それは、あるげぇむが始まる少し前の出来事







逆日本の会場につき、辺りを散策し始めて
数分もたたないうちに









強い突風が 俺の頭から帽子をさらった







「あっ…!」







俺は頭の傷を手で隠すように抑えながら、
風に乗って流れていく 青い帽子を追いかける









誰かに傷を見られやしないかと思うと ヒヤヒヤする









風が勢いを失って、帽子が落ちる







ちょうど赤い帽子を抑えた男の子の目の前で









ん?何だこの帽子?」







男の子が帽子を摘み上げたと同時に







俺が後ろから帽子を取り上げる







「ゴメンね、これ 俺の帽子だから」





男の子がハッとして振り向いた時には
もう俺は既に帽子をしっかりとかぶっていた





「あ、驚かせてゴメン 急に帽子が
飛んでっちゃったから慌てて追いかけてたんだ」







言って 俺はいつものように笑う









よかった、傷は見られなかったみたいだ







「帽子拾ってくれてありがとう、何かお礼しなくちゃね」







男の子はしばらく俺を見つめて こう言った







「なあ、お前もぷれい屋なのか?名前 教えてくれよ」


「…俺の名前は っていうんだ
漢字で書くと こんな字だね」







言って そこらに落ちてた枝を拾って
俺は地面に自分の名前を書く







か…って呼んでいいか?」


「いいよ」







笑いかけると 男の子は眩しい位の笑顔を見せた







「オレの名前は多門 三志郎!よろしくな!!」











〜「友達の意味」〜











三志郎君も げぇむが始まるまでヒマだったから
時間つぶしにこの辺を散策してたらしい







「しっかし この辺自販機とかないなー
ノド渇いてきたよ、オレ」







うーと呟く三志郎君に
俺はポシェットからあるビンを出して







「これを飲むかい?くせは強いけど身体にはすごくいいよ」


「おっ ありがとー 早速もらうな?」







三志郎君は特製ドリンクを一気に飲み干すと、







「ブフアァァッ!?」







顔色をまともに変えて噴きだした







「うわ 何コレ、スゲー味フエも飲んでみ?」











三志郎君がそう言った途端、彼の影から





すうっと個魔の男の人が出てくる









…普通 個魔は取り付いたぷれい屋にしか
見えないんだけれど







俺の個魔は少し特殊で、彼女の力を借りて
個魔を見えるようにしてもらったりしてる







だから 今日は他の個魔の姿もバッチリ見える









うぐ…何だこの味は」


「だろ この味はありえないよな」







顔をしかめた個魔に三志郎君は同意する







「俺はそれ愛飲してるんだけど、どうやら
お気に召さなかったみたいだね」


「ごめんなー


「いいよいいよ、気にしないで
それより げぇむが始まるまで君と話がしたいな」










話していくうちに 俺は三志郎君に親近感を感じていた







素直で明るくて元気で、今まで見てきた
ぷれい屋みたいにガツガツしてなくて









「オレの願いは、妖怪と友達になること かな?」







笑いながら言う、彼の行動も願いも







俺には初めて見るものばかりだった









「羨ましいな…俺には 願いがないんだ」


「へぇー、じゃあなんでは妖逆門に
参加しようと思ったんだ?」


「げぇむのこととか色々知りたいなって思ったから
…単純に知らない事を知るのって面白いだろ?」







三志郎君は目を輝かせて頷く







わかるわかる!知らなかった事を知ると
世界が広がって楽しいよな!!」


「そうそう、嬉しいな分かってくれる人がいて―」





『みんな〜ぁ げぇむが始まるわよん♪』







あたり一面に、げぇむの開始を告げる
ねいどの声が響き渡った













今回のげぇむは"どろけい"







制限時間内に要所要所に置いてある
"ねいどトロフィー"









一つでいいから鬼の陣地からゴールへ持ってきたら勝ち
(鬼やぷれい屋を傷つけると失格)







トロフィーを持っていると優先的にけいさつ役の
鬼に追われ 捕まるとオリのエリアに飛ばされる







けど、捕まってない誰かが鬼の目を盗んで
オリに触れれば中の人は開放されるらしい













俺と三志郎君は一緒に行動し







すぐにトロフィーの置かれた台座を見つけたけど









周囲に警備の鬼たちも集中していたから
とっさに二人で隠れて 様子をうかがう







「あれがトロフィーだよな…どうやって
鬼たちからあれを取ろうか 


「うーん…この手はどうかな?」







俺は三志郎君に耳打ちをする







いいじゃん!さっそくやろうぜ!」


「いいの?俺は逆でも構わないよ?」


「いいっていいって、俺よりの方が
上手くやってくれる気がするし!」


「じゃあ…頼むね?」







三志郎君は頷いて 別の方向へと移動する









俺も撃符と撃盤を取り出して









「出ておいで…山精」







妖を召喚し、小声で短く命令して 待つ









まず、横手へと移動した三志郎君が 鬼たちに姿を現した







「へっへーん こっちだこっち!」







言いながらトロフィーに近づく三志郎君に
周囲にいた鬼たちが殺到する









三志郎君が鬼たちを引き付け、移動して







トロフィーへの警備が手薄になったのを見計らい
俺は一直線に台座へと向かった







動きを察知して、鬼たちの何人かが





台座の前へと立ちふさがり そのまま勢いで俺へと向かう







「危ない !」


「大丈夫だよ」







言って 俺は少し横へ移動する









うまくガードしたつもりだろうけど、甘いよ







「木精 ツタを引いて」







召喚した妖にそう告げると、妖はこくりと頷く







台座の下から這い登るツタがトロフィーを絡め取り









「こっちに投げて」







ツタがしなり、トロフィーが勢い良く
こちらに投げられ それをなんとかキャッチした









ナーイス!


「三志郎君 逃げるよ!」







俺と三志郎君はお互い一定の距離を保ち、







「三志郎君 パス!」


「うわわわっ、 パスっ!」







トロフィーを投げ渡して鬼の追跡をかわしながら
ゴールへ向かう













この調子でなら上手く辿り着ける







そう思っていた矢先、俺は足を止めた









「うわっ 、ヤバイこの先は
通行止めだ!横へ行こ…!?」







通行止めされた道を避けた三志郎君が









周囲から次々と姿を見せる鬼たちの姿に
驚いて、少し身を引く







「どうやら…敵も バカじゃないみたいだね」











少しずつ包囲されていく俺達







このままでは、二人とも捕まってしまう









―なら、俺が囮になって捕まれば 三志郎君が進める







咄嗟に そう思った









彼は、ここに捕まるぷれい屋達みたいに
願いの為に他人を押しのけるタイプじゃなかった







だから 勝たせてあげたくなったんだろう









「ねぇ三志郎君、さっきの作戦で突破しよう
今度は俺が囮になるよ」


「えっ でも…」


「いいから」







微笑むと 三志郎君はじっとこっちを見て







「じゃあ 頼んだぜ、!」









トロフィーを受け取った瞬間







俺は 鬼たちの間を縫って走る







なるべく多くの鬼を、俺の方に引き付けて
三志郎君が逃げやすい事を確認し







「三志郎君 トロフィー、受け止めて!」









鬼の手が 俺を捕まえる寸前に







俺は三志郎君に向けてトロフィーを投げる









…!!」









オリへと飛ばされる瞬間、戸惑い顔の三志郎君が







しっかりトロフィーをキャッチしたのを見た













オリの中は、不満を言うぷれい屋で一杯だった







単純に鬼に捕まっただけでなく 他のぷれい屋に
騙された子達も多くて







げぇむクリアの声が聞こえる度、





その不満の声は 一層高まる









オリの中の様子から 目を背けるように
俺は目を瞑って、三志郎君のことを考えていた







…もう そろそろゴールに着いた頃かな?





















聞こえてきた声に目を開けると、







オリの向こう側から三志郎君が
こっちに近づいてきていた









「え、三志郎君!?」







俺が声を上げると、三志郎君は指に手を当てて







しー 今助けるから待って…うわっ
見つかっちまった!!」









三志郎君がすぐさまオリから離れるけど、鬼が
素早く三志郎君を取り囲み 彼を捕まえ







瞬間 オリの中に三志郎君が現れた







トロフィーは没収されて 鬼たちの手の中だ









「あーあ、捕まっちゃったな オレも」







残念そうな言い方とは裏腹に
三志郎君は楽しそうに笑ってそう言うので









俺は少し驚いた







「どうして俺を助けに来てくれたの?」


「へ?どうしてって?」









思わず言ってしまったことを後悔したけど







一度言ったことはもう取り消せない







それに、どうしても聞きたかった









「だって げぇむで死ぬわけじゃないし
俺をほっといてゴールにいけば、間違いなく君が勝てたのに」











今まで見てきたぷれい屋なら
間違いなく俺をほっといて勝ちに向かってた







なのに、彼はわざわざ俺を助けに来てくれた











三志郎君はムッとした顔をしながら 言った









ほっとけるわけねぇだろ!は友達なんだからよ!!」


「友達…俺が?


「当たり前だろ!一緒にトロフィーとったし
俺を助けようとしてくれたんだから!!」








強く言い切る三志郎君の目は真っ直ぐで







俺を ちゃんと正面から見ていた







「本当は、その ちゃんと助けたかったんだけど
捕まっちまってごめんなー


「ううん…その気持ちだけで嬉しいよ、
ありがとう 三志郎君」









何年ぶりだろう







心から こんなに笑ったのは













俺は 初めて本当の友達を見つけた








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:「微笑みのカルマ」で言ってたと三志郎の
出会い話を、ここで書いてみました


三志郎:そういや あん時の風はすごかったな〜


狐狗狸:帽子飛ばされないように抑えてたもんね君も


フエ:あんなマズイもの よくあのニィちゃん
平気な顔で飲めるよな


狐狗狸:基本味覚音痴じゃないけど、本人の趣向の問題かな
あと 慣れってのもあるし


三志郎:なんでオレは一鬼とか召喚してないのに
は妖召喚してるの?


狐狗狸:君の持ち札は皆好戦的だし 鬼を傷つけずに
トロフィーを取りにいくって器用な真似は出来ないでしょ


三志郎:まあそうだけどさー


フエ:…やはり今回のげぇむもオリジナルなのか?


狐狗狸:その通り〜別にアニメと同じげぇむに参加してても
いいと思うけれど、絡み考える時間が…ね




何かこう 毎度ワンパターンでスイマセン


様、読んでいただきありがとうございました〜