オレは窓に身を寄せ、キセルを
ふかしつ 薄青い空を眺めていた









今は、特にやることも無い







室内の音といえば







「客人にその態度は失礼ではござらんか?晋助」


「用もねぇのに勝手に来たのはテメェだろーが」







さっきから居座っている万斉との





会話にすらならない言葉のやり取りが
ぽつりぽつりある程度











「しりとりはラ行で攻めろ」











忙しい身とか言ってたくせに長居してて
いいのかぁ?」


「たまにはプライベートな時間
必要なんでござるよ」


「テメェのわがままにオレをつき合わすたぁ
いい度胸してんなぁ…」


「そのセリフ、そのまま晋助に返すでござる
拙者もぬしの気まぐれで貴重な仕事時間
よく潰されていると思うのだが?」







本当に口の減らねぇ野郎だ





しかし 退屈しのぎの相手が
今のところこいつしかいねぇのも事実







ち、と舌打ちを一つして 外に顔を向ける







「もう少し会話を楽しむ気はないでござるか?」


「今の会話に楽しむ部分があったか?
それに 今は長く語る気分じゃねぇ」


「それなら、少しでも会話を持たせる為に
しりとりでも」


「…やると言った覚えもねぇ」





ヤツはオレの話をまるで聞かずに
しりとり、と言い出した





相手をする気はさらさら無い







「しりとり」







さっきより若干強めに繰り返すのを
聞き流しながら、タバコの煙を吐き出す









「しりとり」







言葉を再度無視すると







万斉はオレの方をじっと見つめてきた









、でござるよ 晋助」


「だから オレはやらねぇよ」


「ふぅん なら、晋助の負けでござるな」







元々勝負をしているつもりは無い…が





妙に済ました顔で言われると腹が立つ







しょうがねぇ、付き合ってやるか







「……りんご」


「そう来なくては、ゴリラ」


「ラッパ」


「パンチラ」









意味のわからねぇ単語が出たが、
聞く気は起きなかった







コイツのことだ どうせ外来語だか
流行語の類だろう









「ラッコ」


「コアラ」


「ラクダ」


「だんだら」





間髪いれず、互いに単語だけを応酬し







しばらくして オレはある事に気付く





「…さっきから語尾がラ行ばかりじゃねぇか」


「こんなの、しりとりの定石でござるよ」









遊びのつもりだったくせに ヤツは
いつの間にか本気になっていた







……面倒だ わざと負けて終わらせちまえ









「蘭」





これで会話も終わるだろう、と一息つく









「ん…ンジャメナ」





思ってもいなかった切り替えしに
さすがに待ったをかける





「そんな言葉あるか デタラメ言うな」


「外国の地名で実際にあるでござる
それより次は"な"でござるよ、晋助?







ニヤリ、と済ました笑いを浮かべている











…そこまで言うなら お望み通り
決着つけてやろうじゃねぇか










オレは万斉の方に顔を向けて座りなおし





次の単語を口にする







「鉛」


「倫理」


「料理」


「リフィル」







室内でさっきよりも早く、言葉の応酬が
繰り返される







内容はたかがガキの遊びだが





漂う空気は 切り合いの時
似たような緊張感を孕んでいた







馬鹿馬鹿しいが、こうなった以上は
負けるつもりは無い







むろん 向こうもそのつもりだろう







「瑠璃色」


「ロール」


「縷々」





ヤツがほう、と驚いたような声を漏らす





「難しい言葉を知っているでござるな」


「ふん…」







これでも、一応学問は真面目に習ってたし


ヅラには負けてたが そこそこ読み書きは
出来ていたからな







「が、勝つのは拙者と決まっている…ルール」


「ほざけ…流浪」


「うろ」


「ろくろ」


「ロイヤル」











窓から見える空の色が徐々に茜色を増し







やがて夕闇に沈む頃、決着は付いた









拙者の勝ち、でござるな いやー危なかった」


「チッ…案外粘るじゃねぇか」


「でも晋助も見かけによらず語学が
豊富で 結構苦戦したでござるよ?」







とは言うが とてもそうは見えねぇ









ニヤニヤと笑ったまま、万斉が近づき
片手でオレのアゴを軽く持ち上げる







「それじゃ、負けたから晋助には
罰ゲームを受けてもらうでござ」


「そんな約束はしてねぇだろぉ?」







言いながらその手を叩き落とすと、





ヤツは肩を軽くすくめ おどけてみせる





「冗談でござるよ」







…本当 どこまでも喰えねぇヤツだ







「しかし楽しかったでござるな
また、機会があればやりたいでござる」







その時もまた拙者が勝つけど、と
余計な一言を言う万斉に こう返す







「…気が向いたら付き合ってやらぁ
今度はオレが勝つけどな








――――――――――――――――――――――
あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:ほのぼのかギャグで万高を書きたかっ
…たのに何だよコレェェ


高杉:それにしても 書きあがりの割にゃ
中身の薄い話だなぁ


万斉:同じく、てゆうか色々と欠けている
ござるな BL小説として


狐狗狸:言うなよそれはぁぁ(泣)


万斉:リフィル縷々など 読者が分からぬ
言葉を使うのはどうかとおもうが


狐狗狸:確かに てかパンチラについて
ツッコもうよ杉様


高杉:面倒くせぇし興味ねぇよ


万斉:それに晋助は時折そーいう天然さを
かもすのがいいのであって


狐狗狸:杉様の殺気を受けながら顔色一つ
変えずにそれ言えるて…スゲェ河上さん




甘さがまるでない 空気感とノリだけの話でスイマセン
リフィルと縷々の意味は…調べてみてください(え)


読者様 読んでいただいてありがとうございました!
読んでいただきありがとうございました!