「エドワード・エルリック様 マスタングという
お方からお電話がありました」
ホテルマンのその台詞に、エドワードは
眉間に思いっきりしわを寄せて手を当てた
隣にいるアルフォンスも ため息をつく
〜Hotline〜
「折り返し連絡をとのことでしたので
お伝えさせていただきましたけれど」
「…ありがとうございます」
渋い顔でお礼を言い、エドワードは
ホテルの電話まで近づいて
そこでアルフォンスの方に向き直る
「アル、先に部屋戻っててくれ
オレも電話が終わったらすぐ行くから」
「わかったよ あんまり長く
なり過ぎないようにね」
アルフォンスが部屋に戻っていくのを眺め
ため息混じりにエドワードは受話器を取った
電話はすぐに、軍の回線に繋がった
「もしもし?」
受話器の向こうで、悠然とした大佐の声
「何か用かよ クソ大佐」
対するエドワードは不機嫌さが滲み出ている
「いきなりご挨拶だな、鋼の」
「こっちはひんぱんに電話かけられて
いい加減ウンザリしてんだよ」
大佐はわざとらしくため息をつき、
よどみなくしゃべりだす
「仕方ないだろう、君は連絡サボるから
こうして私が所在確認を」
「所在確認なら一回かけりゃ十分だ!
これで五回目だぞ!?」
エドワードの怒鳴り声を聞いても
受話器向こうの大佐は余裕を崩さない
「君はせっかちだからすぐにその場を
離れるかもしれないだろう?」
「こっちは旅の身だから当然だろ」
「だから君のいる場所を知っておきたくてね」
弟と二人で過酷な旅をするエドワードは
一つ所にじっとしている事はできない
しばらくどこかにとどまる事もあれば
半日と立たず街を離れる事もある
それを考えれば大佐の行動は至極当然だ
…ただし、大佐はそれだけで行動していない
それをエドワードは嫌というほど知っている
「毎度オレを指名する意味あんのかよ!?
アルや宿の人に聞いたっていいだろ!」
「所在確認のついでに声を聞きたくてね」
「軍の回線私用に使うなアホ大佐!」
「私の場合はきちんとした名目があるから
許されているのだよ 鋼の」
これは嘘である
実際、軍部でも噂になってはいるが
意見しても 大佐は無視してるだけである
現に電話をしている大佐のやや後ろで
中尉が眉間にしわを寄せて 呆れた視線を
大佐に送っている
「やってることはヒューズ中佐の娘自慢と
同レベルじゃねぇか」
エドワードの皮肉をものともせず
チッチッと 大佐が小さく呟く
指を振るキザな仕草が目に浮かぶようだ
「大違いさ あれは一方的な会話、こっちは
恋人同士の甘い会話だろう?」
「恋人同士とか言うな!
誰か聞いてるかもしれねぇんだぞ!?」
怒鳴り声は変わらないが、エドワードの
頬は少し赤く染まっている
すると、急に受話器向こうの空気が変わる
「君と私の関係が知られて、今更まずいことが
なにかあるのかね?鋼の」
大佐の声には 先程とはうってかわって
真剣な響きが含まれていた
戸惑ったように、エドワードは反論する
「だ、だって…恥ずかしいし」
「君が人目を気にするなんて らしくないな」
「悪かったな!」
まるでエドワードの今の様子が
見えているかのように
「赤くなっても 可愛いだけだぞ、鋼の」
楽しげに笑いながら、大佐が言った
「誰のせいだと思ってんだ!」
怒りを露わにするエドワードだが、
顔がトマトのように真っ赤なので
説得力に欠けている
大佐はひとしきり笑ってから、
「愛しているよ 鋼の」
低い声で、甘くささやいた
「……うるせぇよ、じゃ電話切るぞ
それじゃあな」
何とかそれだけ言って、エドワードは
ちょっと乱暴に受話器を置いた
「……会いたくなるような真似すんなよ、
バカ大佐」
小さく呟いて エドワードは
軍部にいる彼の顔を思った
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あとがき(というか楽屋裏)
狐狗狸:鋼のBL 手始めとして甘めな大豆を
書いてみたんですが…甘くなってるかな?
エド:無節操だなオィ、それに短いし
狐狗狸:あーあー聞こえないー(耳塞ぎ)
エド:嘘つけ!それにオレはあんなキャラじゃねぇ!
大佐:そうとも、私が電話越しの会話だけで
満足できると思っているのか!
狐狗狸:わーナチュラルに変大佐出たよ
大佐:というわけで鋼の 今からデートに行こう
エド:寄るな無能!!
大佐:むっ無能…!?
狐狗狸:あーあー ヘコんじゃった
少しでも甘くなってたら幸いです
読者様、読んでいただきありがとうございました〜