ある冬の日の 静かな夜









ふと窓から外を見て タイザンは
天から落ちる白いものに気付いた











「雪が 降っているのか…」


「冬ですからねぇ」







お茶を用意し、オニシバがタイザンの側まで寄る












〜「其は刺す冷気を供とする」〜













「茶を用意したのか すまんな」







湯飲みを包むように両手で持ち お茶を
ひとすすりしてタイザンが呟く







「こちらで見る雪は 久々だな」







その言葉に わずかに喜びの色が混じる







「言われて見りゃ そうですねぃ」













タイザンの生まれは、冬の雪の日だった







オニシバと契約をしたのも ちょうど雪の降る寒い日で







彼の大切な記憶の中で 雪は常に共にあった









それ故に、タイザンは雪を好むのを
オニシバは知っている













「…旦那?どうかしやしたか?」







じっと窓の外を見ている主に問いかけるオニシバ









答えず 湯飲みを置いて急に立ち上がり
タイザンは玄関へと進んでいく









「旦那、何処行くんでさ」


「少し外の様子を見るだけだ」







振り向かずにそれだけ言って、タイザンは外へ出た















辺りはうっすらと雪が積もり
世界は銀色に変わりつつあった









タイザンは 玄関先で立ち止まり







戸を開け放した状態でそのまま、
雪の舞う空を見つめている











身を刺すような 冬の空気に晒されて







タイザンの頬は少し赤みを帯び、それが
ますます 元の肌の白さを際立たせる









空を見上げる 遠い目も何処か艶やかで







舞い落ちる雪と同じくらい儚げだ











「旦那 風邪ひきやすよ…何か着たらどうですかね?」







少し離れた所に佇んでいたオニシバは





その姿を見て 思わず息を飲んだ





我に返ってタイザンの身を案じ 声をかける









けれど タイザンは微動だにしない







空に視線を移したままだ









旦那、聞いていやすか?」







二度目の呼びかけにも答えず





タイザンはただただ、空を見上げていた













まるで、自分の存在が目に入らぬような
様子に オニシバは言い知れぬ不安を感じた











雪のように儚げな主がどんどん透き通って









そのまま、雪とともに
消えてなくなってしまいそうな気がして













「旦那」







オニシバは、タイザンを抱きしめた









そこでようやく呼びかけに気付き
タイザンがオニシバに視線を向けた







「何をするんだいきなり」







問うと、オニシバが不機嫌そうに







「何度呼んでも向きやしねぇし…風邪ひきやすよ
そんなところにその格好だと」







言われて ようやく寒さに気付いたのか
タイザンが僅かに身体を振るわせた









コートで主を包み込むと、オニシバが
顔を覗き込むようにして訊ねた







「どうしていきなり外に出たんですかぃ?」


「久々の雪を少し側で見ていたくなってな
…思わず見入ってしまった」







自嘲気味に笑って タイザンが言う







「オレをおかしいと思うなら笑うがいい」


笑いやせんよ、久しく見てねぇ雪に
見とれてた旦那は綺麗でしたしねぃ」


「…フン」









そっぽを向くタイザンの様子に
ニヤニヤしていたオニシバだが







「雪は好きだ 白く美しくて…
何も残さず消えて、潔いからな







その一言で 急に真剣な顔付きになる









「旦那は 雪みてぇに消えねぇで下せぇよ」


「…当たり前だ」







タイザンはうっすらと微笑んだ







「さすがに冷えてきたから戻るか、オニシバ
さっさと腕を放せ」


「わかりやしたよ 旦那」









解放され タイザンはスタスタと家の中に戻る











オニシバは戸を閉めて、タイザンの後へ
ゆっくりとついて行った








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:オニタイで冬向けなシリアスっぽいものを
書いてみました


オニシバ:シリアスですかねぇ これ


タイザン:短いな、そして駄文だな


狐狗狸:淡々と言わないでくださいな(泣)


オニシバ:まぁ 旦那の綺麗さを雪に例えたのは
及第点をあげやしょうかね


タイザン:…雪は嫌いではないし、それもよかろう


狐狗狸:わぁやさしいなぁ ありがとうございます


タイザン:棒読み気味な言葉が腹立たしいから
雪球でもぶつけてやろうか


オニシバ:準備はできてやすぜ 旦那


狐狗狸:雪合戦する気満々!?よーし負けな




投げられた雪球(石入り)により 気絶