世間的にはクリスマス・イブの 夜の時刻







「今日は折角のクリスマス・イブだから
皆にスペシャルステージを用意したわよん♪」









妖逆門の進行役、ねいどがそう言い出し
皆を逆新潟に集めて げぇむの説明を始めた







何でも サンタから多くプレゼントを貰って
先にゴールした者に何かいい商品がもらえるとの事





プレゼントの横取りや妨害 貰ったプレゼントの
使用も可能で 偽サンタまでいるというルールだが







季節感満点のこのげぇむに、皆のテンションは高まった











「いつもはろくでもないげぇむばっかりだけど…
今回は楽しいげぇむになりそうね♪」







元からお金や物に執着のあったアキは げぇむが
開始される既にその前から目をキラキラさせていた









「アキちゃん…やる気満々なのはいいけど 無茶しないでね」







影からすぅっと出てきた個魔のハルが、心配そうに呟いた











〜「恐怖の聖夜」〜











げぇむ開始から 十分時間が経過していたが
まだ一人としてゴール地点にたどり着けたものがいない







それもその筈…プレゼントの妨害や偽サンタ以上に
本物サンタのプレゼントにハズレがあるからだ





それゆえ必然的にプレゼントの奪い合い
サンタ探しに躍起になるぷれい屋も多くなる







…アキもその例に漏れず かなり体力を奪われていた











「あ…甘く見てたわ……このげぇむ…」





「ねぇアキちゃん 流石にこの量は一寸多すぎない?
少し誰かにあげるとかした方が…」









ハルが両手に抱えたプレゼントを少し持ち上げる





彼女が持っている量は既に山となっていて
アキも両脇にしっかりと抱えている







ヤダ!そんな事したら負けちゃうもん!!」







キッパリ言い切って アキは肩で息をしつつ林の中を歩く









「……ちょっと欲張りすぎな気もするけど…」







小さく呟くと ふよふよと後に続くハル











アキの行く手に突如、人影が踊り出た





「またプレゼント横取りにきたぷれい屋!?」







アキがプレゼントを左腕にまとめ、左の手と
右手で咄嗟に撃盤と撃符を掴んだ









だが、彼女の目の前に現れたのはーだった









「メリークリスマス!あ、アキちゃん」


「Σえ !?その格好は!!?









の何時もの青いニット帽は、赤いサンタ帽
そして服装もサンタクロース衣装そのものだった





…ただし、いつものウェストポーチはちゃんと腰についている







「ヤダなぁ 今日はクリスマスだよ?」







まあ正確にはイブだけど、と付け加えてから





「俺がサンタとして この辺をうろついてるんだよ」









今だ状況を掴めず 呆気に取られたまま
アキが思わず呟いた







「サンタって…トナカイいないじゃん」


「トナカイはいるよ、 出ておいで」







呼びかけに答え、ウェストポーチの鏡からが出て来る





しかし アキの目にはまだは見えない







「って そこにいたとしてもあたしには
見えないんだけど
、アンタの個魔」


「まぁ待ってよ 、姿を見せてあげて」






宥めるようにアキにそう言ってから
は再びに向き直る





は身体をもじもじとさせて頬を赤らめている







「でも…は…恥ずかしいです
こんな格好……………」





似合ってるし可愛いよ、自信持って出ておいで」









やわらかく言うの言葉に、観念したように
"姿を現した"





アキとハルが驚いてを見つめる









「確かに似合う…けどさ、
これトナカイって言うか…コスプレでしょ;」







アキの言う通り、の衣装はトナカイのコスチュ―ム
(ご丁寧に角と首の鈴つき)であった





顔を真っ赤にして 鏡に引っ込んでしまった







「そうだと思うよ 俺のもコスプレ衣装らしいし」





ハハ、と和やかに笑うを軽く睨んで





「そんな事はどうでもいいけど、何で
サンタをやっているのか説明してちょうだい?







そう言ったアキに がこめかみを掻きつつ説明を始めた







「実はねいどが 人手が足りないから俺にサンタ役を
しろって言ったんで、面白そうだからやってみたんだ」













げぇむが始まる 1時間位前







ちゃ〜ん、あなた サンタやってみない?


「ん、どういう意味かな ねいど?」







鼻と鼻がつく位の至近距離で現れたにもかかわらず


ニコニコと目の前の相手に聞き返す





反応のなさに 興味を無くしたように
ねいどがひょいっと距離を取って続ける









「実はあと1時間後に 逆新潟でクリスマスの
特別げぇむをするんだけど、どうせなら
ぷれい屋のサンタを混ぜたら面白いと思ってね」







その言葉に興味が湧いたのかの眼がかすかに輝く







「ふんふん、それで?」









大体のルールと概要を聞いて 迷う事無く
サンタを引き受けたのだった













「ーで、サンタになったぷれい屋は逆にプレゼントを
一番早く全部配れたら勝ちで、こっちも偽サンタの
妨害が来るらしいんだけど これが凄くてさー」





「ふーん 結構手が込んでるのね、
ぷれい屋のサンタって他にもいるの?」


「うん、俺の他にも何人かいるみたい」







アキの言葉に頷きつつ、がウェストポーチをまさぐる







「そういう訳で 俺、後少しでプレゼント
配り終えるから選んでね」


「Σアンタの手持ちから選ぶの!?」


「そう ねいどから貰った分は無くなったけど
余計にアイテム持ってるぷれい屋はある程度
自分の私物を差し出すことになってるんだよね」







以前 トンでもない代物を飲まされた前科があるだけに
何が出るかわからず、アキは警戒する









がウェストポーチから取り出したのは、
全く同じような市販のドリンク剤のビン





ただ、ラベルは赤と青の二つ







「片方は実証済みの体力を回復する特製ドリンク、
もう片方は まだ実証してない付加価値つきの特製ドリンク」









ビンをひとつずつ手にとって が説明をする







付加価値って?」





「体力回復とは別に しばらく身体能力が上がって
何でもできる無敵の超人になれるけど
どんな副作用が出るかも解らない」







そこで一旦言葉を切って 涼やかな笑みを浮かべて
が目の前の相手に問い掛ける







「…どうする?どっちを貰う?











その選択は、かなりアキの頭を悩ませた









いつ妨害の手が現れるか分からないこの状況では
あまりグズグズしていられない





そして、自分の今の状態を考えても 恐らく
どちらかを飲まなければ切り抜けられないだろう







(どっちも体が回復する…付加価値つきのは
魅力的だけど、副作用が…











沈黙が続く中、横手から偽サンタがやって来た







「プレゼント寄越せプレゼント寄越せ!」







素早い動きで 見る間に偽サンタは
アキ達との距離を詰めてきた









「っじゃあ、こっちもらうわ!







と言って アキは青いラベル―付加価値吐きの方を
手にとり、素早く飲み干した





途端 嘘のように身体の疲れが取れる







「すごい…元気がわいてきた!
よーし あんなの一撃で退治してやるわ!!





宣言通り あっという間に撃符で偽サンタを倒し、





「このまま一気にゴールまで目指すわ ありがとね


「うん でも気をつけてね…」







にお礼を言って分かれたアキは、勢いに乗って
ザカザカとゴール地点へ目指す









途中のぷれい屋の妨害も全て 余裕で弾き飛ばす







「凄いわアキちゃん もうすぐそこよ!」







ハルの声に励まされ、アキがゴール地点にたどり着く











「やったぁゴールっ!」







一番先に しかも多くのプレゼントを持って
ゴールした事への達成感で一杯になった時、





異変は起こった









身体中が熱くなったかと思うと…ものすごい勢い
アキの身体が変貌していく







「え、あ、何 何 何――――!?







程なくして アキはボディービルダーも真っ青の
超マッチョ
になっていた





何故か着ていた服も破けずに、である











アキは自分の身体をしばらく見つめ やがて









「ぎゃあああああぁぁぁぁぁ!!」







盛大な悲鳴をあげた

















アキが目を覚ますと そこは逆新潟ではなく
自宅のベットの上だった















「…って言う変な夢を見たのよ」












げぇむ中、に会えたのでアキは
自分の見た夢を苦笑交じりで語った







もちろん そのげぇむは特別なものでもなければ
の格好も何時もと変わらぬものである







「へぇ〜そうなんだ でも奇遇だな」


「何が?」







嫌な予感を感じつつ アキはに問い掛ける









「ここに丁度 体力回復のドリンク
まだ実験してない特製ドリンクの二本があるんだよね」







ニコニコしながら ポーチから
赤と青のラベルがついたドリンクを取り出す







「クリスマスも近いし、プレゼント代わりに
どっちかあげよう」





の言葉を最後まで待たず







アキは何も言わずにダッシュで逃げ出した








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:妖逆門でもクリスマスネタって事で、このネタを
持って来たんですが…ゴメンねアキちゃん(謝罪)


アキ:夢オチとは言え あたしがマッチョになるなんて…
ゴメンですめば裁判はいらないわ(鬼のように怒)


狐狗狸:ごごごごごめんなさい…オチが上手く思いつかなくて
こうなっちゃったの 本当にゴメン!


アキ:せめて副作用でナイスバディーになるんだったら
の薬 毎回飲むのに…効き目あるし


狐狗狸:そこまで都合よくはないと思いますが(汗)


ハル:…最後 くんの出した薬の効果と副作用って
どんなものだったんですか?


狐狗狸:特に考えてないけどご想像に任せます
少なくとも夢オチと同じでは在りません(笑)




様、読んでいただきありがとうございました〜