眩しい日差しが窓から差し込む
東方司令部の一室で
「人をいきなり呼び出して、何の用だよ?」
金色の髪を輝かせながら エドワードは
仏頂面で相手を睨む
「なに、君がこっちに立ち寄ると言うから
仕事を手伝ってもらおうと思ってね」
机を挟んで対峙する大佐の顔は
組んでいる腕により よくは見えない
だが、目はどこか楽しそうだ
「何か最近そーいうの多くねぇか?」
「仕方が無いだろう?私は忙しい身だし
君は弟と旅をしているのだから」
「まあ そうだけど…」
端から聞けば 権力を行使して
手伝いをさせる上司に愚痴をこぼす部下
しかし、二人の言葉の裏側は
お互いが一緒にいられる状況について
言い合いをしているのだ
〜彼だけの権利〜
「だからってついでで自分の仕事を
手伝わせんな 毎回毎回」
「近頃は外に出る機会も少なくてな…」
ふぅ、とわざとらしくため息をついて
漆黒の眼差しを向けながら 大佐は
声のトーンを落とす
「それに、君との事が公になれば
マズイのはそっちだろう?」
相手の雰囲気にか、放たれた
セリフの意味にか
エドワードはぐ、と言葉に詰まった
大佐の周囲では二人のことで色々と
あらぬ噂がささやかれているが
あくまで 今はまだ噂の域を出ず
秘密裏の関係となっている
「テメェ 脅してるつもりか?
バレたらマズイのはそっちも同じ」
負けじと言い返そうとする反論を
あっさりと遮る大佐
「と、言うわけで今日は私と共に仕事を
行ってもらう…安心したまえ、仕事は
軍部の中だけで行う」
「だから だれが引きうけるっつった
人の話を聞きやがれ」
なおも食い下がるエドワードに
大佐はニッコリと爽やかな笑みを浮かべ
トドメの言葉を口にした
「無論アルフォンス君にも許可は取ってある
彼も快く協力してくれるそうだ」
「なっ…ウソつけ どうやってそんな事っ」
「私がすぐにバレるウソなどつくか?」
しばし絡み合う二人の視線
そして ついにエドワードが折れた
「…ちっ、仕方ねぇ 手伝ってやるよ」
「そう言ってくれるのを待っていたよ
それと、君に渡しておくものがある」
その言葉に 首を傾げるエドワードに
大佐が机の側から何かを取り出し
近寄って それを手渡した
彼はしばし渡された代物を凝視し
やがて、鋭い視線を大佐に向けた
「…オレに これを着ろっつーのか?」
エドワードに渡されたのは Sサイズより
もっと小さい軍服だった
「もちろんだとも、むしろ着てもらわねば
せっかく特注で作ったのがムダになる」
「こんなもんワザワザ特注すんな!」
バシーン!と音を立てて軍服を
床に叩き付けるエドワード
それを拾い上げてポンポンと埃を払い
「大佐である私の命令が聞けないと
言うのかね?鋼の?」
「職権乱用かよ!」
ニヤリと黒い笑みを浮かべた大佐に
エドワードの叫びが響き渡った
結局 彼には勝てず
「……着たぞ これでいいんだろ?」
渋々用意された軍服を着るエドワード
特注だけあって、本人の寸法に
不気味なくらいピッタリだった
「似合うじゃないか 可愛いぞ、鋼の」
「男に言われて嬉しい台詞じゃねぇよ」
「頬を赤くして言われても、説得力が
無いと思うのだがね」
満足そうにエドワードの姿を眺め回し
颯爽と部屋を出ようとする大佐
「さあ、ムダ話をしている時間は無いぞ」
「散々ムダ話してた本人が言うなっ」
理不尽な物言いに文句を言いつつも
エドワードは大佐の後について行く
大佐と共に支持された仕事をこなしながら
「あれっ 大佐、その軍服って
エドワードさん用だったんですか!?」
「よー大将、その軍服 中々似合ってるぜ」
「エドも大変だなぁ」
「大佐に負けないでくださいね」
顔を合わせた軍人達のささやきを聞き
エドワードは顔をしかめていた
「どうした鋼の、しけた顔をして」
並んで廊下を歩く途中 大佐が声をかける
「…おいクソ大佐、これじゃ言うまでも無く
オレ達の仲バレッバレだろ!?」
「その辺も抜かりは無い」
得意そうに ふふ、と笑みを浮かべ
大佐は続ける
「周囲にあらかじめ、先日君と賭けをして
負けた罰ゲームだと言ってある」
「ふざけんな!」
エドワードは怒りに任せ カカトで
相手のつま先を思いっきり踏みつける
「〜っ、痛いじゃないか 鋼の!」
「うるせぇクソ大佐!仕事手伝わせんのに
付け加えてこんなカッコさせやがって!」
「世間でよくいう"ペアルック"を
君と一度 やってみたかったのだよ」
大佐のその一言は真剣で、
「……バッカじゃねぇの」
乱暴だが どこか優しい響きを含んで
エドワードが返した
特有の甘い雰囲気がただよう
だが、それと引き換えに エドワードは
黙ってしまう
照れると何も言わなくなる事を
そこそこ長い付き合いで知っていたので
「しかし、やはりこれきりに
しておいた方がいいな」
「…え?」
大佐は真面目な顔をして、エドワードの
怒りを呼び覚ますような一言を口にする
「君のその姿は 同性であろうと
誘拐する気を起こすぐらい挑発的だ」
「気色悪いことを言うんじゃねぇよ!」
反射的に繰り出される拳を
大佐は軽やかに交わして笑う
「ずいぶんと乱暴な態度だな」
「うるっせぇよバーカ!」
「兄さんに大佐 またケンカしてるの?」
後ろから、両手に荷物を抱えたアルフォンスが
ケンカし始めた二人をいさめる
「ああアルフォンス君、いやなに
君のお兄さん 少々血の気が多くてね」
「誰のせいだと思ってんだ!」
頭をガリガリと掻きながら叫ぶエドワード
「ああもう、今後アルが先に協力してても
オレは一切テメェを手伝わねぇからな!」
「…え?どういうこと??」
まるで寝耳に水、というような様子の
アルフォンスに 兄は首を傾げてたずねる
「アル、お前が先に大佐の手伝い
協力するって言ったんじゃないのか?」
「僕は兄さんが協力するからって
聞かされたから 協力するって…」
そこでエドワードは何かに気付き
勢いよく大佐へと振り返った
「……大佐テメェ 嵌めやがったな!?」
「いいではないか、別に減るものでもなし」
「こんちくしょう一発殴らせろ!」
怒り心頭のエドワードと楽しげに笑う大佐の
廊下ではた迷惑なケンカがはじまり
その光景をアルフォンスは
「…二人とも、飽きないねぇ」
半ば呆れたような呟きをもらしながら
荷物持ったままぼんやり眺めていた
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あとがき(というか楽屋裏)
狐狗狸:再びロイエドで 甘目を目指そうと
がんばったんですが…こんなん出来ました
大佐:これでは及第点はあげられんな
狐狗狸:厳しいこと言わないでくださいよ
これでも努力はしたんですかへぶぁ(吐血)
エド:あんなモン着せやがってぇぇ
(マウントとってフルボッコ)
大佐:まあいいじゃないか、本当に
似合っていたぞ 鋼の
エド:いい笑顔で答えんなぁぁ!!(赤)
狐狗狸:照れなくてもいーのにぶらっ
エド:一辺沈んどけ!
大佐:やれやれ、血の気の多い恋人を持つと
苦労するな(笑)
しばらく鈍い音が続くため終了
甘いカップルのつもりが半ばケンカップルで
本当 スイマセンでしたぁぁ…
読者様 読んでいただきありがとうございました!