人間?どっちかって言うと好きかな
からかうと色々楽しいんだよね
抵抗されたりすんのはムカつくけど
その時はまぁ仕返ししたりブチっと
潰せば大抵スッキリするし
…だから、我慢なんてした事ないし
こっちの思惑通りにならなかった人間なんて
ただの一人もいやしなかった
「ねーおチビさん、起きてよぉぉ〜」
目の前でぐぅすか寝てるこの小さな人柱
国家錬金術師の
エドワード・エルリックを除いては
初めに存在を知った時から
"からかいがいのある相手だ"と思ってた
研究所で顔を付き合わせた時、それは
僕の中で確信に変わった
色々あって堂々と会えるようになってから
ヒマさえあればからかう為にしばしば
泊まってる宿とかに赴くんだけど
「…何やってんのさ」
「見りゃわかんだろ、錬金術の研究だよ」
「元の身体を取り戻す為に?」
「今やってるのは、それとは別だ」
やたら沢山の紙と本の山に埋もれながら
渋い顔して置物みたいにじっとしてたり
かと思えば今みたいに寝てたり
ここんとこの反応は邪険…
てゆうか無反応だ
〜evil transform〜
「最近僕に冷たくなぁい?怒るよ?」
「エンヴィー、悪いんだけど
兄さん疲れてるんだから止めてあげてよ」
ホッペを両端から引っ張っている僕を
慌てて諌める弟のアルフォンス
「せっかく来てあげてるのに あまりにも
僕に対しての反応が適当すぎるんだもん」
「…勝手にやってきて兄さんにちょっかい
出して帰ってくだけじゃん」
「それの何処が悪いのさ?」
キッパリ言うとアルフォンスは
額に手を当てため息
「どーせまた来るんだし、今日は
もう帰ったら?」
「何…僕に命令するの?」
苛立ちを込めて睨むと、静かに首が
ガチャリと横に振られた
「違うよ 寝起きの兄さんとエンヴィーの
ケンカで面倒が起きるのが嫌なだけ」
……そう言えば、前に一度無理やり起こして
キレたおチビさんとドンパチおっぱじめて
泊まってた宿半壊させた事があったねぇ
手加減ナシなのはいつもの事だけど
あの時は輪をかけて殺す気満々だったなー
腹たって思わず半殺しの目に合わせたら
お父様を初めとする人造人間の面々に
こってりお灸をすえられたっけ
「ちぇ、しょうがないなぁ」
…流石に同じ事を繰り返すほど
僕も馬鹿ではないつもりだし
やりたい訳でもないので
この場は、おとなしく引き下がる
但し 何もしないのはシャクだから
「気付くまでこの事は黙っといてよ?」
弟に念押しして、止められるよりも早く
すかさず取り出した油性ペンで顔中に落書き
愉快な顔をひとしきり笑ってから退散した
……でも、これで今までの扱いへの
ムカつきが治まるほど僕は甘くない
「さて、どう仕返ししてやろうかな…?」
ニヤリと笑い 僕は姿を揺らめかせた
「…っやっと見つけたぜ、エンヴィィィィ!」
叫びと共におチビさんが殴りかかって来たのは
あれから数日たった 昼間の路地裏だった
「ちょ!久々に会ったってのに
昼間から血気盛んすぎない?」
「うるせぇ!テメェがやらかした事
忘れたとは言わせねぇからなぁぁぁ!!」
キレイな回し蹴りを避けながら、僕は
敢えて平然と訪ねる
「おや、僕が何したってのさ?」
「しらばっくれんな!オレに化けて
散々妙な事やってくれたじゃねぇか!!」
「妙な事、ねぇ…」
ニヤリと僕は笑みを深くした
仕返し代わりとおチビさんに化けた僕は
彼らのいる場所でこんな噂が立つような
行動を繰り返し続けていた
"最年少の国家錬金術師は女装癖がある"
"エドワード・エルリックは変態だ"
"エルリック兄弟の兄の方は道行く人に
暴力行為を要求する程のドMだ"
なるべく計画に差しさわりが無い程度で
本人がなるべく嫌がるだろうと
思うモノをチョイスして
どの辺りで気付くか笑って見てたけど
意外と時間、かかったなぁ
「だって、本当の事じゃない」
「何処がだ!
全部事実無根のデタラメじゃねぇか!!」
殴りかかったパンチを、手の平で受け止めて
「元々はおチビさんが僕を
無視してたのがいけないんじゃない」
近づけた顔を 彼の目の前で
小さな国家錬金術師のそれと全く同じに
変貌させて、こう言った
「だから僕がいつもやってる事を
君の姿で公表してあげただけなのに」
おチビさんは顔を赤くしてこっちを睨む
「どこまでえげつねぇんだよテメェは…!」
「やだなぁ、僕がえげつないのは元からだよ」
顔を戻して ニンマリと笑ってやれば
「そうか…じゃあオレもテメェに対して
えげつない手段で対抗してやるよ」
何故かおチビさんも同じように笑い返し
次の瞬間、物凄い激痛に僕は
耐え切れずその場に崩れ落ちた
「ぐあっ…そこ蹴るのは反則…」
前屈みに股間を押さえつつ、呻く僕
そう おチビさんは注意を逸らした隙に
股間を思い切り蹴り上げたのだ
しかも、鋼の左足で
「落書きと妙な噂の分、その一発で
チャラにしてやらぁ」
「案外…根に持つね…」
「お互い様だろ じゃあな」
淡々と呟いて おチビさんは去っていった
地べたに這い蹲らされるのは
やっぱりムカついたけれど
噂に悶え、僕を追って来るまでの姿を
想像すると 笑いが込み上げてきた
「いつか…この蹴りの分も返してやるから
楽しみにしてなよ、おチビさん」
聞こえないだろう呟きを漏らし
僕は、腹の底から笑った
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あとがき(というか楽屋裏)
狐狗狸:ギャグリベンジのつもりが、どうしてか
ほの暗さが見える仕上がりに…
エンヴィー:結局さぁ、無理でしょ?
僕らの絡みでギャグやるのは アンタの技量で
狐狗狸:だってエドに変身するネタをどしても
書いてみたかったし…
アル:何ていうか、陰湿ないじめっ子だよね
エンヴィーって
エド:人の顔に落書きするわ 暴力振るうわ
無理やり女装させるわウンザリだぜ…
狐狗狸:…どんなカッコさせてたんだろ?
どこかと被ってるかもしれませんが、気のせいです
相変わらずの駄文仕様 毎度深くお詫びします
読者様 読んでいただきありがとうございました!