「部長 ユーマです、ちょっとお話があるので
入ってもいいですか?


「構わん」







恐る恐る扉を開けて 後ろ手に何かを抱えてユーマが入ってくる







「…私は忙しいから 報告は手短にしろ」





丁度、タイザンは報告書をまとめて
退室する所だったらしく 書類を抱えている









しばらく言いよどんでいたが やがて


意を決したようにユーマが後ろ手に
隠していた物をタイザンの目の前に差し出した





「コイツ 道端に捨てられてたんです…!





ユーマの両手には、ダンボールが一つ







中では子猫が一匹


もそもそと不安そうに身体を動かしている










〜「What trouble?」〜










「里親が見つかるまで…部長の所で預かってはもらえませんか?」









恐る恐る問い掛けるユーマに





返って来たのはタイザンの冷たい眼差し







断る そんなヒマも余裕も義理もない
それに、既に犬一匹に手を焼かされている」









ユーマは残念そうな顔で 下を向いてうな垂れる





タイザンはそんな部下の様子に、呆れたように溜息をつきながら







「大体 そんなモノを何故拾ってきた?
余計な同情は互いの為にならん、元の場所に捨てて来い」


「っ…でも…!





ユーマがその言葉に困惑していると







突如 中にいた子猫がダンボールを飛び出して
タイザンの足元へとやってくると、





スリスリと彼の足に頭を擦り付けてきた









「なっ…!?」


「…タイザン部長に懐いてる





驚いたように子猫を眺めながら ユーマが言う







「私は忙しいんだっ、こんなものに構ってる暇はない!
さっさとどこかに連れて行け!!





キツめの口調で 足早に子猫から離れるも


子猫のほうがうれしそうにタイザンに付きまとう





「…何故私に付きまとうんだっ 離れろっ!







常人ならば竦み上がりそうな目で睨んでも


子猫は 怯えもせずニャアと鳴いて
タイザンの足に擦り寄る







流石に子猫を足蹴にするわけにも行かず


タイザンはそのまま立ち往生をせざるを得なくなった





それを好機と見たのか





「タイザン部長、お願いします!
オレ、絶対にコイツの里親見つけますから!!








ユーマが頭を下げて 必死でタイザンに頼み込んできた















「…全く 俺としたことが猫を預かるとはな」





結局、妙に自分に懐いた猫とユーマの説得に負け


タイザンは猫を自室に連れて帰った





ちなみに子猫は現在 大人しく寝ている







『何だかんだ言って やっぱり優しい所もあるじゃないですかぃ』





幽体のオニシバが 嬉しそうに笑いながら
タイザンの顔を覗き込む







「勘違いするな
里親が見つかるまで保護してやっているだけだ」





フン、と鼻を鳴らしてそっぽを向くタイザン





『素直じゃねぇなぁ』


喧しい







クツクツと喉を鳴らすオニシバの様子に タイザンは
益々機嫌を悪くしていく







「本当に何故 俺に懐いたんだあの猫は」





猫は犬が苦手だと聞いたはずだが、と呟くタイザン







『単にそういうものに好かれるだけじゃねぇすか?
旦那は動物 嫌いじゃねぇでしょう?』


「…目の前の以上に 手を焼かさなければな」





本人を前に 憎まれ口を叩くも





ご冗談を、どちらかっつうと
旦那の世話をしてるのは あっしの方でさ」







あっさり返され タイザンはしばし返答に詰まった









しかし、





「…ほう お前もよいことを言うな」





とタイザンがニヤリと不敵な笑みを浮かべる


オニシバが一瞬眉をひそめたが 構わずタイザンが言葉を続けた





「俺は忙しいし、猫の世話なんぞ勝手が分からんからな
なら里親が見つかるまで、責任もってお前が面倒を見ろ


『え』





その一言で オニシバから笑みが消えた







『あのー旦那 あっしは式神であって世話係じゃ』


「口答えは許さんぞ これは命令だ」





反論しようとするオニシバに


タイザンはピシャリと言い切った











流石に 自分の契約者に命令された以上
逆らうわけにも行かず





しばらくの間 オニシバは子猫の世話
追われて苦しむ事になったという








―――――――――――――――――――――――――――――
あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:久々にBL更新〜甘い感じにしたかったけれど
よくよく考えたら捧げモノ以来オニタイまともに書いてないと
気づいたので 何だか中途半端になっちゃった(泣)


オニシバ:しかも前半部なんざ ユーマ殿としゃべってやすからねぇ


狐狗狸:うーん 一応これ、続きは裏行き(爆)の予定だけどさ
もうちょっと二人の大人っぽくもラブラブな雰囲気出したかったー(悔)


タイザン:ネタもネタなら話も話だ 今度はもっと練ったものを
出すことだな、主に私の出番のために


オニシバ:旦那 あっしは旦那といちゃつけるなら


タイザン:それ以上何かしゃべったら符で強制的に黙らせるぞ


狐狗狸:…次回は せめてここの会話ぐらいラブラブな雰囲気
出せるよう頑張ります