君がなければ僕は輝けない
月は太陽にそういうけれど
太陽は月の心に気づかず 全てを照らす
どうか、早く気づいてこの恋に
〜「月と太陽の歌」〜
「こんな所に呼び出して 用って何だよロンドン」
ある時、ロンドンに呼び出され三志郎は
近場の公園に足を運んだ
それなりに広く 昼間は子供がよく利用する場所だが
今は黄昏時に近いため、人影は全くない
呼び出された三志郎と ロンドン以外は
町の風景が見渡せる高台の木組みの柵を背に
ロンドンが、三志郎を真剣な目で見つめる
いつもよりも気迫のこもるその姿に
三志郎は少し緊張していた
「わざわざ呼んだのは他でもないさ…三志郎」
ニッと笑って、ロンドンは颯爽とギターを取り出した
「新作の歌が出来たから、ぜひ聴いてくれよ!」
「え」
いつになく真剣な様子とは裏腹のその理由に
三志郎は拍子抜けすると同時に 少し身を引いた
ロンドンはギタリストを目指していて
ギターはプロ並みの腕前なのだが
肝心の歌は ハッキリ言って音痴なのだ
…だからこそ妖逆門で優勝し、音痴を治して
自分に誇りを持とうと参加している
「わざわざ呼び出した用事がそれかよ…いつも
げぇむで会うたびに歌ったりするじゃんか」
「何だよその不服そうな顔は、今回は
歌詞が特別なんだよ」
三志郎の反応にムッとするロンドン
「でもさー…」
「一旦呼び出しに応じといて 断るなんて
COOLじゃない真似はしないよな?」
ロンドンが挑発気味に言うも、三志郎は
まったく乗り気ではない
断るべきかどうか悩んでいるようだ
「頼む どうしても聴いてもらいたいんだよ!」
熱心に何度も頼み込むロンドンの姿を前に
三志郎は、断ることが出来なかった
「わかったよ、聴かせてくれよ」
「オッケー!」
嬉しそうな顔をして、ロンドンはギターをかき鳴らし
その旋律にあわせて歌を口ずさみ始めた
「どうだった 僕の新曲」
一通り弾き終えて、ロンドンがたずねる
「んー 歌声は相変わらずだったんだけどさ
歌詞は、結構カッコよかったぜ」
「だろ!大分前から考えていたCOOLな歌詞だからな」
三志郎の言葉に ロンドンは満足げに微笑む
歌詞の内容は、太陽に恋した月が
その気持ちに気づいてもらおうとがんばる
比喩的なラブソング
軽快かつロック調で歌われるその歌は
ロンドンに似合った格好いいものだった
「でもさロンドン、気になることがあるんだけど」
ギターをしまうロンドンに三志郎がたずねる
「なんだい?」
「さっきの歌 太陽と月は結局どうなるんだ?」
歌詞は、太陽が月の気持ちに気づく所で終わっていた
ロンドンはふっと笑って 三志郎に近づく
「…結末は これから決まるんだよ」
「なんで?気になるじゃんかよ」
疑問符を頭に浮かべる三志郎に、ロンドンは
顔を間近に近づけてささやいた
「君が太陽で 僕が月だから」
頬を少し赤く染めながら、ロンドンが呟く
しかし 三志郎は首をかしげて
「え、どういうこと?」
「ああもう鈍いなお前って本当!」
苛立ったように叫ぶロンドンに感化され
三志郎も反論する
「鈍いって何だよ!」
「そのまんまの意味だ 僕が言いたいのは」
そこで言葉を遮ると、ロンドンが
三志郎の頬に手を沿え 頬にキスをした
「こういうこと」
「…え、えええええ!?」
いきなりの不意打ちに赤い顔を抑える三志郎
ロンドンがクスクス笑い、
「帽子とお揃いで 夕日みたいに赤い顔してるぜ?」
「なっ、か からかうなよ!!」
赤い顔のまま憤慨する三志郎をその場に残し
「それじゃ、用件も済ましたし
僕はCOOLに退散するさ じゃーな!」
不敵な笑みで ロンドンは公園を後にした
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あとがき(というか楽屋裏)
狐狗狸:ががっと書いたロン三…のようなもの
ロンドン:この話も出来がCOOLじゃないね
大体なんだよ この変な展開は
狐狗狸:いや ロンドンが三志郎にラブソングを
聴かせる感じで行こうかな〜とか漠然と考えて執筆を
ロンドン:それにしたって冒頭の歌詞にセンスがあっても
いいじゃないか、あと音痴とかは余計だ
狐狗狸:センスがないのは謝るけど、音痴は事実でしょ
甘めでもギャグでもない中途半端な出来でスイマセン
読者様、読んでいただきありがとうございました〜