神楽が定春をお散歩に連れて行っている間







「だからーオレが悪かったって」


「知りません」







万事屋では 膨れっ面をしてそっぽ向いてる
新八に、銀時が必死こいて謝っていた







「いい加減、機嫌直せよぉー新八ぃぃ」





猫なで声で謝られても 彼は
頑として聞き入れない







…いい大人が猫なで声を出すのも
どうかと思われるものがあるのだが





そこはそれ、







好きな相手に嫌われたくないのは
年齢も性別も関係なかったりする











「ケンカ後は早めに謝んないとこじれる」











「甘いものが好きだからって、僕が買っといた
おはぎを勝手に食べなくたっていいでしょ!?」


「だからそれは 銀さん寝起きで
うっかりしてたんだって」


「しかも両方とも食べちゃうなんて…」







メガネの奥の目が、少し悲しげに沈む







普段ならば それくらいの事で
ここまで機嫌を損ねる彼ではない





むしろ、新八が原因のおはぎを買うこと自体


滅多に無い 珍しいことなのだ









しかし今回ばかりは事情が違った







実はそのおはぎ、銀時と二人で食べようと思い
わざわざ買っておいた代物だった





神楽にも酢昆布を与えておき
用意周到におはぎを残しておいたのに





洗濯物に気をとられている隙に


昼寝から眼を覚ました銀時が







「おっ、おはぎがあんじゃーん
ちょーど甘いもん食いたかったんだよねー」







全部がっついてしまったのだ









戻ってきた新八のショックは計り知れない





(いくら銀さんの分もあるからって、僕に
なんの断りも無く二つとも食べるなんて…)







そんな努力も胸のうちも知らない銀時は







責めたその後 何もしなくなった新八に
わけも分からぬまま謝罪を続け、現在に至る











「お前の好きなお通ちゃんの限定
等身大ポスター買ったげるからさ〜」


「もう持ってますよ」


「じゃあアレだ、オレの秘蔵の
エロ本コレクション貸してやろっか?」


「そんなマニアックなもん願い下げです」







モノでつる作戦も見事に失敗し
銀時に打つ手が無くなる









(てゆうか…なんでおはぎ食ったぐらいで
オレがこんな必死になんなきゃならないワケ?)







だんだん、現状に苛立ち









「あーそう、お前がそういう態度なら
もういいよオレぁ!」






とうとう痺れを切らし、銀時が
椅子ごとくるりと新八に背を向けて





「気に入らないんだったら もう明日から
万事屋来なくてもいいから」





職権乱用な必殺の一言を言い放った







途端、今度は新八がうろたえはじめる





「そ、それは困りますよ 僕だって
生活がかかってるし…」


あれー?給料ロクにもらえなくて
ヒイヒイ言ってるんじゃなかったっけ〜?」





顔を背けたまま、機嫌悪く言い募る銀時





「それにここよりいいバイトなんか
探せばあるから そっち応募すればぁ?


「…いいですよ僕それでも、けどそしたら
銀さん 神楽ちゃんとやってけるんですか?」







その一言に、銀時が顔を向けると
新八も真剣な眼でこちらを見返している







「別に平気だよ〜銀さん器用だしぃ?
でもお前意外と不器用じゃん」


「生き方不器用でも糖分に見境いの無い
ダメ人間よりマシです」


「ダメで結構、辞めたきゃ辞めろ
でももしこの世界がボケで崩壊したら
ツッコミ外れたお前のせいだかんね」


嫌な世の終わりだな!てか辞めさせたいのか
引き止めたいのかどっちなんだぁぁ!」







平行線な二人の言いあいがしばし続き









(…なんで、たかがおはぎで
こんなくだらない言い合いしてんだろ?)







徐々に、新八の気持ちから怒りが失せていく









(もういいや、謝って和解しとこう)







「…わかりましたよ、スイマセンでした」





頭を下げるも 銀時はいまだ
ふてくされたままの顔をして言う





「いや 別に謝ってくれなくても
いいけどさぁ、反省してる印が欲しいなぁ」







すっかり立場の逆転した現状だが







(でも、僕には秘策があるんだな)





新八はメガネ越しの上目遣いに、
じっと銀時を見つめながら





「じゃあ…今度 近所に出来たお好み焼き屋に、
食べ行きません?僕のオゴリで」


お好み焼きぃ?オレァ甘いもんじゃねぇと」


お好みケーキバナナショコラって
メニューもあるんですよ、その店」





その発言に 銀時が目の色を変える





「ふぅん そうなんだ、そんな面白ぇもん
ある店なんだぁ」







銀時の様子に新八は目を輝かせる







興味ありますか 銀さん?」


「いや、オレは甘いもんがあるなら行って
食べてくるだけだよ?でもお前がどーしても
おごりたいっつーなら構わねぇよ?」





口ではそう言うも、既に椅子から
立ち上がっていたりする







新八はため息混じりにこう言った





「それじゃ、後で行きます?」


「…ん そうだな」







頭をかいて、銀時もにこりと笑う











玄関から こっそり様子を見ていた
散歩帰りの神楽が


酢昆布食みつつうんざりしたように呟いた





「やってらんねーヨ このバカップル








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:こっちでは初の銀新なんですが…
なんつーか、甘いの?これ


二人:しるかぁぁぁ!


狐狗狸:そーいうシンクロはやめてくんない?


銀時:てゆうかいつも思うが、何でここじゃ
銀さんとのキスシーンが無ぇの?


新八:いきなり直球な質問だな
つーか欲望全開すぎですよ銀さん


銀時:だって総一郎君も高杉のヤツもちゃっかり
一発ヤってんだぞ?ずるくね?


新八:そーいう言い方やめてくんない!?


狐狗狸:大丈夫、BLでもNLでも私の作品
キスはあんまり無いと思うから!


新八:アンタはアンタで何に答えてんの!?




メジャー(?)な二人の絡みなのに
こんなんばっかでスイマセンでした


読者様 読んでいただきありがとうございました!