かぶき町のスナック「お登勢」の二階に
どんな仕事も引き受ける万事屋があり、


そこには凄腕の侍がいる





その噂を頼りに 私は万事屋の入り口に立った







…ここなら、私の探し人を見つけてくれるだろうか





私のせいで罪を背負い 傷つけてしまったあの人を









「頼もう」





意を決して 玄関を開けると





「ん 何だ、見てんじゃねーよこのヤロー」


大きな白い犬にかじられ 頭から流血する銀髪の男
目の前にいた





思わず玄関の戸を閉め 目をこする








第一訓 名前は聞く方から名乗れなんていったの誰だ








「…最近仕事が多いから 幻覚でも見たのか?」





とりあえず深呼吸をし、もう一度戸を開ける


やっぱり見間違いでも幻覚でもなく犬と男がいる





「いきなり戸を閉めるってどー言う事だオイ
何 新手の嫌がらせですか?





男は流血したまま 平然と声をかける







「……玄関先で犬にかじられて相手を出迎えるとは
随分代わった礼儀だ 痛くないのか?」





「んな礼儀があるかあぁぁ!
おい小娘、嫌がらせのつもりならビタ一文も
振る袖もねぇってババアに言っとけ!!」






嫌がらせ?ババア? 一体何の事だ?





「何の事だ 説明してくれ」


「とぼけても無駄だこのヤロー!おい 新八、神楽!
この地上げ屋もどき追い出せ!!









男が後ろを向いて怒鳴ると すぐさま
チャイナ風の少女とメガネの青年が出てきた





「分かったアル銀ちゃん 定春、
遠慮なく喰らいつくヨロシ!



「ちょっ ちょっと待った神楽ちゃん!!





メガネの声を無視し "神楽"と呼ばれた少女が叫ぶ





犬が男を放し 私を睨んで飛び掛ろうとし


私は咄嗟に、背中に隠した槍に手を伸ばそうと身構えた







その途端 犬は何故か私を襲うのを止めた







「あれ 定春?何で止めるアルか?


少女が犬をけしかけるも 犬はまったく動こうとしない





私は構えを説いて 口を開く


「誤解があるようだが…私はただ単に
万事屋へ依頼しに参っただけだ」





「え、ババア関係ねーの?


「じゃあ あなたひょっとして…」


お客さんアルか?本当の?」





「ああ そのつもりだが」





『マジでかあああぁぁ!!』


三人の絶叫が 万事屋に木霊した











「スイマセンお客さん お恥ずかしながら最近万事屋に
仕事がないもので、ここの家賃が溜まってまして…」





苦笑しながら "新八"と呼ばれた青年が
私の前に お茶…いや、お湯を出す





「それで、下の大家さんがいい加減痺れを切らして
僕らを追い出そうとしてたのでピリピリしてたんです」





成る程な と納得しながら、私はお湯を一口





「大変だな 仕事がないと」


「あに言ってんだ 仕事がねぇって事は
平和な証拠じゃねーか」


「銀さんはもうちょっと
真面目に仕事してくださいよ!」






"銀さん"と呼ばれた男は 自分のデスクに足をかけ
ダルそうにジャンプ読んでいる





…本当にここ 大丈夫なのか?こんな
 死んだ魚の目の男が所長で







「それよりお姉さん何者アルか?
定春が私の命令を無視した事 今までなかったアル」


いつの間にか私の隣にやって来た少女、"神楽"が
不思議そうに訊ねる





「…その、定春という犬には常時
あの男を噛む様しつけたのか?」


「ああ あれは定春が好きでやってるアル」


「おい神楽 仕事の依頼聞いてる時ぐれーこの犬止めろ
で、お前さんの名前は?





"定春"にかじられ再び流血しながらも "銀さん"は言う





「…普通は 聞く方が先に名乗るのが礼儀だ」


「何 礼儀説いてんの!?お前
冒頭で言った事忘れてんだろ!!」






「うるさいアル天パ 私はこのかぶき町の女王 神楽アル
でこっちのダメガネが新八天パが銀ちゃん


誰がダメガネだ!ってか 何勝手な肩書き
つけちゃってんのぉ!?」


「オメッ天パなめんじゃねーぞコラアァ
半端ねーんだぞ!!





何やら今の台詞で "新八"と"銀さん"が色めきだつが
それを無視して"神楽"が名乗りを上げる







神楽殿に 新八殿、銀殿と言うのか…」





「いやじゃなくて
坂田 銀時って言うんですよ この人」


万事屋銀さんてのは、オレの事な
そこんとこヨロシク」





「そうか すまん…私の名は、 だ」





私が名乗ったその途端 新八殿が眉をしかめる





「…どうかしただろうか、新八殿」


え?いや 何でもありませんよさん」





新八殿は慌てて手を振りつつ笑う…そうか、ならいい







「じゃーさんよ、仕事の依頼を
聞こうじゃねーか?」








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:銀魂ドリーム 長編一話です
紛れもなく100パー捏造でお送りしてます(笑)
つか、また名前変換少なくてスイマセン


銀時:おい、何で俺が定春にかじられての前に
出てきてんだよ これ俺に対する嫌がらせか?


狐狗狸:いや あれは単に食事が少なすぎて
定春が空腹に耐えかねてかじってるだけだし


銀時:俺の頭はビスケットじゃねーぞコラアァ!!


神楽:それより何で定春大人しくなったアルか?


新八:ってか お登勢さんに嫌がらせを受けるって時点で
どんだけ家賃溜めてんだあぁぁ!!


狐狗狸:はいはい その辺は次回以降で明らかに〜
(強制終了/謝)




様 読んでいただきありがとうございました!