出しました!!」


「…何だと?ちっ 逃がすと厄介だな」





瞳孔の男がタバコに火をつけつつ吐き捨てる







「別の件があるから もうテメーらには
構ってられねぇ、そこの槍ムスメ 名前は?」


「先程も言ったように 聞く方が先に
名乗るのが礼儀「ここで斬られてぇかアン?





…礼儀を説いたこちらに向かって、刀を突きつけるとは


仕事ならば 息の根を止めてやれるのに





「… 、これで文句は無いでござろう
真撰組福隊長 土方十四郎殿


…?最近どっかで耳にしたような…
まぁいい、後で屯所に出向くように」





端的にそれだけ言うと、土方…いや瞳孔殿







「総悟、近藤さん、いつまで遊んでんだ 行くぞ!





茶髪と御仁―沖田総悟殿近藤勲殿を一括し、
周囲の隊員を引き連れて去った








――――――――――――――――――――――
あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:とりあえず生還&
真撰組メンバー顔見せ何とか書けましたが…

本当は兄貴の手がかり書きたかった


新八:何で僕倒れてんですか!いやそれよりも姉上!
あの重箱の卵焼き幾つ入ってるんですか!?


妙:あら 私みんなの分作ったから、全部で
三人分入ってるのよ 卵焼き


銀時:可哀想な卵はどーでもいいとして、オレ達が
止めんのドンだけ苦労したかわかんのかコラァ


神楽:そーヨ ホント大変だったアルよ
わかってんのかコラァ この狐ぇ


狐狗狸:物語が視点で進むから、
展開上 現実の方は当事者じゃないと分かんないよ


銀時:あの後 何かしらねーけどブツブツ呟いててな
新八と二人で声かけたんだよ


新八:かなり目がイっててやばそうでしたし、
怖かったんで「戻ってこい」って


神楽:そしたらイキナリ槍を出して暴れ始めたアル!
私必死で 止めよとしたヨ


沖田:だから嘘つくなチャイナ娘、オレ達が来た時
一緒に暴れてたじゃねぇーか


土方:テメェはそのどさくさに紛れて、何発か
オレにバズーカ撃ちやがったろ?総悟


妙:で、そのとばっちりが新ちゃんに当たったのよ


狐狗狸:成る程…そんな阿鼻叫喚の地獄絵図
現実でも展開されてたのか(苦笑)


近藤:あの てゆうかオレ、毎回お妙さんに
殴られるシーンしか出番ないんですけど…


狐狗狸:原作でもそんな感じだからしょうがないでしょ
でも、嫌いじゃないから機会あったら出番増やすよ




とりあえず顔見せや複線盛り込みつつ、次回は
ちゃんと話展開させます(汗)


様 読んでいただきありがとうございました!