個魔達の集まりに、末席で参加して
お開きになってほっとしながら の元へ
帰ろうとふよふよ進んでいたら
いきなり何かに肩を叩かれて
「○§×△〓□〆※≦∂塔ヲっ〜!?」
僕は飛び上がって 思い切りその場から
逃げ出そうとした
「落ち着けよ、奇声を上げて逃げるほど
驚くもんか 今のは?」
でも 後ろから聞こえたのは聞き覚えのある声で
止まって、恐る恐る振り向くと
苦々しい顔をしたフエさんが頭を掻いていた
〜「狂気さえ包むなら」〜
「ふっフエさん、おおお脅かさないでください…」
まだ鼓動の早い心臓を抑えつつ
(妖に心臓はないかもしれないけど、気分で)
僕は震える声でフエさんにそう言う
「驚いたのはこっちだ 近頃馴染みの顔だから
肩を叩いたらあれは流石にどうかと思うが?」
明らかにフエさんが不機嫌な顔になる
ああ 怒らせちゃったかな…
「ごめんなさい…その、僕 人との
お付き合いとか…苦手で…」
フエさんがため息混じりに呟く
「そんなんでよくあのニィちゃんの個魔になれたな」
「逆です…でなければ、無理だったと
…思い、ます」
「ほう どういう意味だ?」
言われて、僕は説明しようとするけれど
言葉が 上手く出てこない
フエさんは、怒るでもなく
頬杖をつきつつ僕のほうをじっと見つめてた
「まぁいい、どうせ次のげぇむが始まるまで
退屈してたとこだ…ゆっくりしゃべれよ」
僕はこくこくと頷くと、ゆっくりと
思い出しながら 言葉を紡ぎ始めた
その時まで僕は たった一人だった
元々僕は鏡魔だった
僕は 中国という国の古い鏡に封印されていて
その鏡が、日本に骨董品としてやってきた
強い呪によって閉じ込められた 歪んだ力を持つ、鏡魔
生み出された理由はもう忘れてしまって、生み出した
筈の人も いなくなってしまって
鏡から出られず一人ぼっち
僕の閉じ込められた鏡を買ったお客が
次々と 僕の姿を見た
寂しくて、お客を引きずり込んだけど
皆 凍えて死んでしまった
「鏡の中に入った奴が出られなくなったのは
よく聞くが…凍えるのは初めてだな」
「僕の宿る鏡の中は…何故だか、冷たいんです」
ふぅん、とフエさんはやる気なく返事を返した
やがて噂が立ち、僕が映ることで
怯えて骨董屋に返すお客も増え…
『呪われた鏡』として その鏡は
いつまでも骨董屋の片隅に置き去りにされていた
埃を被って一人 このまま朽ちてしまいそうだった
真っ暗な骨董屋に満月の月明かりが差し込み
薄ぼんやりとした室内の輪郭が浮かぶあの日
声が、聞こえた
『お前に チャンスをやろう』
声―恐らく 逆門は、そう言って
僕を鏡の封印から解放した
『次の満月の日までに、げぇむに参加する
ぷれい屋を連れてきたら その者の個魔にしよう』
僕は 声に訊ねる
「出来なけレバ…?」
『撃符に封じ 二度と出られず
ただ使われるだけの存在になる』
二度と出られず、使われるだけの存在
その寂しさに 僕は身体を振るわせた
声から、妖逆門についてのすべての事を聞いて
僕は その日から鏡から鏡を渡り歩いて
ぷれい屋になってくれそうな人を見つけては
その人の使う鏡に姿を現し
或いはその鏡から身体を半分出して
その人を勧誘した
「でも…ぷれい屋になってくれそうな人は、
現れませんでした」
「そりゃあな その現れ方は大人でも
ビビルだろネェちゃん」
フエさんの言う通り
その人達はみんな、僕が鏡に姿を映したり
身体を出した瞬間に
怯えた声を上げて逃げたり
叫んで攻撃してきたり
酷い時には払おうとまでして、
命からがら逃げた事さえもあった
約束の日は刻々と迫っているのに
ぷれい屋となってくれる子供が見つからなくて
でも また、閉じ込められてしまうのも嫌で
心の中がグチャグチャになって
―誰でモイい、鏡の中ニ引き込んでシマエ―
そう思って とあるマンションの鏡の中に現れた
そこに、がいた
「…ニィちゃんは 驚かなかったろ」
落ち着いたフエさんの言葉に、僕は頷いて
「はい、それどころか 僕を真っ直ぐ
見てくれてたんです…」
「あなたは…僕が 怖くなインですカ?」
鏡から半分顔を出した僕に、
は微笑んで 首を振った
「怖がる姿を期待してたのなら悪いけど…俺には
怖いって感情 もう無いから」
「…どうして?」
の微笑みが、寂しそうに見えた
「俺には、あの時から 笑顔を作る以外の
感情が無いからさ」
ああ この人も、一人ぼっちだったんだ
ゆっくりと 僕は言葉を放つ
「あなたは…叶えたい願いはありますか?」
「願いか 特にはないな」
「やってみたい事とか…ないん、ですか?」
問いかけに、が少し悩んで
「知らない事を見たり聞いたりするのは
嫌いじゃないけどね」
ニコ、と笑顔を作る
今まで 僕の話をまともに
聞いてくれる人は誰もいなかった
「…ぷれい屋になって、妖逆門に参加すれば
あなたの知らない事 たくさん会えると思いますよ?」
「例えば、君みたいな人とか?」
だけど、目の前のこの人なら
「面白そうだね、詳しく聞かせて欲しいな」
この不思議な人なら 聞いてくれるかも
「僕の説明を一生懸命聞いてくれたのは
が初めてで…嬉しかったんです」
フエさんが 驚いたように目を開いて
「案外懐の広いニィちゃんだな、普通は
そんな怪しげな奴と打ち解けないだろ」
「…そこがのいい所なんです!」
を貶されたような気がして、僕は
思わず強い口調で言うと
フエさんが呆れたような顔をして
「わかったわかった、そこまで声を
荒げなくてもいいだろ」
その一言で我に返って、僕は顔を赤くする
「すっすみません…つい…」
のこととはいえ、僕ったら
人前で声を荒げるなんて…恥ずかしい…
「で、話の続きは?」
先を促されて、僕はしどろもどろになりながらも
言葉を続けた
は説明を最後まで聞いて、興味を
示しているみたいだった
「……妖逆門に 参加、しませんか?」
不安と期待を込めて 僕は言う
「…いいよ、君の名前は?」
「僕は…、と 言います」
「いい名前だね、俺は
これからよろしく 」
柔らかく微笑んで 差し出された手
その温度を、向けられた笑顔を見ながら
僕は心の中で誓った
例え僕がどんな目に遭っても、
との記憶だけは 守って見せる…
「だって はひとりぼっちだった
僕を救った、大切な人だから…」
「大切な人 か…」
じっと見つめる視線が妙に不安を感じさせて
「…おかしい、ですか?」
聞いた瞬間 フエさんは僕から
やや視線を外して、軽く言った
「いいんじゃねぇか?ぷれい屋を
大切に思う個魔がいるってのも 変わってて」
多分、これは ほめられてるんだよ、ね…?
勘違いかもしれなくても、僕は 少し嬉しくなった
「あの…話、聞いてくれて あり、がとう…ござい ました」
「ん ああ、ヒマだったしな」
そのまま ちょっと間が空いてから
「まあ話も聞いたし そろそろお互いに
ぷれい屋の所に戻るとしようや…じゃあな」
言って、フエさんがさっさと移動してしまった
僕も戻りながら、心の中で呟く
、げぇむや皆の事…
僕の事、覚えていてね
――――――――――――――――――――――――――――
あとがき(というか楽屋裏)
狐狗狸:との過去語りのつもりで書いてたはずなのに…
フエ:出来上がったらいつの間にか、オレの夢が
混じっていたと
狐狗狸:うーむ大誤算、は脇役キャラだったはずなのに…
フエ:いいんじゃねぇ この話は一応、夢ってことに
なってるはずだしな
狐狗狸:まあそうなんだけどーあくまで主役はだし
それにこんな似非臭いフエで大丈夫なのかと
フエ:それを言ったらおしまいだろ、まぁ
自覚しねぇよりはマシだがな
フエの口調 微妙にムズかったです…
様、読んでいただきありがとうございました〜