春になっても、相変わらず懐具合は
ちぃとも温まりゃしねぇ


思わず遠い目をしていたら隣のアゴ美が





もうちょっとやる気出しなさいっつの!
あんた仕事ナメてんのパー子!」


やったらツバ飛ばして怒鳴るから疲労度が増す







最近はレイトショーだか何だか知らねぇが


宵が深まるにつれ、中の灯りが力を弱める





"間接照明での薄暗さでイイ感じの雰囲気
生み出してるのよ"とかほざいてたが


単に電気代ケチってるだけだろ





「地の文でグチ叩いてるヒマがあったら
腰にもっと力入れなさいよぉ!」


「だからこの気だるさがアタイの売りなの
てかヅラ子どしたのアゴ美ぃ、サボり?」


「休みよ休m…あずみじゃボケェェェ!





トーンが無駄に一オクターブ上がった所で

西郷のオッサンがにじり寄ってくる





「ちょっとパー子ぉ、今しがた新人の子が
入ったからあんたが色々教えてあげてよ」


新人んん?"被害者"の間違ぇだろがバケ


「それ以上言ったら潰すわよ?」


「す…スンマセンした」





入りな!と言われてやって来たのは


黒い髪にややキツい目つきの…





「「え゛」」











「相手のガードとルクスは比例してるってさ」











何とも形容しがたい面をしたまま


パー子とか呼ばれていた奴が固まる


…いや、恐らくきっと多分オレも今
鏡を見たら似たような面してるんだろうな





何でって言われたら困るんだが


ミョーに暗い照明のせいなのか
普段と違う異様な雰囲気のせいか分からんが


目の前にいる相手が、よく知っている
忌々しいアイツにひどく似ている気がする

佇まいとか…面とか目つきとか





「あらどうしたのよマヨ子ぉ?
パー子に借金でもあったのかしら?」


「い、いえそう言うわけでは…所であの
アナタ 最近どこかで会いませんでした?」


「あらやぁだぁ〜また縄文式のナンパ?
江戸っ娘にそれは通用しないんだからね
このおバカさぁんv」


あ、ムカつくコイツ…アイツじゃなくても
後で一発ブン殴ろうかな





"仲良くやってちょうだい"とか言って


オレを連れてきたオッサンが
足音響かせて離れたのを見計らい





ケバケバしいピンクの着物を着込んで
しっかりめかしてる銀髪へ小さくささやく







「……万事屋か?」


「あ、やっぱ大串君?何してんの
そんなバッチリめかし込んで」


誰が大串だ オレだって好き好んで
こんなトコに放り込まれたんじゃねぇ…」





買い物帰りで化粧品落っことして
困ってたオッサンを助けた


…そこまでなら土方君の仕事としては
とても真っ当で、当たり前の展開だ






でも それでオッサンに擦り寄られて


思わず"化け物"っつっちゃったのが
色んな意味で過ちだったそうな





「…総悟や近藤さんにゃ絶対ぇ言うなよ」


「ああうん…分かってるよ、仕方ねぇよ
不可抗力だよそいつぁ」


アレ?いつもならここで嫌味の一つや二つ
飛ばしててもおかしくねぇのに


何でオレ肯定しちゃってんだろ…





まぁ、似たような経緯を体験してる
被害者だからってのもあるだろうし


そのー何だ?青緑の着物と、シャドウ入った
コイツの姿があまりに似合いすぎてんのが

ものすごくその…哀れ、だから…





武士の情けって奴だなコレは、うん







「二人ともぉ〜なに油売ってるのよぉ
早い所踊りの練習しなさいよ」



「「へ…ああ、はい」」





とまぁ我ながら腑抜けた返事をしたのは

奴らしくもない台詞が出たからであって





後々、指導と称して何らかの嫌がらせや
嫌味が飛んでくる可能性を覚悟して


気が重いながらも身体を動かしていたが…







「やっぱり鍛えてるだけあってか、踊りの
軸にブレがねぇ…スゴイわマヨ子ちゃん」


「べっ別に褒められても嬉しくねぇ…わよ」





聞こえてくるのはごく当たり前の
振り付けの指示と、ぎこちない言葉のみ







一体この男…何を考えてやがるんだ?


薄暗さと慣れない状況下にオレを追い込んで

最も屈辱的な姿でも晒すのを狙っているのか?





開いた口から零した言葉はけれども


何故か、疑いの類ではなかった





「ね、ねぇパー子…さん アンタは
ここでの仕事も長いのか?」


、ええまぁ…色々あってね」





聞きたい台詞はこんな事じゃないハズだ





だけれど、仄かに薄暗い周囲と相対して
際立つコイツの顔立ち


長く目に留めるのがためらわれて


「へぇ…大したもんだな、そっちこそ」





何ぞと適当な言葉で茶を濁す







「え、あ…うん…」





今のってももも、もしかして褒めてんの?


何この子 さっきからオレにピンポイントで
ツンデレてきてない!?


いやいや落ち着けオレ、be cool be cool
変に動揺し過ぎ おかしいだろ


こいつ男だし真撰組副長とかいう
偉そうな立場だし実際ムカつく奴だし

瞳孔開いてっし マヨラーだし…





でも、元々の面が整ってるからか
やたらと女装似合うんだよなーこいつも


いやだからその思考がおかしいだろ!







何なの今日のオレのこの思考…あ、アレか





"暗い部屋の中に男女のカップルを
ぶち込んだらいいムードに"
ってー奴か





…ってそう考えてる時点で終わってるぅぅ!







「……お、オィちょっと大丈夫か?」


「だ、大丈夫じゃない、かも…」





急に屈んだから何事かと声をかけりゃ


更に普段じゃあり得ねぇ弱々しい声音で
そう呟かれてオレも面食らってしまう


らしくねぇ…いつものあの嫌みったらしい
ふてぶてしさは何処行きやがった?





同じ男で万事屋なんぞと言う怪しげで
いい加減な仕事を生業としている

糖分過剰摂取気味の腹立つ相手が


思わず手を貸したくなるぐらいには
頼り無さそうで儚げに見えるのは





…きっとこの薄暗さが見せる、幻覚









「ちょおっと二人とも!体調が悪いなら
少し休んでなさいな!!」






しばらく固まっていたままのオレ達は
半ば強制的に控え室へと引っ張られ





二人きりの空間でロクに口も利けぬまま







…尻の座りの悪さと共に頭を抱えて、想う





((せめてここが、相手の面が
ぼやける位に暗ければいいのに))









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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:銀さんのヘタレ度が増していたとしても
土(?)→←←銀て形だとしても土銀です


銀時:いやコレ順番逆でも差し支えなくね?


狐狗狸:土銀です(キッパリ)


土方:お互いの視点が混じった形であっても
両方女装してても、そこは譲らねぇのか


狐狗狸:譲りませんし譲れません
誰が何と言おうと展開がアレだろうと土銀です!


銀時:こんな情けないトコ認めねぇよオレぁ?


土方:テメェが情けねぇダメ人間なのは
今に始まった事じゃねぇだろうが


狐狗狸:…やっぱり暗い室内でないと
ケンカップル―ごばぁ!(Wパンチ喰らい)




リバ乗せ初とか土方オンリー視点無いとか
色々ありますが、土銀です(しつこい)


読者様 読んでいただきありがとうございました!