お店を出ると 高く照りつける
太陽の熱を肌に感じた





「もう秋に入ったのに、今日も暑いなぁ…」





少し大きめの買い物袋を片手に


僕は空を仰いで目を細める





さすがに八月を過ぎればむっと来る
湿気と熱気は失せて過ごしやすくなり


夜になると返って涼し過ぎるくらいだ





それでも晴れた日は夏の陽気が
続いているように 日が高い







遠くでセミの声も聞こえる


あのセミは、何処から鳴いているんだろう?





夜になればもう鈴虫の音に
取って代わられているのに







「おっと…早く帰らないと
コゲンタやナヅナちゃんに怒られちゃう」





我知らず立ち止まっていた事に気が付いて


慌てて僕は、歩調を速める











〜「公園癒天使」〜











手も空いていたし最近は平和だったから





夏から暑さに参ったままのコゲンタを
お留守番させ、買い物に出かけた







ナヅナちゃんはずっと自分がやるからと
言ってくれていたけれども


たまには、僕も働かないとね







少し大きめの公園の横を
通り過ぎようとした時だった







目の前を突然 大きな青いものが横切った







おぉコレはリク様!ちょうどよい所に!!』





止まった青いものに声をかけられて





それが二匹の式神だってことに気付くまで
ちょっとだけ時間がかかった







「君達、確かヤクモさんの…!?」





半透明のブリュネさんとタンカムイくんが
困り顔で頷く





『ヤクモが大変なんだよっ!!』


『ぜひともご助力願えますか!?』







尋常じゃない慌て方に





僕は彼らに導かれるまま
公園へと 足を踏み入れた









「や…ヤクモさん!?」





少し奥まった広場の、密集している
木の下までやってくると





そこにマントを羽織ったヤクモさんが


仰向けで倒れていた





『どうやら暑さに参ったらしい』


『さっきからずーっとこうしてまんねん…』







汗の浮いた額と眉間に刻まれたシワと


口から微かに漏れる呻きが
ヤクモさんが苦しんでいる事を物語る







これって…熱中症なんじゃ!?





「ちょっと待っててください!」







木の側に勝った荷物を置くと





周りに集う五体の式神達に彼を任せ


僕は水道まで走り寄ると、持っていた
ハンカチを濡らして絞り


再びヤクモさんのところまで戻ってきた







『何かいい案でもあるでおじゃるか?』


「ええと、前にちょっとだけなら
応急処置の方法を聞いたから…」





実際にやるのは初めてで、頭の中は
少し混乱しているけれど


それでも何とか手順を思い出しながら





「確か…まず身体を出来る限り冷やす





ヤクモさんの側にしゃがんだ







「ゴメンなさいヤクモさん
…ちょっと失礼します」





ペコリと謝ってから僕は肩に手をかけ


マントを外して、側に簡単にたたんで置く







そのままハンカチで首筋の汗を拭うと







「……う、リク?」





うっすらとヤクモさんが目を開けた





「あ、気付かれましたか?よかったぁ…」





様子を見守っていた半透明の式神達も
同じようにホッとしている





「どうして…?」


「式神の皆さんに呼ばれてきたんです
あの、あまり無理してしゃべらないでください」







まだちょっと虚ろな目をしたヤクモさんが
小さく首を縦に振る





「水は飲めそうですか?」





もう一度同じ返事があったのを見て





「じゃあ水分を取った方が楽になりますよ」







僕は買い物袋の中から小さなスポーツドリンクの
ペットボトルを出して


横たわるヤクモさんの頭を少し持ち上げると





「一気にでなく、一口ずつ飲むといいですよ
苦しかったら教えてください」







そっとペットボトルを口元へ持って行き





ゆっくりと、中身を飲むお手伝いをした







『用意がいいねー』


「たまたま買った物の中に入ってただけだよ」





…本当はコレ、ソーマ君に
頼まれてたモノだったんだけど


事情を言って謝れば 許してくれるよね?









トントン、と軽く手を叩かれたので





「あ、もういいんですね」





僕はペットボトルを離してキャップを閉め
ヤクモさんの頭をそっと降ろす







「ありがとうリク 大分楽になったよ」


「そんな…あの、どうしてここで
倒れていたんですか?」





ハンカチを額にのせつつ訊ねると


苦笑を浮かべてヤクモさんが呟く





「いや、この所少し無理をしていたツケが
回ったらしくてな…」


『少し所か大分無茶しとるやないですか』


『伏魔殿でもこっちでもこの陽気じゃ
体調を崩すのも無理ないでおじゃる』


『せめてマントを脱いで探索すれば
まだ倒れはしなかったろうに…』


「ソレは言わないでくれよ…でも
お前達のお陰で助かったよ」







相変わらず大変な旅をしてるんだなぁ…







『あと、リクにもちゃんとお礼言ってね』


「そうだったな 本当にありがとうな」





不意にこちらへ話が振られて
顔が熱くなるのが分かった





「あくまでも応急処置なので
後で病院に行って安静にしてくださいね」







この状態なら後は式神達に任せても
大丈夫かなと思って





ペコリと頭を下げて、立ち上がろうとし







右手をはっしと捕まれた







「なぁリク、もう少ししたら起き上がれるから
それまで側にいてくれないか?





真っ直ぐなヤクモさんの視線に ドキリとした







「え…でも家でコゲンタとナヅナちゃんが…」





嬉しさと戸惑いとが頭を巡って
とっさに言い訳めいたことを口にするけれど





『それなら私どもが言伝して参ります!』


『先程から世話になりっぱなしだからな
それくらいはせねば』


『ヤクモがどっかいかないように見張ってて〜』







すぐさま彼の式神達が太刀花荘へと
飛んでいってしまい





あっという間に二人きりになってしまう







「何も五人で行かなくたって…」


気を使ってくれたんだろう?オレ達に」







ニッコリと微笑むヤクモさんに
僕がかなうわけもなく





大人しく 側に腰かけ直した







「ありがとうな、ワガママ聞いてくれて」


「いいんですよ…これくらい」


「リクって本当、天使みたいにいい子だな」


「そんな…買いかぶりすぎですよ」


「いや、さっき気が付いた時
少なくともオレにはそう見えたんだ







そっとほっぺたに添えられた手は熱くて





クラリと、熱中症にかかったような目眩がした









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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:ヤクリクでほんのり甘目を書きたかった


ヤクモ:なんで過去形?


リク:秋に熱中症は少し強引な気も…


狐狗狸:日中暑い日もあったでしょ?そんな感じで


ヤクモ:公園に倒れてたのとスポドリについては?


狐狗狸:場所についてはノーコメ、スポドリは
本人が飲みたいっておねだりしたからで


リク:あの…果てしなく
とってつけたような理由なんですけど


狐狗狸:う…




勢いに任せて書いた、今ではちょっとだけ
後悔してたりもする(なら書くな謝)