ただいまー、あー寒かった」







家へと戻ったマサオミを、寝転んだまま
キバチヨが笑顔で出迎える







「遅かったじゃんマサオミくーん
途中で女の子でもナンパしてたの?」


「…寒空の中、一生懸命灯油買いに行った人
そー言う事を言うか この式神は〜」





重たい給油タンクをストーブにセットしながら、
恨みがましそうに見やるマサオミに


キバチヨは不満そうな顔で





「だって、ジャンケンに負けたのマサオミでしょ?


負けた方が給油しに行くルールだって
言い出したのもそもそもマサオミだし


「…まーそうなんだけどさぁ」







どうやらストーブの灯油が とうとう底を突いてしまい





寒さが迫る中、どちらが玄関に置いてある
ポリタンクから給油するかジャンケンで決めた結果


マサオミがあっさりと負けてしまい


追い討ちをかけるように、給油途中で
ポリタンク内の灯油も無くなってしまって





仕方なく ガソリンスタンドまで買いに行ったのだ







「スクーターに乗せるには安定悪すぎるから
ワザワザ歩いて買いにいったんだぞ〜ああ重かった


「はいはい、ご苦労様」







キバチヨはようやく身を起こすと


戸棚からポテチやらお菓子をいくつか取り出し
冷蔵庫からも缶ジュースを二本持ってくる







「じゃあ部屋があったまるまで お菓子でも
食べてのんびりしよーよ」


「おー気が聞くじゃんキバチヨ〜」


オフコース、僕がどれだけ君と
長い付き合いだと思ってるの?」





ニッコリと笑うキバチヨに、マサオミも
釣られたように笑みを浮かべる





「そーだったな」











〜「絡み合う翡翠」〜











ストーブのスイッチを入れて、彼も
部屋の方へと足を向ける





数秒の間を置いて ストーブは温風を噴き出す







二人は向かい合わせになるような感じで
適当な距離を置いて その場に座り





そこにお菓子の袋やジュースを置いて


気まぐれに袋をあさり お菓子を
ポチリポチリつまみながら





他愛も無い話に打ち興じる







「この限定のチップス、微妙な味だな」


「…マサオミくんがネーミングに惹かれて
買ったんだよ コレ」


「あ、そうだったっけ?





とぼけたように呟くマサオミだが
キバチヨの視線は白いまま







そもそもパッケージに"牛丼味"と書かれていて


誰が買ったか一目瞭然なそれを
言い逃れることなど出来ないのだ







「言われてみれば、そうかもしれないなぁ
…まあ コレはコレでいいんじゃないか?」





アハハ、と誤魔化すように笑えば


キバチヨも呆れたように口元を緩めて笑ってくれる





「マサオミくんがそう言うなら 僕は別に
文句なんかナッシングだけどね」







缶ジュースを一口あおり、


少し身震いして 彼は腕をさする







「んー、まだ部屋が寒いのに炭酸は
ミステイクだったかなー」


「そりゃ キバチヨは部屋ん中で
ゴロゴロしてたからだろ?」





きょとんとした顔で、キバチヨは問いかける





「外ってそんなに寒かったの?」


「やっぱり風があるだけ部屋の比じゃなかったね
長袖着てるはずなのにすっごい寒くてさー」


「ふーん」







言いだしっぺが目の前の本人とはいえ


やはり、自分もついて行くべきだったのかも





そう思いつつ キバチヨがポテチへ手を伸ばす







ちょうど同じタイミングで伸ばした
マサオミの手が、そこにかち合って







ぶつかった衝撃よりも





触れたその手の冷たさに驚いて
キバチヨは勢いよく手を引っ込めた







「フワッ!?ま、マサオミくん
手ぇものすごく冷たいよ!!?」



「あ、ゴメンな」





謝ってから 少しぎこちなく両手の指を
曲げ伸ばしするマサオミ





「何をどうしたらこんなコールドハンズになるの?」


「灯油買いに行った帰りに辺りを見たら
イルミネーションとかがやたらキレイでさー」





ついつい見入っちゃったんだよね、と続けるマサオミ









クリスマスに近づいているせいか


この辺の民家も そこはかとなく
電飾に力を入れている





すごい所などテーマパーク並にハデで
しばらく見ていても飽きないほどだ







お互い楽しいものが好きだから


そういうのに惹かれるのも分からなくは無いが…









「それにしたって手袋つけてて
こんなに冷たくなるものなの!?」





追求に マサオミはばつが悪い顔をする







「…実は、手袋家に置いたまま買いに
行ったの 帰る時に気付いたんだよね」







ハァ…と少しため息をつくキバチヨが





「ハンサムなのに、ヘンな所で抜けてるんだから…
その手、温めてあげるから僕に貸してよ」





言って手を差し伸べるけれど







マサオミは、逆に手を身体の方へ引いたまま
首を横に振る







「い、いいよ 部屋も暖かくなってきたし」


「何遠慮してるのさ ホラ!







尚も断り続けるマサオミの手を


半ば強引に掴んで引き寄せ、キバチヨが
自らの両手で挟み 温める







「わ、悪いな キバチヨ…」





言葉を詰まらせて、マサオミは言う





「ドントマインだよ、マサオミ」





キバチヨは笑顔で答えるが、それ以上を
何も言えず 互いに無言になる







顔には出さないのだが





二人の心音は、通常の時よりも
やや早いペースで脈打っている







(マサオミの手って、案外しっかりしてるんだよね…)





(ちょっと体温低いと思ってたけど…
キバチヨの手 温かいな…)









キバチヨは、元々マサオミの姉の式神だった





生まれた時からの彼の事を知っていて


事情により契約する前から、二人は
兄弟同然の付き合いをしていた





両者は それを不満に思ったことは無かった







…でも、最近になって







(何でだろう…キバチヨを見てるとどうしてか
胸の辺りが 何とも言えない気持ちになる…)







マサオミは、時折自分の式神との
接し方が 分からなくなっていた







(…僕はひょっとして、目の前のこの子を
恋人として 好きになってるのかな?)







ほぼ似たようなタイミングでキバチヨも
自らに現れた気持ちに 戸惑っている







((でも、性別はどっちも男だし 生きる時間が
違いすぎるし…





これって おかしいのは自分?))









視線の置き場に困り、二人は微妙に
目を逸らしたまま





それでも 手は温められている状態を保っていて





一言も口を聞かないまま、時計の針と
ストーブの風音だけがしばし間を埋める







「何だか、これって恋人同士の
シチュエーションみたいだよね」







沈黙を破って、軽く 試すようにキバチヨがそう言う









普段のマサオミなら どうせなら
女の子と〜とか、冗談交じりで受け流すだろう







けれど 今の彼にそんな思考は





微塵も浮かばなくて







「…こういうのも 悪くは無いかな」





思わず呟き、キバチヨが目を見開く







一拍遅れて自分の言った言葉の意味を理解して
ハッと マサオミが顔を向ける







驚きを湛えた 二対の翡翠がほんの数秒


瞬きをする事無く、絡み合う









「っいや、何かこうやって手を温めてもらうのって
信頼されてるって感じするだろ!?」


「ああ、うん そーだよね!
こーいうコミュニケーションも信頼の証だよね」







慌てて言い募るマサオミに釣られるように
キバチヨも、早口気味に返す







「お陰で手も大分温まったよ、ありがとなキバチヨ
あ、オレ お茶入れるな」





すっと包まれた手から 自分の手を引き抜いて
台所の方へと席を立つ







部屋はもうすっかり暖かくなっていたが





台所は、まだうっすらと寒さが残っている







けれど…マサオミには その冷気すら
心地よいように思えていた









(まさか…キバチヨはオレのことなんて
兄弟くらいにしか思ってないはずだし)









残されたキバチヨも、飲みかけの炭酸を
一気に喉へと流し込む









(マサオミが僕の事をそーいう風
思ってくれてるなんて…考えすぎかな?)









示し合わせたかのように 向けた視線が
再びぶつかって







「ティーバッグは緑茶と紅茶、どっちがいい?」


「今日は グリーンティーかな」


「いいね、オレもそうしよ」





交わす言葉と裏腹に、二人はお互いから
目を離せなくなっていた







やかんの笛が 他人事のように歌う








――――――――――――――――――――――――
あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:この話のテーマは"両思いなのに気付かない
でも、気付きかけてる…"みたいな感じですが…


マサオミ:失敗だよね 見事に


キバチヨ:イエース、これ取り返しが付かないよね


狐狗狸:うーるーしゃい!折角初のキバマサを
書いたんだから文句言わないの!


マサオミ:テーマは他のサイトから
モロパクしてきてるけどな


狐狗狸:あ゛ー!何でそれ言っちゃうかな!


キバチヨ:長い間ストーキングしてて、一度しか
拍手しなかったモンねぇ あの場所


狐狗狸:仕方ないでしょ!その頃はジャンル違いで
しかもチキンだし私!


マサオミ:そんなの関係ないよ、てゆうか
余計なお節介で人の楽しみ奪っといてさぁ


キバチヨ:あれ、ある意味 サイトの閉鎖を
スピードアップさせてたよねぇ


狐狗狸:…本当に、申し訳ございませんでした
A様あぁぁぁぁぁぁ!!
(泣き土下座)




本題からかなりズレまくっててスイマセンでした


そして未消化なキバマサでゴメンナサイ