人気の無い商店街を行きながら が呟いた







「…それにしても 変化されてる時間が
長すぎると思わない?


「あ、そういえばそうだよ!





がはっとしたように答える





「ねいどに姿を変えられてからもう大分経ってるから
そろそろ 元に戻ってもいいはずなのに…」







は軽く頷くと、アゴに手を当てて考える









「ひょっとしたら この姿から元に戻るには
何か条件が必要なのかもしれない」


「ええっ!!」







淡々とした言葉と対照的に、彼女の声に大きな動揺が交じる







「じゃあ もしそれが分からなきゃ…
ずっとこのままって事!?


「困ったね」


「ってそんなに落ち着いてる場合じゃ―」







言葉半ばで はふいに空を見上げた









「おや 雨が降ってきたみたいだ」







その間にも雨粒が一つ、また一つと地面に落ちる











〜「違和感ゼロキロ(後編)」〜











、カサとか持ってたっけ?」


「ないね あそこに軒下があるから
まだ誰もいないしそこで雨宿りしようかな」







彼がシャッターの下りた店の軒下に駆け込んでから 一拍遅れて


どっと雨が降り出した







「マズイなぁ 傘も持ってないし
視界も制限されるから不利かな?」


「……









が声の方に目を向けると、





そこには傘を差したきみどりが佇んでいた









「君は きみどりちゃん、だったね
どうして俺のことわかったの?」


個魔が、一緒にいるから…」







言いながら きみどりがの隣にいるを指差す







「そっか 君には個魔が見えるんだっけね」









きみどりは 小さく頷く







「わたし…あなたに伝えたいことがあって
それで、やってきたの」


「俺に?一体何を伝えたいんだい?」









きみどりは、の姿をじっと見つめて


意を決したように 口を開いた









「その姿を、元に戻す方法」


「…本当に?」











見つめ返すにきみどりは返事を返して







「あなたの姿を元に戻すには、反転させないと…」





その言葉半ばで きみどりが顔色を変えて
どこかへ走っていってしまった







が声をかける間も無く







「君か、今回のげぇむで捕まえる"女の子"って」





彼の横手から入れ替わるように現れたのは


銀色の髪をして 不敵な笑みを浮かべる男の子









「…君は?」


「僕の名前は 須貝正人







言いながら、彼は撃盤で炎輪を召喚する







「可哀想だけど、今回のルールだからね
ちゃんと捕まってもらうよ?


「悪いけどそれは無理、出ておいで狂…」







が狂骨を召還しようとした矢先、





炎輪が 正人の命を受けて彼に向かってきた





雨の降る路地の方へ飛び出し、それを避けるも
二度、三度と炎輪が向かって来る







「とにかく きみどりちゃんの事も気になるし
君に捕まるわけにはいかない、ごめんね」





言って がバッグから取り出した卵で
煙幕を張る…が







無駄だよ こんな煙幕で僕から
逃げられると思ってるの?」







正人の声と同時に、に向かって
炎輪が突っ込んできた





辛うじて避けるも 彼の追撃は止まらない









「素早い上に気配も読める妖か、厄介だな」





「ほら、人が集まってきた…
大人しく捕まった方がいいと思うよ?









煙幕の向こうで 人の集まる気配と
正人の勝ち誇ったような声が聞こえた











「あれ?正人、お前もいたのか!」


「やぁ三志郎君 君もこのげぇむに参加してたんだ」


「あ ああ…そうなんだけど」











降りつづける雨のせいか 煙幕の効果が段々と薄れていく









路地の真ん中にいるを囲むように
ぷれい屋達の輪が出来ている







その輪の中心に正人が笑みを浮かべて佇み





彼の隣には困惑した顔の三志郎と、命令を待つ炎輪











「あの子大分手強いから 妖召還しておいた方が良いかもよ?」









その言葉に 他のぷれい屋達も一斉に
撃符妖怪を召喚し始める







正人!幾らなんでもそれはやり過ぎじゃ」


「大丈夫だよ三志郎君、これはげぇむだし
目的は彼女を捕まえる事だろ?」





三志郎の目を 正人はじっと見据えて





傷つけようとする奴がいたら、僕が何とかするから 安心してよ」







その言葉に 三志郎が何も言えずに沈黙する











「…どうしようかな」







流石にこの人数と妖を相手に
狂骨一人では しのぐのが難しいらしい











「オレが一番乗りだあぁぁぁー!!」





ぷれい屋の呼んだ妖の一人が飛びかかったのと同時に





ダメェェェぇー――!!







を中心にして 四方の空間に
黒い鏡を出現させた





そこからまばゆいばかりの光が溢れ―









次の瞬間 自分のいた四方の鏡を背に
が佇んでいた











先程まで彼を取り囲んでいたぷれい屋や
撃符妖怪達は 影も形も無い









、今だよ 逃げて!!







状況をすぐに飲み込めず、





呆然としたようにが問いかける







 今の何やったの?」


鏡の内側と外側を反転させて、ぷれい屋と
妖達を一時的に閉じ込めたの!」









耳を澄ますと 確かに鏡の内側から
かすかに「出せー」だのと言った叫びが聞こえる







「でも長くは持たないから 早く…!」











彼女の言葉が途切れた原因は二つ







どうやら 効果の及ぶ範囲のギリギリ外にいたらしく、





正人と三志郎の二人が その場に残っていた事







そして―













「残念だったね さあ大人しく…!?





口を開きかけた正人が 目を見開いて固まった







「……!?お前、その姿!!





続いて三志郎が やはり目を見開いた顔
同様に立ちすくんだ









雨足も弱くなり、辺りに漂う煙幕も
完全に消え去った時


は 彼等の動揺の原因に気付いた







「えっ…嘘 どうして!?
でも、でも、やったぁ!!


「落ち着いて 一体どうしたの?」


 見て!!







嬉しそうに が彼の目の前に鏡を出現させる









は自分の姿をしげしげと見つめた











鏡の中に映るのは 青い帽子を被った
紅茶色の髪の少年
だった









「…あ、俺 戻ってる」





「あ〜あ バレちゃった」







呟きに被せるように 唐突にねいどが出現した







ねいど!どういう事だよ!!」





三志郎が 空中に浮かぶねいどを問い詰める





「実はちゃんにかけた術ね 大きい力使ってるから、
ちょっとやそっとじゃ解けない奴だったのよ」













その後のねいどの説明を要約すると









どうやら鏡魔の力を利用して 一旦自分の姿を
反転させない限り、元に戻れないものだったらしい











そんなのアリかよ!反則だろ!?」


「普通はね でもちゃんの個魔は
元々鏡魔だし、別にいいかと思ってね〜」





「…捕まる前に、元に戻ったから
このげぇむは俺の勝ちでいいのかな?」









の呟きに ねいどは意地悪そうに
ズイッとアップで近づき









「でもちゃん 個魔を使ってぷれい屋達を
閉じ込めたでしょ?だから反則負けー!







その言葉に "姿を現し"てねいどに抗議する







のせいじゃない!アレは僕が勝手にやったの!!


「それには望んでこんなげぇむを
してたわけじゃないじゃないか!!」









と三志郎の言葉に ねいどが多少たじろぎながら







「二人の気持ちはわかるわん でもねぇ
アレはルール違反でしょ〜?」


「ねいどの言う事も一理あるよ、それに
俺もこのげぇむの了承しちゃったし」


「「でっ でも…」」







そこへ 正人の言葉が静かに割り込んできた









「…じゃあ 間を取ってこのげぇむは
無効って事でいいんじゃないかな?」





ねいどがその言葉を 待ってましたとばかりに





いいわねそれ!じゃあこのげぇむは
無効ってことで〜!!」







一方的に宣言すると、鏡の中のぷれい屋たちの
抗議を無視して ねいどは消えた











「結局 なんだったんだよこのげぇむは…」







三志郎が、他のぷれい屋達の気持ちを
代弁するかのような台詞を吐いた















こうして 唐突な思いつきと共に行われたこのげぇむは







同じく唐突に幕を閉じたのだった








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:ようやくこの話を書き終わりました〜長かった!


きみどり:お疲れ様…


正人:それにしても時間かけすぎだよ、僕の出番が
あって良かったけどさ


狐狗狸:そりゃ〜まぁ 一応オールキャラ目差しましたから


三志郎:でも 今回のげぇむ本当に何だったんだよ?


狐狗狸:特に意味はないの、ねいどの気まぐれってことで
許してちょうだいな


ぷれい屋達:許せるか!!(怒)




実はねいどがにかけた術に使った"大きな力"
例の大木のダークサイドパワーって言う裏設定が…


他にもの設定や 妖逆門の伏線とかも
盛り込んでみました


…相変わらずな 駄作でスイマセン


様、読んでいただきありがとうございました〜