「んじゃあとりあえず 兄貴の情報探しだな
おいアンタ、兄貴の写真とかね―の?」
銀時殿の問いかけに 私は首を横に振った
「そんなものあるわけが無かろう、写真に映ると
魂を取られると聞いているからな」
「いつの時代の話ですかさん!?」
「大丈夫ネ、魂取られるのは真ん中に居る奴だけアル」
「神楽ちゃんは黙ってて!!というより
それでどうやってお兄さんを探せと!!?」
「案ずるな 大分月日はたっているが、私なら
兄上の顔がわかる」
しかし自信をもって言った
私の言葉は 信用されなかった
「いや、胸張って言われても年月立ってたら
分からないから!砂漠で砂金を見つける位
難易度跳ね上がるから!!」
「砂漠に砂金があるなら、まとめて
振るいにかければいいだけアル」
「おお、成る程 冴えているな神楽殿」
「本題から話ずらすなああぁ!
アンタ等の頭の中豆腐ですかぁ!!」
豆腐とは失礼な ちゃんと脳みそが詰まっているぞ
そう言い返す前に、銀時殿が声を張り上げた
「あーもうウルセェよ黙れオメーら!
要するにアレだ、直接会わせに行きゃいいだけだろ?」
本当に顔わかんだろーな?と銀時殿が聞き返す
…無論私には自信があった
どんなに月日が経とうとも、
どれだけ姿形が変わろうとも、兄上は兄上だ
「勿論だとも 兄上は例え人込みにまぎれようとも
即座に長蛇の列が出来るほど麗しいから」
「どんな兄貴だよ ちゃんとバベルの塔ついてんのか?」
「ちょっ 銀さん
女性の前でそのネタ止めましょうよ!!」
「でも新八にも生えてるアル バベルのと」
「だから言うなあぁ!
流石にこのネタヤバイって!!」
「…なあ 一体皆は何の事を言っているのだ?」
『え…ちょっとひょっとして マジボケ?』
…何故三人ともそんな不思議そうな顔をするのだ?
第三訓 知識は幼い頃の刷り込みが大事
「ねぇ、名前は随分昔に聞いた事はあるけどさ
そこの娘しか顔が分からない以上 何とも言えないねぇ」
先程の老女…もとい、かぶき町四天王のお登勢殿は
キセルを咥えつつそう答えれば
「ダイタイ昔ノ記憶ダケデ人探ソウナンテ
甘ェンダヨオ前等ハ アァンコノアホ娘ガ」
お登勢殿の隣にいた キャサリンとか言う猫耳の天人が
私の頭を容赦なく叩く
「…お主 死ぬ覚悟はあるようだな?」
「殺っちまうアル!私も手伝うネ!!」
「ちょっとちょっとさん何槍出してんの!?
つーか神楽ちゃん 字が危ない字が!!」
「ったく 役にたたねぇババアどもだな
おらテメーら、次行くぞ次」
そう言いながら玄関口に向かう銀時殿の背に
『オメェが言うな
甲斐性無しがあぁぁ!!』
お登勢殿と猫耳年増の同時飛び蹴りが突き刺さった
「銀さあぁぁん!!」
「銀ちゃああぁぁん!!」
「銀時殿ーーーーー!?」
見事に外の地面にめり込んだ銀時殿の側に
私達は急いで駆け寄った
「…ここまで埋まると まるで巨大えいりあんに
踏み潰されたみたいな状態だな」
「言ってる場合ですかさん!!
あの、大丈夫ですか銀さん?」
新八殿が恐る恐る声をかけると 銀時殿が
勢いよくガバッと地面から身を発掘する
「ゲホッうえ…本気で地獄を見たぞ今っ
なあコレ本当にババアの脚力!?」
「ババアなめんじゃないよおぉ!」
「オ登勢サン イツマデモコンナビンボ臭イヤツラニ
構ッテナイデ、仕事シマショ」
猫耳年増がそう言いながら
お登勢殿と共に店の中に戻る
「うるさいアルこの泥臭い化け猫妖怪!いつか
妖怪博物館に剥製展示してやるアル!!」
「ないないそんな変な建造物存在しないから!
あれ腐っても天人!
むしろ神楽ちゃんがヤバイって!!」
「そうだぞ神楽殿 天人だったら天人博物館だ」
「そんなもん造ったら江戸が戦場になるわぁ!
むしろもうお前らの頭を博物館に展示して来い!!」
「つーかよぉ お前らもうちょっとオレの心配して
くれてもいんじゃね?何 新手の放置プレイ?」
段々遠慮なくツッコミを入れてくる新八殿へ
私と神楽殿が今反撃しようとした所に
水を差す銀時殿
「ウルサイ黙れ
お前なんか一生めり込んでればいいネ」
「そうとも、部外者は口出ししないでもらおうか」
「お前ら何同調しちゃってんの!?おいコラ
この話の主人公はオレだぞ!!?」
そんな些細なことはこの際どうでもいい
今すべき事は 新八殿に謝罪させて
兄上を探すことだ
先陣を切って、私が口を開きかけた その時だった
「あら皆 丁度いい所に」
私達の目の前に 重箱を持って微笑む女人が現れ
同時に、万事屋三人の空気が変わる
皆一様に彼女の重箱に視線を向け―怯えている
「あ、姉上…姉上こそどうしてここに?」
しばしの沈黙を破り 新八殿が恐る恐るたずねる
先程の威勢はどこへやら かなり情けない声色だ
「ちょっと通りかかったの 所でその人はだあれ?」
「普通 聞かれた方がなムグ」
言葉半ばで銀時殿が私の口を抑えた
振り解こうともがくが 意外に力が強くてびくともしない
「姉御 この人、 っていうネ
私達のお兄さん探してるアルよ」
神楽殿が早口で私の事を捲くし立て
「あらそうなの〜私は志村 妙、新八の姉よ
よろしくね ちゃん」
妙殿が私に微笑んで挨拶をしたので 私は口を
塞がれながらも何とか首を縦に振る
銀時殿の手がようやく私から離れたので
私は即座に文句を言った
「イキナリ人の口を抑えるなんて無礼ですぞ」
「お前の方が無礼だろうがあぁ!
何 お前?何時も初対面はあんなんなのか!?」
「当然だ 私の家訓はそうだった」
「どんな家訓ですかあぁ!あんた本当に
色々おかしいよ、絶対知識間違って
刷り込まれてるでしょ!!?」
……確かに私は世間に疎い方ではあるが
そんなに私の知っている礼儀や言動は
世間からすれば異質に見えるのだろうか?
「世の中と言うのは良く分からんな」
腕を組みながら悩んでいると 妙殿がクスクスと笑った
「あらあら ちゃんは世間知らずなのね
男と女が最も分からない事だと知らなかったりして」
「そうみたいネ姉御 きっと、世間の薄汚さも
ろくに知らない青二才ネ」
『お前が言うな 脳みそ豆腐娘えぇぇ!!』
いつの間にか妙殿の横で酢昆布を
かじっている神楽殿に
二人が見事なタイミングでツッコミを入れた
はじめに妙殿に会った時の空気は 完全に失せていた
あの怯え様は一体何だったのだろうか?
と首を捻っていると
「所で 私、皆に料理を作ってきたのよ?」
妙殿がそう言って重箱を掲げた途端
空気がまたもや凍りついた
どうやら…あの重箱の中身が原因らしい
「妙殿 その重箱の中には何が?」
「私の手料理が入っているのよ 良かったら
お近づきの印にどうぞ、ちゃん」
笑顔で私に重箱が差し出される
手料理…一体何が入っているのだろうか?
三人が徐々に私から遠ざかるのを感じつつ、
私は重箱を床に置き ふたを開けた
中に入っていたのは………何だこれは?
「……初めて見る料理だ、妙殿これは何だろうか?」
「私、卵焼きしか作れないの
でも今日のは自信作よ?」
「…私が昔見た卵焼きは
もう少しもっさりしていたが?」
「そうなの?でもウチではこれが通常よ」
ニコニコ微笑む妙殿を見て、もう一度"卵焼き"を見る
…よく見れば見るほど 妖気が漂ってる気が
しないでもないが
あれほど満面の笑みで言うのなら、新八殿の家では
これが"卵焼き"なのかもしれない…多分
料理も家庭によって違うと聞いた事があるし、
きっとこの見た目が凄すぎて
三人は怯えていたのだろう
「成る程 やはり家によって違うのか」
「いやいやいや!納得しないで!!
明らかにそれかわいそうな卵だから!!」
「冷めないうちに召し上がれ♪」
「 早まっちゃダメアルよ!」
「マジやめとけって、そんなもん
えいりあんでさえ踏み潰さずまたぐぞ!!」
銀時殿が直後に妙殿に殴られているのを尻目に
「…いただきます」
私はやけに黒っぽい卵焼きを箸でつまむと
一口で押し込んで
急に視界が暗くなり 意識が途切れた
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あとがき(というか楽屋裏)
狐狗狸:銀魂夢第三話って はい、まごう事無く
完全にギャグよりだよこのヤロー
銀時:逆切れかよオイィ!どうすんだよこの後よぉ!
どっかのJ○線事故並に脱線してんじゃねーかあぁ!!
新八:そのネタ古いです銀さん!それよりさん
どんだけ間違った知識叩き込まれてんですか!
狐狗狸:うーん 主に父親が教えちゃったからなー
あ、ちなみにお兄さんはまともですよ一応(笑)
神楽:バベルの塔は最近のジャンプのネタバレアル
これ完璧パクリね!それに私豆腐違うネ!!
狐狗狸:いやだってアレかなりキてたし…
スイマセンでした(謝)
はい 完璧ギャグに向かって脱線中…どころか
下手すると死亡フラグ立ったかも(やな死に様!)
様 読んでいただきありがとうございました!