――いつだって 忘れた事なんか無かった





あの日の事は、今でもハッキリと覚えている









主に槍で斬りつけていた





僕を助けようとしただけなのに、
恐怖に飲まれた







「やめるんだ !」







僕の声で我に返り 恐怖で逃げ出してしまった









――僕のせいだ





僕がもっとに気をかけていれば あの子は
ボロボロになりながら一人で泣く事はなかったのに


僕がしっかりしていれば 田足家の人間から
を護れたのに







僕が、もっと強かったら





のその両手を
血に染めさせはしなかったのに










背中をずたずたにされた主は 微かに息をしてた


か細い恨みの言葉が 耳に届く






「…許さん ワシはお前等兄妹を絶対に許さん
あの小汚いガキも!お前も!揃って磔にしてくれる!!








そんな事は させない





僕は 近くにあったドスを、手にとった









の罪も全て 僕が引き受けよう


あの子だけでも、罪を逃れれるよう





――それが、僕の犯した罪への罰








僕は そのまま主の背にドスを振りかぶった


確実に息の根を止める為に、一撃で心臓を狙って









主の断末魔が聞こえ 息絶えたのを確認すると
僕は屋敷から逃げ出した











第十訓 時間が無い時に限って雑誌を読んでしまう











「……僕は」





先程の銀髪の人の声が 頭の中でリフレインする







"テメーとを会わせんのが、仕事でね
その後は本人達でケリをつけろよ"








「………





ザッ





その時、人の気配がして顔を上げると


包帯を右目から頭にかけて巻いた男がいた







―――――――――――――――――――――――







店に突入した三人は、見事にもぬけの殻となった
店内に佇んでいた





「真選組の人が 中に何人か残ってるかもと
思ったんですが…いませんね」







店のあちこちには 何やら鑑識の後があり


なおかつ少し荒れている様子であった






「勢い良く入ったのはいいけど
どうしたらいいんですかね、銀さ…」


新八が振り返った時





「よーし 今ならきっと売上金とか金目のもんが
盗み放題だぜ!」





銀時は喜び勇んで店内を漁っていた







力が抜けて 思わずずっこけてから
新八は気を取り直して叫んだ





「火事場泥棒してる場合じゃないでしょ!」


「銀ちゃーん この店炊飯器がないネ」


「神楽ちゃん、ちょっと何食べてんの!!?





神楽が冷蔵庫を開け 何やら中の食料を
租借していたりする





「腹が減っては戦が出来ないって言うアル」


「だからって勝手に漁って食べちゃダメだって!」


「うるさいネ あたいはここ数日のビンボ暮らし
腹減ってんだよ!成長期なんだよ!!


「そうだそうだ もっと言ってやれ神楽」





二人の方に目もくれず、勝手に物色
続ける銀時に


「原因であるあんたが言うな!!」





そう一喝してから蹴りを食らわし、


神楽の手から 食べかけのチョコレートを奪った





二人とも!
火事場泥棒が目的じゃないでしょうが!!」


「へいへい わかったよ八っつあん」


「ほんの軽いジョークね 先ずは給湯室から
怪しい物が無いか調べるアル!」


「あと 更衣室のロッカー
怪しい下着とかは、銀さんに任せなさい」







二人のその様子に 新八は今更ながら
先が思いやられた













そして 三人はしらみつぶしに







やや脱線しながらも店を隅々まで調べ





何も見つからず 最初の場所に再び戻ってきた









「この場所が最後か…特に怪しいものは
見つかりませんね」







床や壁を隈なく調べながら


ソファの一つをふと見やって





「って 何読んでんですかアンタ!!





新八が見たのは そこで思い切りくつろいで
ジャンプ読みふける銀時だった





「だって探すとこねーしよ、それよりこれの次の号どこ?
パンパースの続きが気になるんだけど」


何ジャンプ読んでんだよ!!しかもそれ
先週のじゃん、事務所にあったでしょ!?」


「いやそーだけど、オレぁジャンプを愛してるから
何べんでも読み返してーわけよ」


「何も今じゃなくてもいいだろ!」


「アタァッ!!」





ガツン、という音と共に叫び声をあげた
神楽に 二人は視線を向けた







どうやらヒザのすねをぶつけたらしく、


涙を浮かべて神楽は 当たった場所を抑えていたが





「痛いじゃねーか邪魔なんだヨ この
デカテーブルがあぁぁぁ!!」








と、勢い良くテーブルを手近な壁にシュートした





壁にテーブルが叩きつけられ、物凄い音が響く





オイ!壁壊してどうすんだ!!」


「仕方ないアル 形あるものいずれは皆蹴り壊すネ」


そんなコトワザねーよ!どうするのさ
真選組の人たちが戻ってきたら!!」







テーブルは粉々に砕け散り
壁には 大きめのヒビが入って


そのヒビからガラガラと崩れ落ちた





「「「あ」」」







崩れ落ちた壁の向こうに見えたのは
外でも店の一室でもなく





地下への階段が続く暗闇だった












壁の向こうに隠し階段って…ベタ過ぎじゃね?」


「何でこんなの気付かないアルか新八コラァ


間髪いれず僕のせい!?神楽ちゃんだって
壁ゴンゴン叩いて調べてたでしょ!!?」







会話を繰り広げながら三人が 階段を下り切ると





白い機械的な壁が目立つ通路に出た





「何か それっぽい感じの、これまた
ベタな場所だなオィ」


「ここに さんが…?」


ー!何処アルかー!
生きてるなら返事するネぇぇぇぇ!






神楽が口に手を当てて大声張り上げながら
通路の先にスタスタ進み始めた





「おまっ 勝手に歩いていくなっ!
団体行動の規則守れぇぇ!!


ツッコむ所そこじゃねぇぇぇ!
てゆうか神楽ちゃん ちょっと待って!!」





神楽を追いかける形で 二人が後から付いてきて







進んでた通路の先から、


メチャメチャ人相の悪そうな男が現れた





何だお前等は!どっから入っ」


「ホアチャアァァァァ!!」


皆まで言い終えるより先に、神楽の蹴り
男はあっさりと伸びた





「ちょっとおおぉぉぉ!
何フツーに蹴り倒してるの!?」



「急に飛び出してくる奴が悪いネ
 それにそーいう顔はろくな奴いないアル」





二人は 蹴り倒されて伸びた男を見つめる







「てゆうかこの人、人相からして
かなりヤバイ人なんじゃ…」


「しーんぱーちくーん、ヤバそうなのはその
おじさんだけじゃないみたいだよ〜」





男が出てきた通路の先を 角から見ていた
銀時の目は、


似たように人相悪い 大勢の野郎達を捕らえていた






「ほんっと どこまでベタなんだよオィ」







――――――――――――――――――――――






壁を大破して 部屋へと飛来したのは


大きな肉の塊のようなモノだった





気色の悪い色をしていて、あちこちから生えた
触手が 不気味にうねっている







私は そやつに見覚えがあった





あれは 高杉のいた部屋の容器で蠢いていた――









「き…来たっ うううう撃て!殺せ!!





どうやら先に硬直が解けたらしく


先程まで私を攻撃していた連中が、
矛先を変えて そいつに向かって行く







しかし、銃弾が被弾しても 傷口が再生
攻撃の殆どは吸収されているようだ







「やっやっぱり無理だ、逃げろっ!!





一人がそう言って逃げ出そうとした途端







そいつの触手が一つ硬化し、男の身体を刺し貫いた





「う……うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?







男達の怒号と悲鳴が 銃撃と共に沸き起こり





それら全てが、ものの数分で静寂と化した









周囲には血の臭い 人形のように転がる者達





さして珍しくもない筈のそれが、異質に感じるのは
目の前にいる 生物のせいなのか







「ワ、ワガ名ハ 餓鬼椿…」





声と共に、そやつの身体から一抱えほどの
のっぺりとした顔が上部に浮き出る





「ワレハ、破壊スススル 兵器、江戸…」







浮き出た顔の口が 声に合わせて上下する


目のある筈の部位にはただ闇があるばかり





「力ガ足リリナイ……天人、ニニオイ スル」









目のなき顔が 私を睨み付けた気がした





ようやく硬直が解け、私は出口へと走り出す







通常の攻撃が利かず、感情も持たぬ生物兵器に
勝ち目などあるわけがない


ここは逃げた方が―





「ぐっ!?」





足に痛みを感じて 私は床へ転倒した





兵器の硬化した触手右足を貫き、私を
本体まで引きずっていた







「く…この、離せ!







襲いかかる触手を何とか槍で捌きつつ
右足に刺さったままの触手を断ち切ろうともがく





しかし引きずられてるせいもあり


中々断ち切れずにいる







何とか断ち切ったその時には、奴の本体が
目と鼻の先にあった





「エ、サ エサササ





浮かんだ顔が 笑ったように見えた







この足と距離では逃げられない


最悪の光景が 頭をよぎった













!!」









最初の一瞬 聞こえたのは懐かしい声





次の一瞬で私は、生物兵器から
少し離れた場所へ突き飛ばされた







その時 兄上の姿を見た







「あ、兄う」





言葉を交わす間も無く









兄上は餓鬼椿に飲み込まれた











「あ…兄上ぇぇぇぇぇぇぇ!!








――――――――――――――――――――――
あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:何とか今回 話の展開が繋がってきました
この次は三人とが合流します


銀時:てか、何?今回の視点
兄貴→第三者→

なんかのダブルサンドですかこのヤロー


神楽:ダブルサンドですかこのヤロー


新八:まず最初にツッコむのがそこ!?
普通お兄さんが食べられたのとかじゃないですか!!?


銀時:これ、前回のあとがきから引いてるしなネタ


新八:どんだけ〜!!


狐狗狸:最新のネタ出ちゃったよ(笑)


神楽:そういえば、一番最初で定春が
攻撃を止めたアルな どうしてネ?


狐狗狸:君もどんだけ古いネタ引っ張ってきたの
まーアレは "君に似てた"からだと思う


神楽:私に?


狐狗狸:半分とはいえ天人だし、戦闘力あるし


銀時:つまり化物同士ってことだよな うん


新八:アンタに言われたくないわ




次の話で 色々とトンでもない展開に(爆)


様 読んでいただきありがとうございました!