「逆日本も 今日も暑いバイ」







私は木陰で涼みながら 日差しを見つめる









日差しを防ぐ事は出来たけれど、





寄ってくる蚊まではどうすることもできなくて







「ああもう、うっとうしか!」





手で追い払っていたら





「あ、ねぇ 君―」







バチン







振り回した手が 後ろの人に当たってしまった









「ごっごめんなさい!」







私は慌てて振り向いて 後ろの人に謝った







「いや、いいんだよ 気にしないで
それよりこの辺に…」





聞き覚えのある声に顔を上げると





そこにいたのは、最近 会った人だった









「あ あなたはあの時、私を助けてくれた…」







彼も 私の顔を覚えていたみたいで







「ああ君か、そう言えば 自己紹介してなかったね
俺は 、皆って呼んでるんだ よろしく」







ニッコリ微笑んで 丁寧な挨拶をしてきた











〜「白昼夢のような一時」〜











「清ちゃんの名前 この字で"さやか"って言うんだ
珍しい名前だね」







自己紹介を終えた後、君が間髪入れずにこう言った







「…そうですか?」





そう言われる事はあまり無くて、思わずそう問い返す





変 なのかな…?







「でも、いい名前だと思うよ」









微笑んでそう言われて 私は顔を真赤にさせてうつむく









「あの あの時は…ごめんなさい
私のせいで大変な事に…」


「ああ、あれね 気にしなくていいよ
ちゃんと元に戻れたから」











彼と会ったのは、少し前のげぇむ







撃符を使い果たしてしまい、襲いかかる妨害妖怪に
追い詰められていた私を助けてくれたのが彼だった









君とは初対面で、あんまりにも





きれいな顔をしていたから







「あの 助けていただいてありがとうございます!
女の方なのに お強いんですね」







てっきり女性だと思ってしまった









彼が少し苦笑しながら







「感謝してもらってる所悪いんだけど…
ゴメン 俺、男なんだ」







そう言った時、凄く驚いたのを憶えている









「ええっそぎゃんべっぴんなのに!?」





つい方言が出てしまった事を思い出し、
恥ずかしさで顔が赤くなる









その後 私のその言葉のせいで
彼はねいどに姿を変えられて





色々と大変なことになっていたみたいだけど…









その時の話を聞かせてもらって





何とか元に戻れたみたいで、少しほっとした











「あの時、清ちゃん 九州の方言でしゃべってたよね
ひょっとして 九州の人なの?」


「そう言う訳じゃないんですけど…」


「その格好、巫女さんだよね 君の本職なの?
他にも色々聞いていい?


「ええ、あ はい…」









私は君と 色々な話をした











隣にいる彼は、一言で言うなら不思議な人だった







叶えてもらう願いを持たずにやって来た人で





悪意はないけれども 何を考えているか全然分からなくて







三志郎君みたいな元気さも、修くんみたいな
強い意志も感じないけど





優しさと揺ぎない何かを 持っていた











更に不思議な事に、







彼が来た途端、それまでうっとうしい位
寄っていた蚊が 見事にいなくなっていた


あれ…どうして…







「どうして俺が来た途端 蚊がいなくなったか、気になるの?」


「何で、わかったんですか!?」







心の中を読まれたかのような問いかけに
私は 驚いて彼の方を見る







「んー敢えて言うなら 何となく?





ちょっとだけ不思議さを通り越して
不気味さを感じさせた





こちらの気持ちが伝わったのか


君が苦笑を交えて、話し始めた







「俺のリストバンド、自分で改造しててさ
右手の奴に薬品散布能力があるんだ」





言いながら 彼は右の手首の黒い布を
私の方に見せる





「だからそれに特製の虫除け入れてるんだ」


「へぇー…すごかとね」







ぽろっと方言が出てしまって、慌てて口を抑えるけど





君はニッコリ微笑んで 気にせず話を続ける







「ちなみに左手は時計がついてて、両方とも
耐熱防水仕様になってるんだよ」







言いながら 彼が左手の布の一部を捲り





そこから時計の文字盤が出てきた







君って…こういうの、好きなんですか?


「うん 改造したり実験したりするの好きで
知り合いには実験バカって言われてるよ」









楽しそうに話す姿を見て、やっぱり
男の子なんだなって思う


ちょっと ほっとした









「そう言えば、君 会った時に
何か言いかけてましたけど…」







私の言葉に 君はコクリと首を縦に振る







「実は俺 ある物を落としちゃってね
それを探してこの辺をうろついてるんだ」


ある物って?」





問いかけに 彼は両手を
一抱えのボール大くらいに開いて





「これ位の大きさの缶詰で 少し中身が膨らんでる奴」







そこで言葉を途切ると、急に君が少し
顔を近づけてきたから





私は少しビックリした







「もし見かけたら、絶対に開けないで
俺のところに持ってきてくれるかな?」







間近で見る彼の顔にドキドキしながら尋ねる







「それはいいですけど どうして開けては
駄目なんですか?」


「あの缶詰はね…」









君の言葉を遮って







ちゃーん、お探しの缶詰って コレ?







間に唐突に ねいどが現れた


私は慌てて後ろに身を引いた











「あ、ねいど わざわざ見つけてくれたんだ、ありがとう」







突然目と鼻の先に
しかも逆さま
で現れたねいどに対して





彼は眉一つ動かさず 笑顔でお礼を言った







…や、やっぱり変わってるかも









「所でこの缶詰 普通のより大きくて
魚の絵が描いてあるけど、中身はなーに?


ニシン…かな、スウェーデンで作られてて
俺が食べてみたくて買ったんだけど」







言いながら 君がねいどの持つ
大きな缶詰を受け取ろうと手を伸ばした





けど、ねいどがひょいっとその手を避けて







「へえぇぇぇ 早速開ーけちゃおっ♪」









言いながら、缶切りを出して缶を開けようとした







呆気にとられた私をよそに







「こんな場所で開けちゃ駄目だよ!」





君が慌てたように言いながら、ねいどから
缶を取り戻そうとするけれども







更にねいどはひょいひょい彼の手を避けて





缶を開け始めた









ぎゃっ 汁が飛んできたわん!
やだ〜かかっちゃったわ…」





そこで ねいどの手が止まった









封を開けられた缶から 漂ってきた匂いは…







ものすっっっっごく 臭かった







「ぎぃやあぁぁぁぁぁ、何コレぇぇぇ!?」





叫んでねいどが鼻(?)の辺りを抑え


缶が地面に落っこちる







横倒しになった缶の開いた切り口から
どろりと液体が地面に零れて





悪臭がいっそう濃くなる









「なっ、何ねこの臭いは!?







鼻を抑えるけれども 悪臭は以前強いままで







「あーあ だから開けちゃダメって言ったのに」







君の方を見ると 溜息をつきながら
いつの間にかマスクをしていた









「はい、二人とも このマスクつけて
ちょっとは楽になるから」







言って 彼が渡してくれたマスクをつけると





本当に、臭いニオイが結構和らいだ







「ありがとうございます このマスク、凄いですね」


「花粉対策用の物を少し弄った試作品だけど
役に立ってくれてよかったよ」







微笑む君に マスクをつけたねいどが
缶詰から離れて彼を問い詰める







「ヒドイ臭いだわぁ、一体何この缶詰!」









汁が大分かかったのか、ねいども臭い









「あれはシュールストレミングって言って
くさやの六倍臭い缶詰なんだ」


「「六倍!?」」







私達の言葉に 君は頷いて







「本来水槽で開けるらしくて、味が塩辛みたいって
聞いてたから買ったんだけど 落としちゃってね」









言いながら 彼は缶詰を拾って土埃を払う







「事情を知らない人がそのまま開けたらマズイから
探すついでに警告して回ってたのに…」







これ意外と高かったんだよ?と呟く









「全く 先に言ってよね
お陰でヒドイ目にあったわん!」








彼が忠告する前に勝手に開けた
ねいどがいけないと思うんですけど







「それ持ってきたのはちゃんなんだから
片づけが終わるまでげぇむ参加禁止よん」



「そんな理不尽な…!」





言いかけた言葉を、君が手で押し留めた





「わかった、俺に責任があるわけだし
人気のない所で食べてくるよ」








そのまま、スゴイ臭いを放ちつづける缶詰を持って







君は 何処かへと姿を消した









ねいどもいつの間にかいなくなっていて







あとにはただ、悪臭の残り香と
夏の暑い日ざし そして蝉の鳴き声が残った








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:かなり久々の妖逆門夢です お待たせして
大変ごめんなさい…


ねいど:っていうか 誰もあなたのくだらない文なんか
待ってなかったわよ〜ん


狐狗狸:って何でねいど!?普通この流れからすると
清が楽屋裏に来ない!!?


ねいど:清ちゃんは シュールストレミングの臭いに
当てられて、気分悪くなって早退したわよん


狐狗狸:うーむ 恐るべしシュールストレミング
ってーかねいど、風上立たないで 臭い


ねいど:ヒドイわ あんたがそう言う風に仕向けたんでしょ!


狐狗狸:まーね


ねいど:てゆうか、何で出てくる度にあたしが
ヒドイ目に合わなきゃいけないのよ


狐狗狸:んー君のイメージが一貫して"神出鬼没" "意地悪な審判"
"憎めない弄られキャラ"
って位置だから、私の中で


ねいど:それって あたしのこと誉めてんの?


狐狗狸:なんだかんだいって、意外と好きだからね
ねいどのことは


ねいど:だったらもっと大切に扱ってちょうだいよん




夢要素 本当に少なすぎ&意味不明オチでスイマセン


再三言いますが、この夢主はNot腹黒です!(爆)


様、読んでいただきありがとうございました〜