気がつけば、一人 暗闇にいた







以前 三途の川に来た時と同じようで
違う雰囲気の場所





何もない 暗闇







「ここは…どこなんだ?」







誰かが、呼んだ気がした















ああ、あれは父上の声だ





私はふらふらと声の聞こえる方へ向かう









すると別の方からも声が聞こえた










さん


こっちだぞ







この声は…兄上と似ているようで
違っていたあの声達だ







私を三途の川から元の世界へと導いた


あの時は誰だか分からなかった声の主





今なら、なんとなく分かる気がする









 おいで





すぐ側に聞こえる父上の声を振り切って
私は、声達の方へと駆けた









暗闇だけだったこの場所に、







唐突に光が生まれて―















目が覚めると 白い天井が見えた





「ここは…」


 やっと目が覚めたんだね…よかった」







声のほうに目を向けると 寝台の上で
兄上が微笑んでいた





兄上!ご無事だったのですねっ!!」


反射的に叫んで起き上がろうとしたら





銀時殿に頭を拳骨で殴られた











第十四訓 ガキは包帯や三角巾に憧れるけど
実際そんないいもんじゃない












病人は寝てやがれ」


「銀さん ちょっと、それやり過ぎです
相手は病人なんですから」


「そうアル の頭が余計悪くなるネ」


神楽ちゃんは言い過ぎ、病人に
ムチ打つ気かあんたら」





頭を擦りつつ 私は自分の体が
包帯で覆われていることに気がつく


私だけではなく、兄上もそう





良く見れば見舞いにきた銀時殿や
新八殿や神楽殿も


包帯などを巻き、あちこちに怪我を…





「って神楽あぁぁ 包帯で遊んでんじゃねーぞ!」


「包帯って何かカッケーアル!」


「ちょっ何で僕らまで巻き込むの!
逆に痛いからコレ!!





…そちらは神楽殿のお巫戯けらしい







ここが病院だというのは理解できたが
何故ここにいるのかが皆目分からない





 まだ起き上がっちゃダメだよ
僕より怪我が酷いんだから」







兄上の声で ようやく私は何が
起こっていたのかを思い出した









そうだ、私はあの店の地下で餓鬼椿と









全てを思い出し、私は先ず初めに
謝罪の言葉を口にした







「本当にすまなかった 私のせいで
皆をこんな大変な目にあわせてしまった」



…」







本来なら この場で土下座をしたいくらい
詫びの気持ちで一杯なのだが





怪我をしている身のため それも出来ない







しかし、私の行動が結果として皆を危ない目に
合わせてしまったのは事実





どのような咎めをも 受けなくては







「ったく、こちとらいい迷惑だったぜ
怪我人二人抱えて地下脱出だからな」


「ガンモドキのせいであの基地壊れたネ
お店もガレキの山アル」


「真撰組の人達戻ってきたら
どうしようかと思いましたよホント」







そう言った三人の言葉は、咎めるような
強い口調ではなく 至って軽いものだった





三人もてっきり 巻き込んだ私を恨んでいる


私や私の過去を責め立てる言葉
来る、と思っていただけに





そう言う風に言われるのは予想外で







「…私を恨んではいないのか?」





問いかければ 三人が笑いながら





「確かに巻き込まれたののせいアル
でも恨んでたら見舞いなんて来ないネ


「それに 僕らの依頼は
さんとさんを会わせる事ですし」


「オレ達ゃ依頼を終えて見舞いに来ただけ
お前ら兄妹の問題も興味ねーんだよ」





それぞれが言葉を引き継いで、


私がそれに返答をする間を与えず
三人は病室を出ようと移動していた





「んじゃ も起きたし、後は
二人に任せてオレらは退散するか」


「その前にスーパー寄って酢昆布買うアル!


病院内であんまり騒がない!
…それじゃあさん、さん お大事に」





止める理由も隙もなく





三人は順繰りに病室の入り口を潜り抜けていった












「やっと静かになったよ、病院なのに
遠慮なくうるさい人達だったね」





ふぅ、と兄上がため息をつく





「でもあの人達のおかげで僕等は
こうして生きてるんだし」






先程の三人の言葉が 頭の中でちらつく







お前ら兄妹の問題に





…そうだ、これは私達の 私の問題


私が解決しなくては







恐らく、このために三人は
私と兄上を二人きりにしてくれたのだ









「本当に あの人達には感謝しなきゃ」







片時も忘れたことはなかった







夢に見るほど、こうして二人で会える日を
ずっとずっと願っていた









言わなくては、今こそ





謝罪の言葉を









私は意を決して口を開いた









「兄上…本当にごめんなさい


「…?」






驚く兄上の目を 真っ直ぐに見つめる





「あの時 私が逃げ出したせいで
兄上に迷惑をかけてしまった


「…いいんだよ、過ぎた事は」






兄上はそう言うが、私は自分が許せない





「今回だって 私のせいで、もう少しで
兄上が死んでしまう所だった」







今でも、あの時の兄上の姿
頭に焼き付いて離れない







「何も変わっていない…私は兄上に、皆に
迷惑をかけてばかりの疫病神だ」












もし、兄上に許されずに消えろと言われたなら


私は何も言わずに そうするだろう





それだけの事を…してしまったのだから









少しの間の沈黙が 長く感じた









「どうして悪い方にばかり考えるの?」







無意識のうちに俯いていたらしく、
近くに聞こえた兄上の声に私は顔を上げた





寝台から起き上がった兄上が


私のすぐ目の前にいた





兄上の手が ゆっくりと私の頬に伸びる







「僕は生きているのは、君が助けてくれた
お陰でもあるんだよ?」





頬を撫でる手は、浮かべた微笑は
昔と何も変わらなくて







「あの時も僕がしっかりしていれば君を守れたし
謝りたいのは 僕の方だよ」





そのまま優しく頭を撫でる仕草も


泣いていた時に慰めてくれたものと
全く変わらなくて





、ずっと一人にして ごめんね」


「…兄上!」





堰を切ったように、私は泣いた







「ほら 、泣かないで
せっかくこうして無事に会えたんだから」









優しい兄上の声も撫でる手でも、
私の涙は止まりそうになかった







「退院したら 一緒に暮らそう、









私は涙を流しながら ただ、頷いた















「…ようやく、落ち着いたみたいだね」


「はい兄上、ご迷惑おかけしました」







泣いて 泣いて 泣き続けて





本当に久方ぶりにずっと泣いて
ようやく、涙が収まった









軽やかに戸を叩く音がして、兄上が
慌てて寝台へと戻る





さーん、診察のお時間でーす
あら、さん 起きたのね」






明るい声と共に現れた看護士殿が
私と兄上をてきぱきと診察する





「あ、あの 看護士殿」


「何かしら?さん」





手を止めない看護士殿に、私は質問する





私達の病室に来た三人
もう帰ってしまわれたのだろうか?」







もしも まだ三人が病院内にいるのなら





今から会って、話がしたい
唐突ながらそう思ったからだ







「ああ、あのお見舞いの三人?
まだいるみたいよ 正直早く帰って欲しいわ」





困ったようにため息をつきつつ、


診察を終えて看護士殿は
次の患者の部屋へと向かった









彼らが まだここにいる…!







「兄上、ちょっと 行ってきます
ここで待っていてくだされ」





私は寝台から起き上がって 病室を出た







「えっ …!」





兄上を病室へと残して








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:ようやくあと一話で この捏造長編も
終わりそうです 無事に


銀時:どうせならこの一話で終わらせろよ
こんなくだらねーでっち上げ話はよぉ


新八:あんたら折角この話がいい感じに
盛り上がってんのに ここで盛り下げてどうすんの!?


神楽:てゆか また死にかけてるアル


狐狗狸:しょうがないじゃん そう言う展開だし


新八:しょうがなくないだろ!何回死亡フラグ
立てる気なんですか!?


銀時:しかしあれだな、の奴 全編通して
筋金入りのブラコンだな


狐狗狸:確かに、悪夢とか思い出とか一日たりとも
欠かさず兄貴のこと考えてたもんね


神楽:新八以上のブラコンアルな 殆ど病気アル


新八:ちょっと!
さんと比べないでください!!




ようやく次回でこの話も最後です(やっとかよ)


様 読んでいただきありがとうございました!