最近 妖逆門の世界の中に不穏な空気
流れてきているのを感じた









原因は、ちらほらと流れる







"灼銅の鬼仮面"の噂だ











妖逆門に反する行動を行った者をぷれい屋・個魔・妖怪に
関係なく処断する仮面の人物









その人物が活発に活動をはじめ







妖逆門の世界も げぇむのルールも少しずつ、変わり始めている











一体 この世界で何が起きているのだろう…











そう思いながら歩いていた時、一人の少年が声をかけてきた







「こんな所で会うなんて奇遇だね、


「君は…確か 正人君、だったよね?」











〜「カスケード」〜











そう 髪を束ねた彼の名前は、須貝 正人







三志郎君からも彼の話はよく聞くし
一緒にいる所も 度々見かける







とても実力の高いぷれい屋









「三志郎君は 一緒じゃないのかい?」


「ああ、彼とは途中ではぐれちゃってね
探してる最中に 君と会ったんだ」







苦笑交じりで 正人君はそう答える







「それは災難だね、良ければ俺も
三志郎君と会えるように協力するよ」


助かるなぁ 一人で少し寂しかったんだよね」


「いいんだよ、この辺は出てくる妖怪も
手強いから仲間は多いほうがいいし」







俺の微笑を 更に微笑みで返す正人君







「そうだね 道すがら、君の話を聞かせて欲しいな」


「俺の話を?」


「うん、三志郎君から色々君の事を聞いてはいるけど
僕が直接聞くことって少なかったから」


「わかった、俺も君の事を色々聞きたいから
お互いの事を話し合おうか」













しばらく、歩きながら
二人で取りとめも無い会話をしていた







味の好みの話 三志郎君との出会い
使っている撃符妖怪の事…











「ところで君 君は願いはあるのかな?







話が弾むとよく聞かれる質問の一つだったから







俺は特に気にもせずに答えた







俺に願いはないよ、この世界を見て回って
色々なことを知る事が楽しいから」









大抵、他の人は自分の願いを語ったり
呆れたりしているのをよく見た







笑わないで受け止めてくれた人は少ない









けど…目の前の彼はどちらでもなかった







「僕と似ているね…僕もこの世界で
げぇむを楽しみ続けるのが好きなのさ」







初めは、俺と同じなのかと思った







撃符で妖同士を戦わせるのも面白いし 大勢の
ぷれい屋ともっともっと楽しくげぇむも出来る」







けれど正人君の言葉は どこか
俺とは違う、確かな"目的"を持っていて







「まさにここは 僕の理想の世界
そうだろ?君もそう思うだろ君」


「俺は…そうは思わない」







彼の同意を求める声を 俺は否定した









げぇむは面白いし、色々知らない事を
知るのは楽しい そう思ったのは事実だ









けど、妖たちや個魔の何人かは







この世界を望んでいるわけじゃないと知ってる







ぷれい屋のみんなも、優勝して
自分の願いを叶える事を望んでいる







それに、この世界は現実ではない仮初めの世界だ…





いつまでもいられるわけじゃない







「知らない事を知るのは好きだけど
人と 妖達と争うのは好きじゃないから」







やんわりと笑って そう答えると







正人君は後ろで足を止めて、俯いたので
俺も足を止め 振り返った









何か声をかけようと 口を開く前に







「…妖なんて 所詮コマに過ぎないよ」










彼が ぼそりと呟いた一言で
何となく 気がついてしまった







目の前にいる、この少年のもう一つの顔









「巷で聞く灼銅の鬼仮面は…君なんだね」







唐突だけれど、俺は 確信してそう言った







正人君はきょとんとした顔で問いかける







「…どうしてそんな事を?」


「何となく人の考えてる事がわかるんだ
俺に嘘は通用しないよ」









しばらく 俺と正人君は互いに見つめ合っていて







微笑みと共に言葉を漏らしたのは正人君だった









「バレちゃしょうがないか、でも君は 僕に似ているね
君…まるで鏡に映したみたいだ」







俺は首を振って答える







「悪いけど、俺は君と違っているよ」


「いいや 違わないさ」







強く 正人君は否定して続ける







君 君もげぇむを楽しんでいたいだろう?
だから先に進まず、いつまでもとどまってるんだ」









俺は否定できなかった







たしかに彼の言う通り、げぇむを通して
色々な事を知るために先を目指す気は無かった









けれど、正人君の口振りには







何か別の意図が含まれているように感じた









「正直言って 君のようなぷれい屋
げぇむのバランスを崩しかねない」







まるで支配者のように言ってから、
彼は悩むようにこう呟いた







「でも、君の強さは排除するには惜しい」


「…何が言いたいのかな?」







正人君は 不敵に微笑んで手を差し伸べた







「僕と君が手を組まないかってことさ」


「君と俺が…手を?







オウム返しに尋ねた俺に、嬉しそうに正人君が頷いて







「そう、僕と君が手を組み 妖逆門を支配すれば
この世界の秩序は保たれ、君もげぇむを続けてられる」









言う言葉に 微笑に、悪意のようなもの
少しずつ滲んでいるのがわかった







「どうだい?素晴らしいだろう?」







言いながら、正人君は一歩 近寄った









その場から動かずに 俺は返した







「俺は、誰かの可能性を奪ったり 妖怪達を苦しめてまで
げぇむを続けたいと願うほど 傲慢じゃないよ」









言った途端 正人君の表情が変わる







あからさまな嫌悪を浮かべた顔









「それじゃあ君は邪魔だね…
残念だよ 君を排除しなきゃならないなんて」







撃盤と撃符を出し、召喚の態勢に入る正人君







俺も召喚できるように構えながら訊ねた







「君はここを理想の世界だって言うけど、関係のない
妖や個魔や人々を傷つけて 本当に楽しいかい?









彼の顔が ますます険しくなる







まさに、のような表情







「うるさい偽善者が…!」







刺すような目で 正人君は俺を睨んだ







「ぷれい屋風情が知ったような口を利くな!
撃符召喚 炎輪!



「出ておいで 白澤」









相手の力はわからないけれど







彼に手加減は通用しないと悟った











お互いの撃符妖怪が召喚され、対撃に移る
思っていた その矢先







いきなり、正人君が炎輪を引っ込めた







「…どうやら 大事な用事ができた
今日の所は 大人しく引き下がってあげる」









ニヤリと笑い 正人君はどこからか
出した仮面を、顔につけると







「けど、僕の邪魔をするのなら容赦しないから」







それだけを宣言し、その場から去った








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:珍しくシリアス話にしてみました〜


正人:これ 本当にシリアスなの?


狐狗狸:一応は…タイトルの"カスケード"には、
コンピューターウィルスの名称という意味も含まれてます


正人:いきなり何さ…でも正に君は 僕の計画に
とっての「カスケード」だね


狐狗狸:まあそんな感じで、てゆうか
三志郎とはぐれた云々はマジですか?ですか?


正人:一応は本当さ 大事な用事は…
まあ、三志郎君絡みって事で


狐狗狸:それ以外は黙秘ですか わあ黒い


正人:君の前に 君を処分するよ?(黒笑)


狐狗狸:なんて怖いお子様!!




正人ファンの方々…こんな黒キャラでスイマセン!


様、読んでいただきありがとうございました〜